流れる景色を横目に僕は一人本を読む
行くあてすらもないのに何故か列車に乗りそして揺られている
何を求めて僕はここにいるのか…
???
お客様失礼します
悠
はい?
???
今お時間の方大丈夫でしょうか?
悠
まぁ…はい
???
もしよろしければ私とお話でもどうですか?
悠
まぁ…
???
今日はおひとりで?
悠
ひとりが好きなんですよ
悠
なんてことない時間とか特に
???
そうですか
???
ちなみに今日はどこに向かって?
悠
行く先は決めてません
悠
とりあえずブラブラしようかなと
???
たまにはそれもいいですね
悠
じゃあ次は僕からもひとついいですか?
???
はい
悠
なんで僕に話しかけてくれたんですか?
???
何故?
悠
いや、なにか意味があるのかなぁと…
???
そうですね…
???
強いていえばあなたがどこか悲しそうな顔をしていたからですかね
悠
僕がですか?
???
つい先程のあなたが窓を見るその横顔
???
あなたは流れる景色ではなくさらにその先
???
いえ、先と言うより空虚と言いますか
???
景色を楽しむではなくなにか物思いにふけるそんな顔をしていたので
悠
悠
まぁそうですね…
???
なにか力になれる訳では無いですが
???
そんなふうになってしまった原因と言いますか
???
もしよろしければお話していただいても?
悠
悠
実は僕には彼女がいたんです
悠
彼女…あまり目が良くなくて…
悠
視力とかの問題じゃなくなんと言いますか…
悠
色弱でして…
悠
それでも他の人とは何ら変わりはないんです
悠
ですけれど彼女自身そこが気になるらしくて
悠
考えが後ろ向きになっていったんです
悠
自分は周りと違うからこんな風に思われてる
悠
みたいなネガティブ思考に陥ってしまい…
悠
それを脱却させてあげようと思って列車に乗り流れる景色を見よう
悠
その先にある絶景を見に行こう
悠
そしたらきっと何かが変わるから……
悠
そんなふうに僕は思ってたんです
悠
でも彼女は違かった…
悠
僕の思いとは裏腹に自分に対する嫌がらせだと勘違いされてしまって…
悠
そこから関係が悪くなり彼女と別れることになってしまったんです
悠
別れ際に彼女はぽつりと…
悠
「あなたの世界は何色なの?」と…
悠
その言葉の意味を僕は理解出来ず
悠
咄嗟になにか話そうとしたけれどそれは声としてでることは無かった
悠
あの時僕はなんと声をかければよかったのか
悠
その日から僕はその事を考えるようになり
悠
その答えが本にあるかもしれないと思いただ無心で本を読む生活が始まった
???
なるほど…
???
その答えを今もあなたは追い求めてるのですか
悠
またいつか似た質問をされた時に返せるようになりたくて…
???
その答えは本なんかには載ってないですよ
悠
え?
???
まぁこれは私が勝手に思ってるだけです
???
きっと彼女はあなたなりの言葉で返して欲しかったんでしょう
???
女性という生き物はとても気難しい生き物なんですよ
???
あなたの世界は何色かという回答に明確な答えはありません
???
言葉よりもあなたの想いをきっと彼女は聞きたかったんでしょう
???
今のあなたならその答えを導き出せるはずです
???
もし今も分からないのであれば終点まで向かうといいでしょう
???
そこに行けばその答えも見つかりますよ
悠
そんなもんですかね…
???
そんなもんですよ
???
さて、私はそろそろ仕事に戻らせていただきます
???
お話聞けてとても楽しかったですよ
悠
そうですか?
???
えぇ…
???
では
悠
悠
答えはもう持ってる、か…
ふたたび流れる景色を眺める
時は既に夕刻にと変わろうとしていた
緑の木々が陽の光によって淡くオレンジ色に彩っていた
刻の丘
悠
あの人の言っていた場所がここか…
悠
街の灯りが星のように煌びやかに…
悠
それを見守るかのようなオレンジの陽の光
悠
紅い空から蒼い空に変わる…
悠
その境目がどこか幻想的で……
悠
悠
あの時の返答してもいいのかな…
悠
いや、しないとダメな気がする…
悠
自分の心に…思いに嘘はつきたくない
悠
突然ごめん
未空
未空
悠?
悠
突然ごめん
悠
迷惑承知でひとつ話しておきたくて
未空
今更何を?
悠
あの時の返事まだだったからさ
悠
あなたの世界は何色ってやつ
未空
別にそれはもう…
悠
一方的かもしれないけれど
悠
君に伝えておかないとって思ってさ
悠
今の僕の世界はほとんど色がないんだ
悠
君と居たあの時はたくさんの色があった
悠
赤 青 黄色
悠
紫に緑に……
悠
とにかく沢山の色が僕の周りにあった
悠
悲しい時は周りに青が色付き
悠
楽しい時は黄色に…
悠
喧嘩した時は赤色だったね
悠
憂鬱な時は紫もあったかもね
悠
どんな色だったとしてもそこには色があった
悠
でも君と別れたその時から僕の周りから色が抜けていった…
悠
僕たちの別れた原因でもある列車の旅
悠
未空がどんな風に思ったのか僕は分からない
悠
けど僕は決して君に対しての当てつけとして誘ったわけじゃない
悠
君と新しい色を見たかったから誘ったんだ
悠
未空がどんだけ思い詰めていたのか僕は知らなかった……
悠
その時にたった一言でいいから声をかけてあげたらきっと良かったんだよね
悠
もう遅いかもしれないけど…
悠
未空は未空だよ
悠
この世界にひとりとして同じ人はいない
悠
周りと違う…
悠
その考え僕は少し違うと思う
悠
周りもみんな違う人達だ
悠
自分だけが違うわけじゃない…
悠
うまく伝えられないけど…
悠
今の僕の世界はツートンカラーだよ
悠
黒と白の2色…
悠
でも君と居た時は数え切れない色で溢れていたってことは伝えとくよ
未空
未空
そう……
未空
悠の考えてたことはわかった
未空
あの時あなたは沢山の色があったのね
未空
未空
ひとつ私も話していい?
悠
うん
未空
あの時の私は自分が嫌いだったの
未空
その自分が嫌いって思いが苛立ちになってそこからあなたに強く当たって…
未空
それだけじゃなくて後ろ向きな言葉も沢山呟いてたよね
未空
今あなたの心の内を聞けてよかった
未空
私から一言だけ言わせて欲しい
未空
あの時はごめんなさい
悠
悠
全然大丈夫だよ
悠
むしろ僕の方こそごめんね
悠
君の辛さを分かってあげれなくて…
未空
未空
もうひとつ聞いてくれる?
悠
?
未空
もし嫌じゃなければもう一度会いたい
未空
会ってあの時私と一緒に行こうとした
未空
あの場所に連れていってくれる?
悠
もちろん
失われたその色はふたたび彩りを取り戻す
想いが世界を彩っているのだから…
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コメント
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サムネの花は【ペンタス】です 花言葉は【希望・願いが叶う】でした ※需要あるかわからんけどこれ書くの忘れてた☆
いいのぉ…いいのぉこーゆーお話は……(´;ω;`)