テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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悪霊の女の子たち

第1話 - 悪霊の女の子たち

100

2020年05月06日

#ホラー

#愛情

#ミステリー

#都市伝説

宇佐見しの

一ノ瀬胡桃

ねーねー！！

一ノ瀬胡桃

きょうか〜！！

井上響花

……なーに？

井上響花

まだ朝の7時だよ…眠いって…

一ノ瀬胡桃

そんなこと言わずにさ〜

井上響花

はいはい笑

一ノ瀬胡桃

また新しい都市伝説見つけちゃった！！

井上響花

また〜？

井上響花

…怖いって笑

私の友達の胡桃は大の都市伝説好きだった

そして見つけたら必ず私に教えてくる

井上響花

(……まぁ怖い話嫌いじゃないからいいけどね)

一ノ瀬胡桃

あのね！

一ノ瀬胡桃

午後5時55分55秒に自分の家のポストにとある手紙を入れると…

一ノ瀬胡桃

｢紗奈｣ちゃんっていう女の子の霊が現れるんだって〜！

井上響花

なにそれ〜笑

井上響花

しかも紗奈、って随分現代的な名前じゃん笑

井上響花

普通はサチコとかじゃない？笑

一ノ瀬胡桃

まーまー聞いてよ！

一ノ瀬胡桃

でね、ポストに入れる手紙にはね…

一ノ瀬胡桃

1番最初に紗奈ちゃんへって書いて
1行空けて
その下の行に自分の悩み事を書くんだって！
で！最後にまた1行空けて自分の名前を書くらしい！

一ノ瀬胡桃

寂しがり屋で優しい幽霊ちゃんだから、
悩みを解決してくれるんだって！

井上響花

え〜ほんと？

井上響花

解決って……呪いとかじゃなくて？

一ノ瀬胡桃

呪いじゃないって！

一ノ瀬胡桃

まぁ正確には解決っていうか相談に乗ってくれるらしい！

井上響花

ふ〜ん

井上響花

怖くないしちょっと面白そうじゃん！

一ノ瀬胡桃

でしょでしょ〜！

一ノ瀬胡桃

けどね……

一ノ瀬胡桃

ウソの悩み事を書いたりしたら……

一ノ瀬胡桃

殺されちゃうんだって〜！！

井上響花

……こ、こわ〜！！

一ノ瀬胡桃

まぁ嘘を書かなければいいだけだし！

一ノ瀬胡桃

あ、ちなみにね、

一ノ瀬胡桃

地域によって女の子の名前が変わってくるらしい！
だから…

この○○市だったら、紗奈ちゃん
隣の△△市だったら、美華ちゃん！とか…

井上響花

なんかそーゆーとこガチっぽいね笑

一ノ瀬胡桃

だからガチなんだって！！

井上響花

ふ〜ん笑

私にだって…もちろん悩みはある

けどそれを、実際に相談出来る相手はいない

紗奈ちゃん…か、

井上響花

(………って、ないない！！)

井上響花

(さすがに知らない女の子に相談なんて出来ないって……)

一ノ瀬胡桃

……おっはよ〜！！

井上響花

おはよー胡桃

藤原陽翔

おはよ、くるみ

藤原陽翔

朝から元気だなぁ…

彼は……私の好きな人だ

誰よりも明るくて、誰よりも優しい

そんな完璧な陽翔に、叶うはずもない恋をしてる

一ノ瀬胡桃

あはは

藤原陽翔

ふわ〜っ、ねみぃ…

井上響花

陽翔はいつも寝てるじゃん笑

一ノ瀬胡桃

そーだよ笑

藤原陽翔

いやいや、世の中にはレム睡眠とレムレム睡眠ってのがあってだな…

井上響花

いやそれノンレム睡眠笑

一ノ瀬胡桃

めっちゃ間違えてるじゃん笑

藤原陽翔

どーだっていいだろ笑

藤原陽翔

……ったく、細けぇなぁ

藤原陽翔

…あやもそう思うよな？

高橋綾子

………

高橋綾子

…いやいや笑

高橋綾子

はるくんは大雑把すぎるんだよ笑

藤原陽翔

ったくー、なんだよそれ

井上響花

あはは

一ノ瀬胡桃

彼女さんに言われちゃ、認めるしかないよね？笑

高橋綾子

………////

藤原陽翔

…はいはい///

陽翔には、彼女がいた

高橋綾子

容姿端麗、頭脳明晰、おまけにスポーツ万能

井上響花

(性格的にも申し分ない……)

井上響花

(こんなの、勝てるわけないじゃん…)

井上響花

…こんなのってひどいよ………

井上響花

しかも、2人は幼なじみだし…

井上響花

やっぱり、諦めるしかないよね………

｢紗奈ちゃん｣

井上響花

そうだ、その手があった………

井上響花

……………

私は手を合わせて祈った

井上響花

紗奈ちゃんお願い………

井上響花

…私を、助けてください………

そう言いながら、 5時55分55秒、家のポストに神頼みの手紙を入れた

紗奈

………………

紗奈

………こんばんわ

紗奈

私は紗奈、っていうの
呼び出したのはあなた？

井上響花

……………ええ、

透けた体、下半身がない………

紛れもない幽霊………みたい、

井上響花

私は井上響花

井上響花

紗奈ちゃんに、相談にのってほしくて

紗奈

ふふふっ

紗奈

………いいよっ

紗奈

最近みんな呼んでくれなくて…寂しかったの、

井上響花

(寂しがり屋の女の子……たしかに胡桃の言う通り、)

井上響花

えっと………

井上響花

なんでみんな呼んでくれないの？

井上響花

(………もしかしてワケあり？)

紗奈

あのね……

紗奈

私の下半身がないから、みんな怖がっちゃうの……

井上響花

…………そっか、

井上響花

…疑ってごめん、でも私は怖がらないよ

紗奈

……………

井上響花

もう1つ質問していい？

井上響花

嫌だったら答えなくてもいいけど

紗奈

……わかった

井上響花

……どうして下半身がないの？

紗奈

………

紗奈

……電車に轢かれたの

紗奈

………お母さんに背中を強く押されて…

紗奈

……………

紗奈

…気がついたら、幽霊になってた

井上響花

………そっか

井上響花

ごめんね💦こんなこと聞いて……

紗奈

……大丈夫だよ

井上響花

………………………

今の話……嘘とは思えない、

力のこもった話し方、悲しそうな目……

井上響花

(むしろ紗奈ちゃんが相談する方じゃ……)

井上響花

ありがと

紗奈

……いいのいいの！

紗奈

それより聞かせて？陽翔くんのこと……

井上響花

うん………

紗奈

…………そっか

井上響花

……………うん

紗奈

……正直に言うけど………

紗奈

……諦めた方がいいね☆

井上響花

……………

井上響花

ええ〜〜っ！！

井上響花

………そんなあっさり！？

紗奈

うん☆

紗奈

だってクラスの…胡桃？って子とかに

紗奈

……いじられるくらいイチャイチャカップルなんでしょ？

井上響花

…………………ん、まぁ、

紗奈

それは無理じゃない？

紗奈

新しい恋、探したら？

井上響花

……ええ〜

紗奈

………………

井上響花

はぁ〜

井上響花

……分かってたことだけど、そんなはっきり言われちゃうとなぁ〜…

井上響花

…………………

井上響花

………なんか…

井上響花

紗奈ちゃんの霊パワーで恋愛成就！とか出来ない？？

紗奈

…………え〜

紗奈

……出来ないことはないけど…

紗奈

……んとねー

紗奈

…………

紗奈

あ！そうだ

紗奈

…………彼女さん殺しちゃえば？

井上響花

……………ええっ！？

紗奈

……私は別に悪霊じゃないけどさ〜

紗奈

………そのうち結婚しちゃうくらいラブラブなわけじゃん？

井上響花

……………まぁね

紗奈

…………………

紗奈

……………本気で陽翔くん手に入れたいなら、ね

紗奈

……………まぁ、

紗奈

………最悪死別しても、綾子さんが忘れられなくて彼女作らない……、

紗奈

ってパターンもあるわけだけどさ………

井上響花

………え〜

紗奈

………まぁ、やるとしても私は手伝わないけどね

紗奈

…だって人殺したら悪霊だからさ☆

井上響花

………………いやでも地縛霊なんてほぼ悪霊じゃない？

紗奈

………ん〜

紗奈

地縛霊は場所に執着するじゃん

紗奈

未練があって離れられない、って感じだけど〜

井上響花

…………

紗奈

でも悪霊は違う

紗奈

自分の意思で残ってるわけじゃなくて………

紗奈

どう足掻いても離れることを許されない…

紗奈

罪を償うまで永遠に………

紗奈

って感じかな☆

井上響花

……なにそれこっわ

紗奈

あはは☆

紗奈

さぁどーする？

井上響花

………………ころ……

井上響花

…………いや！やめとく！！

紗奈

……………

紗奈

……………わかった

井上響花

…………うん

紗奈

……まぁでもね、響花

紗奈

あんな男、そこまでして手に入れる必要なんてないから………

井上響花

…………え、それってどういうこと…？

紗奈

…………

紗奈

……あいつは最低な男だよ

井上響花

………え？

紗奈

……聞きたい？

井上響花

うん……

紗奈

後悔するよ？

井上響花

………それでもいい！

紗奈

………………………

紗奈

…分かった

紗奈

…………

紗奈

……あいつ浮気してるよ

井上響花

………え？？

紗奈

ほんとだよ

紗奈

…………だって私、さっき見てきたもん

紗奈

同じクラスの、高橋綾子

紗奈

バイト先の先輩の、米倉莉子

紗奈

他にも…………

紗奈

一ノ瀬胡桃、とか……

井上響花

……………え？？

井上響花

……待って頭が追いつかないんだけど

紗奈

………あいつゴミだよ、

紗奈

…………付き合ってる女に暴力ふるってるの

井上響花

…………え？

井上響花

……………じゃあなんで…、みんな別れないの？

井上響花

…しかも胡桃なんて、

井上響花

陽翔が浮気してるの知ってるんでしょ？

紗奈

…………………

紗奈

…………胡桃は、知ってて付き合ってるの

紗奈

………………

紗奈

………私のこと好きに扱っていいから、そばにいさせてって…………

井上響花

……………え

井上響花

………なにそれ

紗奈

………………

井上響花

許せない！！

紗奈

…………じゃあさ、

紗奈

殺しちゃえばいいんじゃない？

井上響花

……………

紗奈

手伝ってあげよっか、

紗奈

………ただし、条件付きで

井上響花

…………………条件？

紗奈

私の未練を果たすの……手伝ってくれない？

井上響花

……………え？

紗奈

私の未練はお母さんを見つけ出して

紗奈

この手で同じように殺してやること

紗奈

どっちにしろ人を殺さないと私は報われないの、

井上響花

……………

紗奈

そしてあなたも………報われないでしょ？

井上響花

…………分かった

紗奈

………けど私は、直接陽翔を殺すと悪霊になっちゃうから………

紗奈

………あくまで手伝うだけ

井上響花

………手を下すのは私………ってことね

紗奈

そう、

紗奈

そして私の未練に関しては………

井上響花

私が協力して………

紗奈

…私が手を下す

紗奈

……………これでハッピーエンド

紗奈

……………

井上響花

……これで

井上響花

………いいんだよね？

井上響花

紗奈ちゃんは悪霊じゃないから………実体化は出来ない

井上響花

………けど丑三つ時だけ、この世の闇が濃くなって

井上響花

………実体化が可能になるらしい……

井上響花

だから、紗奈ちゃんはその時間を使って

井上響花

………比較的手に入りやすい毒薬を用意してくれるらしい

私は計画を着々と立てていく

井上響花

その毒薬を私が、陽翔の部活用の水筒に混ぜる

井上響花

(水筒だから毒を入れてもバレにくい……)

井上響花

………問題は、どのタイミングで混ぜるか

井上響花

………………

その時、なぜ胡桃が紗奈ちゃんの話を私にしたのか

少しわかった気がした………

井上響花

……胡桃に協力してもらうか……

井上響花

紗奈ちゃん

紗奈

………なに？

井上響花

………お母さんの身元が分かったよ

紗奈

…………ほんと？

井上響花

………………

井上響花

先に殺しちゃおうか

紗奈ちゃんは自分の母親を………殺しに行った

紗奈

(…………お母さんだ)

紗奈

…………今は
丑三つ時だから、唯一お母さんを殺せる時…………

許さない………殺してやる！！

グサッ

お母さんは静かに息を引き取った

紗奈

(心臓を一突きだからね…こんなもんか)

そして、私の仏壇に置いてあった手紙を見た

紗奈へ

殺してごめんなさい

でも仕方がなかった

だって………私とお父さんは離婚するつもりだったから

………………

親戚にたらい回しにされて

バイ菌扱いされて

そんな過去を背負って

大人になっても背負って

…………なんて、

そんな重荷嫌だよね？

だから母さん

紗奈を殺すことにしました

恨んでいたらごめんね

……………

私は今すぐにでもそちらに行きたいけど

行けません

………

だってこれが

私にとってのせめてもの償いだから……

ごめんなさい

こんな身勝手な母親を…許さなくていいです

恨んだっていいです

呪ったって

殺したって

一生あなたに苦しめられようと

…………

私はそれを受け入れます

………………

けどね紗奈

………あなたの笑い声をもう一度聞きたい

黄色い声ですこし騒がしいけれど

私には心地よかった

思えば私は………

あなたに救われていたのかもしれない

その温もりが

声が

笑った顔が

あなたの言葉が

………私を救ってくれていた

ありがとう

…………最後に一つだけ

『愛しています』

ずっとずっと…………

母より

紗奈

……………ごめん…なさぃ

紗奈

私、お母さんの気持ち何も知らなかった…

紗奈

…………分からなかったよ

紗奈

………けど

紗奈

全部私のためだったんだね…………

私は大粒の涙をこぼした

紗奈

………私も

紗奈

愛しています……

紗奈

………きっと

紗奈

お母さんは悪い人じゃないから、

紗奈

私は悪霊になってしまうけど……

紗奈

……一緒には行けないけれど、

紗奈

………ありがとう

紗奈

…もう二度と言葉を交わすことは叶わないけれど………

紗奈

ありがとう

紗奈

私を産んでくれて……

紗奈

ありがとう

紗奈

愛してくれて…………

紗奈

ありが……とう…

井上響花

胡桃

井上響花

陽翔を……殺そう

一ノ瀬胡桃

え？

一ノ瀬胡桃

何…言ってるの？

井上響花

あいつは浮気してる

一ノ瀬胡桃

知って……る、

井上響花

……じゃあなんで！？

井上響花

なんで殺さないの！！

一ノ瀬胡桃

………もういいの

井上響花

よくない！！！

井上響花

大切な友達が傷つけられて！黙ってられるわけない！！

一ノ瀬胡桃

………いいの、

一ノ瀬胡桃

………陽翔が、私を見てくれれば

一ノ瀬胡桃

たとえ振り向いてくれなくても

一ノ瀬胡桃

…本命じゃなくても

一ノ瀬胡桃

…浮気してたとしても

一ノ瀬胡桃

………私は、

一ノ瀬胡桃

陽翔のそばにいれるだけで幸せだよ

一ノ瀬胡桃

……たとえ暴力をふられていても

一ノ瀬胡桃

…その痛みさえ、陽翔の愛なんだって考えれば……

一ノ瀬胡桃

……古傷さえ愛おしくなる

井上響花

…………は？

井上響花

おかしいよ胡桃！！

井上響花

………………

井上響花

……もういい

井上響花

明日、

井上響花

……クラスの皆の前で陽翔を殺す

井上響花

………………

井上響花

そして私も死ぬ

井上響花

……………これでいい

井上響花

完璧なシナリオだよ！！

キーンコーン

井上響花

(予鈴のチャイムだ……)

井上響花

今だっ！

私は立ち上がった

包丁を両手で強く握りしめた

井上響花

うわぁあぁぁぁぁあぁあぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁ！！

グサッ

藤原陽翔

……………え？

一ノ瀬胡桃

…………ｷｬｧｧｧｧ！！

井上響花

浮気男め！！

井上響花

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね！！

藤原陽翔

うわぁぁぁぁあっ

ﾋﾞﾁｬｯ

高橋綾子

…………イヤッ！！嫌だよｯｯ！！

井上響花

(血がドバドバ出てる………)

井上響花

人って、こんなにもろいんだね………

藤原陽翔

ｺﾞﾎｯ

藤原陽翔

ｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｯ

井上響花

クスクスッ

井上響花

どう？

井上響花

………今までの仕返し

藤原陽翔

(あ………俺もう死ぬ……)

藤原陽翔

ｸﾞｴｯ

井上響花

あはははっ！

わたしは屋上に来た

三階建てだっけ？四階？五階？

とにかく高いことは確かだ

井上響花

(ここならきっと死ねるはず…………)

井上響花

(私は人助けで殺したんだから、悪霊にはならないよね…)

井上響花

紗奈と同じ場所に逝けるかなぁ……

井上響花

……あんなやつと同じところに行っても楽しくないか！

井上響花

あははははっ！！

井上響花

………せっかくだし人を呪い殺す悪霊みたいなのがいいな！！

私は両手を大きく広げた

井上響花

来世なんていらないです！！

井上響花

せっかくなんで神様！！

井上響花

私を悪霊にしてくださいよっ！！

井上響花

あははははっ！！！

私は高く笑い声を上げながら、自殺を謀った

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宇佐見しの

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