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第十一話 たった一人で戦い続ける者達5
きりやん
きりやん
――悪魔捜索二日目
一番頼りにしていた
スマイルが参加しない と言い出し
その日は三人で
方針を話し合って
昼には雨の町を歩き回り
悪魔を捜索した
夜に帰宅して
現在二日目の朝だが
スマイルの部屋に
家主は居らず
シャークんがペットの餌を
用意したにも関わらず
誰も餌を求めに来なかった
シャークん
シャークん
きりやん
シャークん
シャークん
きんとき
きりやんが二人に指示した事は
雨の魔法を解くために
町の至る所に
きりやんの力が込められた
十字架を置くことだった
雨が強いところを中心に
置いていけという指示だったが
雨の強弱は時間によって様々だ
どこに置けばいいのか
よくわからないとも言う
きりやん
夜に力を込めておいたという
十字架がテーブルに
ばらまかれる
きんときはそれを
半分ほど鞄に入れた
きんとき
シャークん
きりやん
シャークん
シャークん
一日目の十字架を 捨てる作業は
久々に町に降りた
シャークんのテンションが
舞い上がってしまい
十字架なんてそっちのけで
至る所で人々に
シャークん
と話しかけまわってしまった
さすがに不審者扱いされて
警察に追い掛け 回されてしまったので
今日のシャークんは
姿隠しのローブをかぶっていた
町に降りて三人は
十字架を置いて回る
そんな中、きんときは
昨日設置した 十字架を発見した
雨が降りしきる中
一晩も放置された十字架は
薄汚れていた
きんときはそれを
手に取ってみた
きんとき
それからきんときは
自分が今日新たに持ってきた
十字架を取り出して
一晩放置された 十字架と見比べる
きんとき
なんとなく
言葉では説明できないが
一晩放置された十字架が
なぜか頼りなく感じる
それに比べて
今日持ってきた十字架は
なんだか力が ありそうな気がする
一晩でこの十字架は
効果を失って しまったのだろうか
きんときはきりやんを 探し始めた
シャークんは町に降りると
笑顔になる
だいすきな人間が
そこらじゅうに
たくさんいるからだ
その中でも興味が
惹かれない人物が
いた事を思い出した
シャークん
シャークんは町で
すれ違う程度だったその人物を
探してみることにした
その人物を 意識したことはない
ただよく町で 見かける人物だと
ふとしたときに気付いた
嫌に視界に入るくせに
まったく興味が持てないのだ
いつもあの――
パンダ柄の上着を着た男が。
――雨が降っている
まるですべてが洗い流されていくようだ
部屋の中で
遮蔽物を隔てた向こう側で
鳴り響く雨の音に耳を澄ませる
さあああ――
雨音は鳴り止む事も
リズムに乗ることもなく鳴り続ける
遠い昔に――
泣り止まない雨を
こうして聞いていた気がする――
ギィィ――
そんな雨の音に交じって
戸が開く音が耳に劈いた
顔を上げると
優しい顔をした友がそこにいた
?
?
?
?
?
ここ最近元気がなかった友人は
ずっとこの客室で
雨の音を聞いて目を閉じている
彼に何があったのかは聞けなかった
聞いたところで
教えてくれるとも思わなかった
彼はよく話をしてくれる
そんな彼が話さないという事は
話せないことなのだろう
だから――
Broooockは今日も彼に語り掛ける
Broooock
Broooock
――それ、俺がどうにかしてやるよ!
君に救われた僕が
今度は君を助けたいんだ
きりやん
力が失われた十字架を見て
きりやんはため息を吐いた
きんとき
きりやん
きりやん
きんとき
きりやん
きりやん
シャークん
シャークん
シャークんの考察に
きりやんははっとした
きりやん
きりやん
シャークん
きりやん
きりやん
きんとき
雨さえ止んでしまえば
雨に交じっている
悪魔の気配が消えるので
本体の気配を 感知しやすいと考えて
きりやんは雨を 止ませようとしていた
きりやん
きりやん
きりやん
きんとき
きんとき
きりやん
きりやん
きりやん
シャークん
きりやん
きんとき
きんとき
きりやん
きんとき
きりやん
二日目も解散となり
各々が部屋に戻っていく中
きりやんは
スマイルの部屋を訪れた
きりやん
スマイルの部屋は
薬がたくさん収納されている
時折それを持って
町に降りる姿は
何度も見かけていた
昨日スマイルの部屋を
訪れた時はかなり部屋の中は
乱雑だったのだが
家主がいなくなった部屋は
綺麗に片付いていた
棚をぱかりと開けると
大量に入っていた薬の瓶が
すべてなくなっている
きりやん
きりやん
きりやん
目ぼしいものは特に見当たらず
きりやんはスマイルの 部屋を後にした
さぁっ――
風が吹いて
桜の樹の葉が揺れる
桃色の花びらが舞い散り
地面を埋め尽くしていく
きんときは桜の樹の上に座って
その様子をじっと見つめていた
きんときには
生きる目的が特にない
ただなんとなく生きていて
特に何かをしなければ ならないだとか
どうして生きているのだとか
どうして生まれたのかなど
考えもしなかった
それが急に現れた
神や魔族やらによって
自分がどのようにして
桜の樹の精霊になったのか
知る事となった
――まぁ
だからなんだという話だ
生まれがどうであれ
今のきんときには
何の関係もない
人間だった頃の
記憶など一切ないし
もちろんシャークんの事だって
きんときは知らない
だが――
この逸る気持ちはなんだろうか
妙な焦燥感に
駆られているが
どうすればいいのかわからない
きんとき
それが何も思いつかない
自分が何をしたいのか
わからない
そうしてよくわからないまま 燻って
きんときは自らの膝に 顔を埋めた
シャークん
きんときが小さく顔を上げて
そこにはシャークんがいた
シャークん
きんとき
シャークん
シャークん
シャークん
きんときは腰を浮かせると
ふわりと浮いて
地面に降り立ち
シャークんの目の前に立った
まったく興味のなかった
自分の生い立ちに
きんときは耳を傾けたくなった
それはきっと
この焦燥感のせいだろう
シャークんは視線を
うろうろと彷徨わせながら
スマイルに話した内容を
きんときにも共有した
きんとき
きんとき
シャークん
シャークん
シャークん
シャークん
きんとき
シャークん
シャークん
シャークん
シャークん
きんとき
きんとき
きんとき
きんとき
シャークん
シャークん
きんとき
シャークん
シャークん
きんとき
きんとき
シャークん
シャークん
きんとき
きんとき
きんとき
シャークん
きんとき
きんとき
シャークん
シャークんは楽しそうに笑う
つられてきんときも
笑顔になった
なぜだろうか
きんときは昔から
こうして笑っていた気がした
彼と――
かけがえのない友人たちと共に
シャークん
シャークん
シャークん
シャークん
きんとき
きんとき
きんとき
きんときの体が
ふわりと浮かぶと
その身体は透けていき
シャークんの目の前から
完全に消えてしまった
シャークん
桜の樹に意識を 戻したきんときは
自身の足元に絡まる
たくさんの異物たちの中で
白骨遺体に注目した
樹の根はその部分だけ
赤く染まっていた
きんとき
さすがに自らの意思で
自身を動かす事は
できないため
それを掘り起こす事も
無理な話だ
しかし――
これが本当にきんときならば
きんときの本体は
桜の樹ではなく
この白骨遺体なのでは
ないだろうか
彼の魂は
手を高く上げている
その身体に手を伸ばした――
きんとき
シャークん
きんときは実体を持って
シャークんの背後に現れた
人狼のくせに
どこかビビりなシャークんに
きんとき
きんときはくすくすと笑った
シャークん
きんとき
きんとき
シャークん
きんとき
シャークん
彼は
かけがえのない存在だった――
気がする
きんときは少しだけ
生前の記憶を取り戻した
それは確かに
自分の死の間際の記憶だった