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彼らが懸命に鍛錬をしている間、敦はセーブハウスの方へ向かっていた。
マフィアを抜け出すため、荷物をまとめなくてはならなかった。
師匠のくせして弟子を放っておくのかと詰められたら何も答えられそうにないが、
中原がいない時間帯が一番の機会なのだ。
中原はこういったことに敏感だから、中原がいる時に行おうものならすぐに見つかるだろう。
それほどまで先を急ぎたかった。
芥川龍之介
聞き慣れた、声が後ろからした。
振り向いてみるとそこには芥川が腕を組んで敦を見下ろしていた。
中島敦
芥川はふんと鼻で笑う。
芥川龍之介
芥川龍之介
中島敦
中島敦
中島敦
芥川はため息を吐き、一歩、敦に近づいた。
芥川龍之介
芥川龍之介
芥川龍之介
芥川龍之介
心臓が飛び跳ねたような気がした。
芥川のその蛇のような、すべてを見透かすような目が、たまらなく恐ろしく感じた。
芥川龍之介
寂しそうな声色だった。
めったに、感情をあらわにしない芥川の声が、寂しそうだった。
芥川龍之介
芥川龍之介
芥川龍之介
手が震える。
体全身が逃げ出したいという衝動に駆られる。
だけれど、恐ろしくも感じていても、芥川といるこの空間に酔いしれている自分がいる。
中島敦
大きくため息を吐いた芥川は、何も言わず、その場を通り過ぎた。
敦は胸を撫で下ろした。
そこからはがむしゃらに走った。
がむしゃらに家の扉を開けて、無作為に少ない荷物をまとめて……
そして、どこからともなく、無力感と脱力感が心をむしばむ。
頭を駆け巡るのは、今までのことだった。
院長の言葉。
芥川との関係。
弟子の成長。
首領への忠誠。
部下たちからの、敬意。
それら全てを投げうってまで、自分は人を救う道に行きたいのか?
拾ってもらった恩を忘れて、敵へと成り下がるのか?
今までの自分を自分が否定するのか?
いや、そんなつもりはない。
ただ敦は自由と解放がほしいだけなのだ。
今までのことは忘れず、ただ己を縛る囲いから逃れられたいだけなのだ。
そう、そうだ。
そうなのだ。
だから、これは裏切りではない。
これは、選択なのだ。
ただ選択をしているだけなのだ。
はなから裏切るつもりはなかったのだから。