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燐の表情が、ほんの少しだけ曇った。
朝比奈 燐
湊は一瞬だけ言葉に詰まり、目を逸らす。
白瀬 湊
言いかけたところで、燐の視線がすっと鋭くなる。
朝比奈 燐
朝比奈 燐
白瀬 湊
湊が言葉を探すよりも早く、燐は続けた。
朝比奈 燐
朝比奈 燐
朝比奈 燐
燐の瞳が、じっと湊を捉える。
朝比奈 燐
ほんの少しだけ首を傾けて、追い打ちをかける。
朝比奈 燐
あまりにも畳みかけるような質問だった。
湊は完全に思考が止まり、ぽかんとしたまま燐の顔を見つめるしかない。
白瀬 湊
沈黙が数秒流れる。
すると燐の眉が、わずかに寄った。
朝比奈 燐
さっきよりも低い声になり
朝比奈 燐
朝比奈 燐
白瀬 湊
朝比奈 燐
間。
朝比奈 燐
朝比奈 燐
白瀬 湊
慌てて湊は手を振った。
白瀬 湊
頭の中がぐちゃぐちゃで、言葉がうまくまとまらない。
白瀬 湊
苦し紛れに続ける。
白瀬 湊
視線を泳がせながら、無理やり笑う。
白瀬 湊
自分でも意味の分からないテンションだった。
白瀬 湊
白瀬 湊
勢いよく立ち上がる。
白瀬 湊
そう言い捨てて、くるっと背を向けた。
朝比奈 燐
朝比奈 燐
湊は振り返らない。
そのまま早足で、休憩スペースを出ていく。
廊下に出た瞬間、心臓がバクバク鳴っているのに気づいた。
白瀬 湊
後ろは見ない。
見たら絶対、戻れなくなる気がした。
朝比奈 燐
白瀬 湊
人気の少ない廊下の角で、湊は壁に手をついたまま肩で息をしていた。
心臓がうるさいくらい鳴っている。
さっきまで全力で走っていたせいもあるけど、それだけじゃない。
用事なんて嘘だ。
嘘だけど……!
白瀬 湊
思い出しただけで背筋がぞくっとする。
普段の朝比奈燐は、落ち着いてて、どこか余裕のあるやつだ。
なのにさっきの燐は、妙に距離が近くて、視線が外れなくて。
まるで、逃がさないみたいな目をしていた。
白瀬 湊
湊は顔を両手で覆った。
適当に話を終わらせて、そのまま逃げてきちゃった。
白瀬 湊
白瀬 湊
あのままあそこに居たら、なんか危ない気がした。
理由は分からない。
ただの直感だけど。
湊はゆっくり背中を壁に預け、天井を見上げる。
元はと言えば──
軽いノリでセフレになろうなんて言ったのが悪かったんだ。
白瀬 湊
白瀬 湊
白瀬 湊
そのときだった。
御影 遥
御影 遥
御影 遥
湊はゆっくりと顔を上げる。
白瀬 湊
御影遥
高校の頃からの、唯一と言っていい親友。
背が高くて顔も整っているから、高校の頃はかなりモテていた。
確か大学でも、いろんな子から言い寄られてるとか何とか……。
白瀬 湊
遥は湊の顔をじっと見て、眉をひそめた。
御影 遥
少し屈み込んで覗き込む。
御影 遥
その一言で、湊の中の何かがぷつんと切れた。
白瀬 湊
白瀬 湊
遥は一瞬だけ目を瞬かせた。
御影 遥
そこからは、ほとんど勢いだった。
一人で抱え込むにはしんどすぎて
全部話してしまった。
自分が朝比奈燐に好意を抱いていること。
勢いでセフレみたいな関係になってしまったこと。
そしてさっき、逃げてきたこと。
言葉は途中からぐちゃぐちゃだったけど、それでも全部吐き出した。
遥は腕を組んだまま、最初は真剣な顔で聞いてくれていた。
御影 遥
御影 遥
御影 遥
湊が最後まで話し終えたとき
沈黙が落ちた。
そして──
遥の肩が、ぴくっと揺れた。
もう一度。
ぴく、ぴく
白瀬 湊
不安になって顔を覗き込む。
その瞬間
御影 遥
遥はとうとう吹き出した。
御影 遥
腹を押さえながら笑い始める。
御影 遥
湊は一瞬ぽかんとしてから、顔を真っ赤にした。
白瀬 湊
遥はまだ笑っている。
御影 遥
息を整えながら言う。
御影 遥
ニヤッと笑う。
御影 遥
くすっと笑いながら、遥が湊の頭をわしゃわしゃと撫で回す。
白瀬 湊
白瀬 湊
慌てて手を払うと、遥は「あーはいはい」と軽く両手を上げた。
御影 遥
御影 遥
白瀬 湊
湊が間の抜けた声を出すと、遥は呆れたように肩をすくめる。
御影 遥
御影 遥
白瀬 湊
さっきのやり取りが頭をよぎる。
逃げてきたときの自分の背中。
あのときの燐の声。
白瀬 湊
白瀬 湊
ぼそっと答えると、遥はふっと笑った。
御影 遥
御影 遥
白瀬 湊
湊は少し顔をしかめた。
白瀬 湊
御影 遥
白瀬 湊
即答だった。
御影 遥
遥が首をかしげる。
湊は思い出して、思わず身震いする。
白瀬 湊
御影 遥
遥は妙に平坦な声で相槌を打つ。
御影 遥
白瀬 湊
湊はすぐさま遥の肩をぽかぽか叩いた。
白瀬 湊
御影 遥
笑いながら腕でガードする遥。
御影 遥
ひとしきり笑ったあと、遥はふっと思い出したように言った。
御影 遥
白瀬 湊
御影 遥
遥はスマホをポケットにしまいながら、軽く顎で廊下の奥を指す。
御影 遥
御影 遥
そして、にやっと笑う。
御影 遥
御影 遥
視聴覚室の中。
カーテンが半分閉まっていて、遥がパチンと電気をつける。
白瀬 湊
湊はぶつぶつ言いながら、机の上を見回した。
御影 遥
御影 遥
御影 遥
白瀬 湊
即答。
遥はくすっと笑う。
御影 遥
御影 遥
部屋の奥を見渡しながら歩いていく。
御影 遥
机の上にぽつんと置かれているノートを持ち上げた。
白瀬 湊
湊も覗き込む。
白瀬 湊
表紙には丸い字で名前らしきものが書いてある。
御影 遥
そのときだった。
白瀬 湊
湊の目が、机の端に置いてあったものを見つける。
白瀬 湊
勢いよく遥の袖を掴む。
御影 遥
引っ張られた遥の体がぐらっとよろめいた。
御影 遥
体勢を崩した遥は、とっさに机に手をつく。
ドン。
遥の腕の間に湊が閉じ込められる形になった。
気づけば、遥の腕が湊の両側についている。
まるで、逃げ道を塞ぐみたいな体勢だった。
近い。
白瀬 湊
一瞬、二人とも固まる。
距離が、近い。
湊が目を瞬かせた。
遥は小さくため息をつく。
御影 遥
ガラッ!!
勢いよく扉が開いた。
二人の視線が一斉にそちらへ向く。
入り口に立っていたのは、朝比奈燐だった。
少し肩で息をしている。
紺色の髪が乱れて、額にかかっていた。
どう見ても、走ってきた顔だ。
そして。
燐は何も言わない。
ただ──
遥の腕に閉じ込められいる湊と、覆い被さるような体勢の遥を。
じっと見つめていた。
声も、表情もない。
けれど。
その目だけが、静かに細くなる。
部屋の空気が、一瞬で冷えた気がした