家には5人の問題児が居る。
Nakamuは何かとやらかすし
逆にスマイルは何もしない。
Broooockはよく物を無くすし
きんときは困ったら力で解決しがち。
でも一番の問題児はシャークんだ。
彼は何度注意しても不健康な生活をやめない。
誰かが声をかけないと食事を取らないし
朝方に漸く寝たと思ったら昼にはゲームを再開している。
だからいつまで経っても体はガリガリだし、隈も濃くなる一方。
いい加減直させないと。
ナカム
ナカム
やん
やん
ナカム
やん
ナカム
Nakamuを見送り時計に目をやる。
23時42分。
やん
冷凍する予定だったご飯をラップに包み塩を塗してレンジで温める。
軽く形を整え、お茶と一緒にお盆に乗せて
コンコンコン。
緑色のネームプレートが掛けられた扉をノックする。
でも中から返事は返ってこない。
予想通り。
そっと中を覗くとディスプレイの明かりに照らされた薄暗い部屋で、赤いヘッドセットを装着し忙しなくキーボードを叩くシャークんの姿があった。
はぁ、と溜め息を漏らし部屋の電気をつける。
シャケ
やん
シャケ
やん
エスケープを押しポーズの状態にはしたがゲームを閉じる気配は無い。
ヘッドセットを首に下ろす彼におにぎりを差し出せばキョトンとした顔をした。
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
俺が強めに押し付けると渋々受け取り小さな一口で食べ進める。
やん
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
ほんとにもう。
子供じゃないんだからしっかりしてもらいたい。
シャケ
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
なんて言い合っているうちに0時を回り
強制的にパソコンを落とさせてシャークんをベッドに寝かせた。
やん
シャケ
電気を消して部屋を出る。
キッチンに戻り食器を洗って
全ての電気を消してから
もう一度彼の部屋を覗く。
やん
シャケ
シャークんはモニターの前に座り直していた。
やん
シャケ
やん
何も言い返せなくなったシャークんはベッドに入り直す。
でも見張ってないとまた出てしまうだろう。
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
有無を言わさず部屋に布団と枕を取りに行き、シャークんのベッドのすぐ下に敷く。
床で寝るなんて久しぶりだ。
やん
シャケ
これで明日の朝食を一緒に食べれば完璧。
毎日早寝早起きを心がけてくれれば俺も世話を焼かずに済むんだけど。
まぁ、人の生活リズムなんてそう簡単に変えられるものでは無いだろうし
うん?ちょっと待て
目を閉じているのに何か眩しい
部屋の電気もパソコンも消したよな。
やん
シャケ
シャケ
やん
取り上げたスマホの画面には彼お気に入りのリズムゲームが表示されていた。
よく見れば髪の隙間からワイヤレスイヤホンが見える。
大音量にしてやれば悲鳴を上げて起き上がった。
シャケ
やん
シャケ
やん
やん
シャケ
やん
全くもう、とつい荒くなってしまった息を整え再び横になる。
本当に油断も隙もあったものではない。
いっそ隣に寝させようか。
え、それでいいじゃん。
やん
シャケ
シャケ
やん
シャケ
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
やん
この会話を最後にお互い沈黙し
暫くして小さな寝息が聞こえてきた。
寝させるのにも一苦労だけど
反抗的な猫を手懐けられたような
そんな達成感に似たものを感じ
満足した俺もまた眠りにつくのだった。
翌日。
22時。
夕食もお風呂も済ませて
各々自由に過ごす中
珍しく自室に引きこもらずリビングに居座っていたシャークんが寄って来た。
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
シャケ
驚いた。
てっきり昨夜のことは触れずに逃げようとすると思ったから
まさかシャークんの方から切り出してくるなんて。
やん
シャケ
シャケ
ぶるーく
ぶるーく
やん
シャケ
ぶるーく
シャケ
拗ねたようにそう吐き捨てるとシャークんは自室へ戻ってしまった。
ぶるーく
ぶるーく
やん
やん
ぶるーく
やん
ぶるーく
眉を下げるBroooockは放っておいて自室に布団を取りに行く。
いやシャークんのベッドで寝るから枕だけでいいか。
枕を持って彼の部屋をノックする。
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
本当は寝たかったくせに。
いくら隠そうとしても本心バレバレだよ。
そういう所はちょっと可愛いとつい思ってしまった自分に気づき
誤魔化すように布団に潜った。
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
抵抗しても無駄だと学んだ彼の頭を撫でてやると
肩を跳ねさせた後、体を丸めた。
うん、やっぱり猫みたい。
背を向けているからどんな表情をしているかは分からないけれど
嫌じゃなければいいな。
なんて思いつつ寝ようと手を離したら
シャークんが顔をこちらに向けてきた。
やん
シャケ
やん
シャケ
恥ずかしかったのかそれだけ言うとまた背を向けてしまって
でも此方の様子を伺っているのが気配でわかる。
ちゃんと言葉にしてお強請りできたし、ご褒美にもう一度撫でてあげよう。
やん
シャケ
やん
シャケ
シャークんの声が段々小さくなってきて
あっという間に眠りについてしまった。
頭を撫でられるのが好きだなんて
これはいい事を知ったな。
一緒に寝るようになってから一週間。
俺は毎晩シャークんの部屋を訪れている。
スマイル
シャケ
スマイル
シャケ
家事当番の2人が洗い物をしながらそんな会話をしているのが聞こえてきた。
確かに俺が声をかけて起こすことは無い。
でもシャークんは音に敏感だから
布団のガサガサいう音や扉の開閉音で起きてしまう。
スマイル
シャケ
スマイル
シャケ
スマイル
追い出す気なんて更々無いくせに。
でももし部屋に行かなかったら
シャークんはどうするんだろう。
好奇心と悪戯心が混ざった感情を持って自室の扉を閉める。
久しぶりに寝転がった自分のベッドは何だか広く感じた。
スマホを片手にチラチラと時計を確認する。
いつもなら、そろそろ寝ようかという時間。
シャケ
彼らしく控え目な声に呼ばれてつい口が緩む。
返事を返してやれば今度は控え目に扉を開けて顔を覗かせた。
シャケ
やん
シャケ
シャケ
やん
シャケ
あらあら、随分と素直になっちゃって。
きっとこんなシャークんを見られるのは俺だけの特権だ。
やん
シャケ
やん
やん
シャケ
シャークんが俺のベッドに横たわる。
そういえばいつの間にか向かい合って寝るようになったな。
恥ずかしがり屋の彼にしては珍しい。
いやそもそも一緒に寝ている時点で珍しいことなんだけど。
元々迷惑がっていたはずなのに
どうしてシャークんは俺と寝たがるのだろう。
シャケ
やん
シャケ
やん
シャークんが俺の胸に顔を埋める。
やん
シャケ
やん
シャケ
何だろう。
何だかちょっと、違和感。
きんとき
14日目。
不健康な生活を止めさせようとその場の思いつきで一緒に寝たのに
気づいたらそれが日課になっていた。
やん
きんとき
きんとき
やん
きんとき
きんときの言う通りだ。
何時までも一緒にという訳にもいかないし
今後夜に外出する事だってあるだろう。
やん
きんとき
やん
きんとき
やん
きんとき
きんとき
やん
きんとき
やん
きんとき
シャケ
やん
きんとき
シャケ
きんとき
やん
シャケ
きんとき
シャークんは一瞬俺を見た後目を泳がせた。
シャケ
きんとき
きんとき
考える素振りを見せ
というか断る言葉を探して
でも見当たらず黙り込む。
きんとき
シャケ
きんとき
シャケ
きんとき
きんとき
シャケ
シャークんはまた黙り込んで俺を見た。
理由はあるけど言いたくないみたい。
きんとき
きんとき
シャケ
きんとき
きんときから解放され足早に去って行くシャークん。
きんとき
やん
きんとき
やん
きんとき
きんとき
確かに
さっきの様子を見た感じ他のメンバーの言う事は聞きそうにない。
俺が聞いても話してくれるとは限らないけれど。
それなら。
きんとき
やん
きんときと別れて自分の部屋に戻る。
PCをつけて動画編集ソフトを立ち上げて
シャークんが来るのを待つ。
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
やん
シャケ
やん
これは嘘。
彼はきっと一緒に寝たがる理由を話してくれないだろうから
行動で教えてもらう作戦。
シャケ
やん
シャケ
やん
やん
やん
やん
シャケ
無いはずの耳と尻尾が垂れ下がり申し訳ない気持ちになるけれど
これは彼のためでもあるから
引き留めてしまいそうになる手をグッと堪えて
扉が閉まるのを見届けた。
ナカム
ナカム
やん
翌朝。
Nakamuの焦った様な声に起こされた。
ナカム
やん
ナカム
やん
ナカム
ナカム
Nakamuに腕を引かれ
きんときの部屋を訪れる。
中には他のメンバーも居て
ベッドに座るシャークんを取り囲むように困った顔を浮かべていた。
ぶるーく
スマイル
きんとき
シャークんは声も出さず
ただポロポロと泣いていた。
目には消えかけていた隈が
前よりも酷く濃く浮かび上がっていて
寝ていないのだと見て分かる。
きんとき
俺に気づいたきんときが
今にも泣き出しそうな顔で駆け寄ってきた。
きんとき
きんとき
きんとき
どうやら俺の部屋を出ていった後、一度誘いを断ったきんときの元へ行ったらしい。
ぶるーく
スマイル
Broooockやスマイルが辛抱強く声をかけるも彼からの反応はない。
寝ていないのならきっと頭は働いていないだろうし
周りの声も聞こえていないのかも。
やん
シャケ
やん
彼の前にしゃがみ両手で頬を包んで目を合わさせる。
涙に濡れ隈が酷い目は焦点がブレていて
やっぱり思考が回っていない様子。
やん
ぶるーく
やん
やん
ぶるーく
皆に見守られながら彼をベッドへ横たわらせる。
電気を消して後は任せる様に言えば心配しながらも皆退散して行った。
ドアを閉めてシャークんの隣へ。
やん
シャケ
やん
やん
胸に彼を抱き髪を梳く。
すると微動だにしなかったシャークんが僅かに動いた。
やん
やん
シャケ
やん
俺の質問には答えず
でも服をぎゅっと握られて
そこで漸く気がついた。
何かに怯えていると。
やん
シャケ
やん
服を握る手に力が入る。
やん
やん
やん
シャケ
シャケ
少し掠れた今にも消え入りそうな声に
でも少しだけ安心した。
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
シャケ
シャケ
シャケ
シャケ
シャケ
シャケ
シャケ
シャケ
やん
シャケ
シャークんをさっきよりも強く胸に抱く。
やん
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
シャケ
やん
やん
シャケ
シャケ
やん
やん
シャケ
やん
シャケ
規則正しい寝息が聞こえる。
夢の中で無事に会うことは出来たかな。
繋いだままの手を見つめ
そっと微笑む。
きっと俺も夢を見ているんだ。
シャークんの事がこんなにも
愛しいだなんて。
END
コメント
2件
このお話、すごく好きです。ありがとうございます…‼︎