琥珀

あれから、３人の中で弓道部に入部届けを出したのは僕だけだったらしい

弓道部に誘ってきたはずの２人は、なぜか帰宅部だ

ところで、僕は今になって、弓道部に入ったことを後悔している

その理由は…

弓道部なんか、ただ弓を引いていればいいなんてことを考えていたけど、現実はそんなに甘くなかった

毎日毎日、弓を引くどころか弓に触らせてくらすれず、筋トレばかりしている

そんなことを考えていたら、バランスを崩れて倒れてしまった

嫌な笑みで見下ろしてくる黄谷を睨みつけた

からかっても顔色1つ変えない黄谷に、正直僕はいらついていた

黄谷から冷ややかな視線を送られた先輩が、はっきりとものを言えず、おどおどしているのを見て、イライラが頂点に達した

しかしそのとき

今来たのか…？ 部活動見学では見た覚えがない

厳しかった黄谷が、里見という男の言動一つでこんなに簡単に変わってしまうのかと、一年生一同は驚いていた

彼が、黄谷を優しく撫でた

髪で隠れ、表情は伺えなかったが、黄谷はあきらかに照れている

蚊の鳴いたような小さな声で呟いた

5時半ごろ、日が沈みかけたところで部活が終了し、汗だくの体操着を着替えようと更衣室に向かった

僕は、黄谷が本当にホモなら、いじめられるネタが増えたということで微かな喜びを感じていた

そして、鼻歌を歌いながら更衣室のドアを開けようとする

しかしその時

『やっ…離してくださいっ！』

『うるせぇ、てめぇの恥ずかしい動画 ばら撒かれたくないなら黙ってろw』

中から聞こえたのは騒がしい物音

そして、複数人の男の声と、黄谷の怯えたような声だった