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好きです✨
なんでそんなに上手くかけるんですか!✨ 毎度毎度文章が好きすぎて… 普通に売ってる小説読んでる気分です! 次回も楽しみにしてます!!
神作品!💫✨
主
主
主
主
革靴に履き替えて、扉前で莉犬がやってくるのを携帯片手に待っていると、 見覚えのある人物
____ななもり先輩が前からやってきた
今まで姿を見かけることはあったけど、 こんな風に顔を合わせることはめったになかった。
先輩のことを思い出したせいで、なんだか余計に気まずい。
目が合ったけれど、お互い気まずそうに視線をそらして見知らぬ他人のように無言のまますれ違った。
目の前を先輩が通り過ぎていくとき、いつの間にか息を止めてしまう。
この時間はサッカーの部室にいるはずなのにな、と考えてから、 3年生は一学期で部活を引退したことを思い出した。 だから、こうして運悪く鉢合わせてしまったのか...
先輩の髪は以前よりも少し伸びていて、色もちょっと明るくなった気がする。
そして隣には
彼女がいた。
去年から先輩と同じクラスで、僕と付き合ってる時から仲が良かったんだ。
先輩と彼女が付き合いだしたのは、僕と別れてから1ヶ月あとくらいだっただろうか。 手をつないで歩いているのを見かけた。
彼女が先輩に告白して付き合うことになった。 って、遠井さんが言ってたっけ。
先輩たちから僕が見えなくなるまで、うつむいて携帯を見つめ続けた。
隣の彼女は、僕が先輩と付き合っていたことを知っているはずだ。
僕に対してどう思っているだろうと考えると、 今もじっと見つめられているような気がして顔をあげることができない。
流石にもう姿は見えないだろうと思えるくらい時間がたってから やっと肩の力を抜いた。
息を吐き出しながら壁に頭をつけて、天井を見上げる。
先輩とすれ違ったのはたった数分の事なのにどっと疲れてしまった。
ころん
誰にも聞こえないくらい小さな声でつぶやいた。
付き合って別れた後、元カノや元カレといい友達としての関係を続けている子を見ると、そんなにきっぱりと割り切れるものなのかと思ってしまう。
僕はそんなに器用に人と付き合えない。
どう振舞えばいいのかと考えるまえに、挙動不審になって顔を背けてしまったり、逃げてしまったりする。
ななもり先輩や、彼女が僕のことどう思ってるのか考えるときまずくて 空気に溶けてしまいたくなる。
僕が周りの目を気にしすぎるから、そうなってしまうのだろうか。
そもそも付き合ってる時から、先輩の隣に並ぶだけで緊張してうまく話せなかったし、一緒にいるところを友達に見られるだけで恥ずかしくてすごく苦手だったけど。
別れた後、先輩を見かけるだけでこんなにも居心地が悪くなるのなら、 告白されたからって付き合わなければよかった。
なんて考えてしまう。 最低だ。
こんなことを考えて、ふと、今日受け取った手紙を思い出した。
宛先不明のラブレター。
どう処理すればいいのか迷ったけど……
やっぱりこれは見なかったことにして、無視しよう。
あれが本物であれ、嘘であれ、名前が書かれてないのだからどうしようもない
返事をしてから実は間違ってたり、ウソだったら恥ずかしくて、惨めすぎて立ち直れそうにない。
本気だったとても、もしも、もしもだけれどさとみ君みたいな目立つ人と付き合うなんてことになったら。
絶対学校中から注目される。
そんなの耐えられない。かといって断るのも気が引ける。
さとみ君には申し訳ないうえにずるい方法だけど、 無視することに決めると、ちょっと気持ちが軽くなった。
時をぬいた瞬間。
男子1
突然聞こえてきた声に思わず体がびくりと跳ねた。
『さとみん』これがさとみくんの愛称だということは僕でも知ってる。
恐る恐る声のした方を向くと、名前を呼ばれたさとみくんと、 友達らしき二人の男の子が靴箱の陰から姿を現した。
さとみくんはネクタイを少し緩めて、学校指定のカバンを肩にかけている。
彼はブラウスの袖をまくりポケットに手を突っ込んだまま、
さとみ
と、不機嫌そうに答えた
周りにいる人たちは男女、学年関係なく彼を見いている。 …ような気がする。
にしても今日は、なんでこう出会うはずのない人ばかりと出会ってしまうのだろう。
理系コースは文系コースと違って、授業が終わった後に追加授業、 いわゆる7時間目があるので、いつもなら下校時間が被ることはないのに。
男子2
男子1
さとみ
さとみ
話しかける2人の男の子に、さとみくんは面倒くさそうに荒っぽく声をあげた。
元気がない。というよりも不機嫌そうだ。
昼から彼の様子がおかしいという友達の会話に思わず、 手紙の入ったカバンをぎゅと握りしめる。
さとみくんは落ち込んでる、らしい。昼から。 つまり僕が手紙を受け取ってから。 それは、やっぱり、どう考えても手紙のせい、だよね。
机の中に何かメッセージが残されてるかもしれない。
それがなかったことを気にしているのなら、やっぱり、あの手紙は本物だったのだろうか。
こっちに向かってくるさとみ君に見つからないように柱の陰にそっと身を隠して地面を見つめた。
彼に見つかったらまずい
友達は手紙のこと知らないみたいだけど、 けれが誰を好きなのかくらいは知ってるかもしれない。
彼らの足音が近づいてくるのがわかる。
心臓がバクバクと音を立てて激しく伸縮する。
ここにいることを気づかれたらどうしよう。
どうか見つかりませんように。素通りしてくれますように。 と願いながら恐々さとみ君を見る。
パチン
と視線がぶつかって、コンマ一秒で目をそらす。
まずい。
まずい、
まずい、
まずい!
絶対気づかれた!
まばたきをするのも忘れて地面を見続けた。
もし、あの手紙が私宛のものだったら、相手は僕のこと知ってるわけで、 僕が返事しないことに不満を抱いているわけで……。
こんな場所で話しかけられたら、いや、それより手紙のことを発言されたら、
終了だ。
周りには他の生徒もたくさんいる。 明日からうわさになるのは間違いない。
話しかけるな!そのまま帰って!
男子1
僕に向かってきてる足音がすぐそばで鳴りやんだ。
代わりにさとみ君の様子を探るような友達の声が聞こえて 体中に変な汗がぶわりと浮かぶ。
お願い!何も言わないで!返事はする!
今日は無理だけど、来週とか、いや、明日!明日必ずするから! お願いだから話しかけないで。
お願いだから、こんな人が多いところでラブレターの話なんてしないで!
ぎゅっと目を瞑って心の中で叫び続けた。
さとみ
莉犬
僕に話しかけたであろうさとみ君の声に 『ひいーっ!』と思た瞬間、それをかき消すような莉犬の声が聞こえて弾かれたように顔をあげた。
ころん
さとみ君の声はまったくきこえなかった素振りで、 靴を履き替えてる莉犬のそばに駆け寄った。
た、助かった!莉犬、ナイスタイミング!
莉犬
ころん
一刻も早くここを立ち去らなければと莉犬の背中を押しながら、 早く早くと促した。
今までこんなふうに急かしたことのない僕の、いつもと違う行動に、 莉犬は驚きと、戸惑いを見せる。
さとみくんに声をかける隙を与えないように莉犬だけを見つめて しゃべりながら、彼に背を向けて校舎を出ようと足を速める。
背後から
男子2
とさとみ君に話しかける男の子の声が聞こえて、彼が
さとみ
と、そっけない返事をしたのが分かった。
その時彼がどんな表情をしていたのかわからない。
主
主
主