今まで俺はいい得点は取っていたが目立つような功績はない、
ななもり
くん…?

ななもり
さとみくん、話聞いてた?

さとみ
っえ?あ…あぁー、ごめん

さとみ
聞いてなかった

ななもり
もー!さとみくん話聞いてないこと多くない?

さとみ
ごめんって笑

さとみ
で、話って?

ななもり
だからー!今日の審査が終わったらジェルくんと俺とさとみくんで記念パーティーを開かない?

さとみ
え…、でも俺っ、

ななもり
……落ちるかもしれないなんて、言わないよね?

さとみ
っ、

ななもり
はぁ、

ななもり
あのさぁ、さとみくんは十分凄いんだよ?今すぐデビューしても輝ける。

ななもり
でも、自信が足りてない。

ななもり
自分に自信が無いことはアイドルにとっては致命傷。もっといったらアイドルが1番してはいけないこと、

俺はいつもこうだ、やりたいかどうかじゃなくて、自分が出来るかどうかを考えてしまう
自分が失敗した時、どんな目を向けられるか分かっているから…
さとみ
俺、怖いんだ

さとみ
怖いからなんにも行動できない

さとみ
自分からじゃなんにもできない、

さとみ
アイドルになるためのレッスンや習い事だって全部母親が望んでたから、

さとみ
俺には…、自分の意思がないんだ

さとみ
いや、ないんじゃないな…

さとみ
持てないんだ

ななもり
それ、どういうこと?

さとみ
俺は母さんがアイドル好きだったからか小さい頃からアイドルになるためのたくさんの習い事をさせられてきた

さとみ
それで母さんの言うことを聞くのは当たり前、逆に言えば母さんになにか言われなければ自分から何も行動できない、

さとみ
そんな子供に育った

さとみ
そこからだった、俺が間違えてしまったのは

さとみ
俺は小学校に上がってから母さんから演劇を習い舞台に立てと言われた。だから俺は必死に演劇について学んだ

さとみ
でも、オーディションに受かってから猛特訓し本番が近づくにすれ徐々に疑問になっていたことがあった

さとみ
今思えばほんと、なんのために練習してんたんだって感じだけど、当時の俺からすれば舞台に立つまでが母さんに言われたこと、

さとみ
だから舞台を成功させようなんて思いもしなかった

さとみ
そして疑問を抱えたまま舞台に立ち、案の定俺は一言も喋らなければ何も動かないただの人形になってしまった

さとみ
そして観客や両親、

さとみ
スタッフさんや照明さん

さとみ
音響さん、そして演出家さん

さとみ
色んな大人の人達の目を見て思った

さとみ
俺って惨めだな、って

さとみ
なーくんもそう思わない?笑

さとみ
幕が上がって照明が付いてから俺は声を出したくても出せなかった、足を動かしたかったけど動かなかった……

さとみ
俺は、母さんとの約束を守るために生きてきたから、今更脳でわかっていても体が逆らおうとしなかった

さとみ
そして、皆に呆れた目、失望した目、軽蔑した目で見られたけど母さんには許して貰えると思った

さとみ
だって、母さんとの約束を守るために動かなかったんだから

さとみ
なのに母さんは泣きながら俺の頬を叩いた、それこそアニメみたいに頬に紅葉の跡がつくほど何度も何度も叩いた

なんでそうなっちゃったの?どこで育て方を間違えてしまったの?
さとみ
そこからはずっと自分を肯定し続け俺を否定し続けた

さとみ
何度やめてと叫んでも喉がかれるほど泣いても母さんは暴行を辞めなかった

さとみ
そして俺は気づいた

さとみ
母さんは俺のために言ってくれていたんじゃない、

さとみ
全部自分の為に言っていた。自分のステータスを上げるための道具を育てていたんだ

さとみ
そう、俺はどう頑張っても母さんの息子にはなれなくて、いつまでもいつまでも道具なんだ

さとみ
そして、最近俺は思った。

さとみ
俺がアイドルになって有名になれば母さんはまた俺を見てくれる

さとみ
いつまでも道具だとしても、認めてくれるならそれでいいって

さとみ
でもそれも違った。

さとみ
ここにいる人他には皆俺みたいに希望を失った目なんかじゃなくて俺とは真反対に希望に満ち溢れたキラキラした目だった

さとみ
最初は俺も皆のように頑張ろうと思った。でも、頑張れば頑張るほどキラキラした目の人達ばっかり落ちていって

さとみ
光なんてない俺が受かってしまって怖かった、罪悪感でおしつぶされそうで

さとみ
だから、俺はアイドルにはッ

さとみ
……ぇ?

ななもり
馬鹿じゃないの?

ななもり
さとみくんがそんなこと思ってたなんて呆れた

さとみ
……っ

ななもり
さとみくんはいつまで母親に取り憑かれてるわけ?

ななもり
母親に認められようとする前に、自分を変えなければ、認めてもらえるわけないじゃん

ななもり
俺はさとみくんだからグループにも受かると思ってた、

ななもり
でもそのさとみくんは本当のさとみくんじゃなかった

ななもり
俺が好きなのは自分に自信がないけどそれでも努力して這い上がろうとしているさとみくん

ななもり
さとみくんはその努力も水の泡にするの?

ななもり
そんなの、馬鹿みたいじゃん…

ななもり
ううん、みたいなんかじゃない

ななもり
さとみくんは正真正銘の馬鹿だよ

さとみ
ッ、さっきから聞いてれば馬鹿馬鹿言って、俺が1番分かってるんだよ、

さとみ
俺だって変わりたいに決まってるだろ!!

さとみ
でもッ!俺は、どうすればいいか分からないっ、

さとみ
なーくん……

さとみ
助けてくれよ、俺からこの足枷を外されてくれ

ななもり
じゃあまずは5位以内に這い上がって

ななもり
俺はいつまでも待ってるから

さとみ
…入れたら助けてくれるのか?

ななもり
ふふ、それはその時までの秘密だよ

それが俺にはとても美しく見えて、俺のずっと真っ黒に染まっていた心に光が刺した
さとみ
ありがとう、俺もう少し頑張れる気がする

そして俺の光のなかった瞳が少しの希望を持ち、夢への第1歩に近づいた