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nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 二次創作
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第116話『正常化しすぎている違和感』
午前中から気温が高く、蝉の声がやけに近かった。
夏の真ん中に立たされているような、逃げ場のない暑さ。
いるまは、キッチンのカウンターにもたれながら、リビングの様子を眺めていた。
らんはソファに座って、スマホを操作している。
表情は穏やかで、眉間に皺もない。
――静かだ。
良い意味で、だ。
少なくとも、表面上は。
いるまは視線を逸らし、無意識に自分の影へと意識を落とした。
いるま
声を潜める。
いるま
影は、即座に答えなかった。
ほんの一瞬の沈黙。
いるまの影
淡々とした返答。
いるま
いるまは息を吐いた。
頭痛を訴えない。
立ち止まらない。
考え込まない。
迷わない。
以前は、何かを選ぶ前に必ずあった“間”が、消えている。
それは、回復と呼べなくもない。
普通に考えれば、喜ぶべき変化だ。
――でも。
いるま
いるまは小さく呟く。
いるま
影は何も言わない。
否定もしない。
らんは、軽い。
不自然な程に。
何かを“乗り越えた”軽さじゃない。
中身を整理して、納得して、前に進んだ人間の重さがない。
ただ、余計なものが削がれたみたいに、軽い。
――抜け殻みたいだ。
その言葉が頭をよぎり、いるまは小さく舌打ちした。
縁起でもない。
昼前。
こさめはリビングの床に座って、ゲーム機をいじっていた。
画面に集中しているように見えて、その実、視線は時折らんの方へ向いている。
こさめ
軽い声。
こさめ
ゲームを一時停止して、顔を上げる。
こさめ
いるまは、少しだけ口角を上げた。
いるま
こさめ
こさめは肩をすくめる。
こさめ
一拍。
こさめ
いるまは何も言わず、こさめの言葉を待つ。
こさめ
こさめは言葉を探す。
こさめ
指先で床をなぞる。
こさめ
いるまは、その表現に小さく頷いた。
説明は要らなかった。
確認するしかない。
いるまは、自分の影に向かって、低く聞いた。
いるま
即答だった。
いるまの影
いるま
いるまの影
簡潔すぎるほどの返答。
いるま
いるまの影
ただの光と物体が作る、ありふれた現象。
異物ではない。
違和感もない。
だから――
いるま
いるまの呟きに、影は肯定も否定もしなかった。
同じ頃。
こさめも、自分の影に同じ問いを投げていた。
こさめ
小声で。
こさめ
返答は、まったく同じだった。
見えない。
感じない。
異常はない。
“いない”のではない。
“普通”になっている。
影として感知できないほど、自然に。
こさめは、背筋に薄く寒気を感じた。
こさめ
影は、何も言わない。
午後。
らんは相変わらず、穏やかだった。
笑うし、会話にもちゃんと反応する。
感情の起伏がなくなったわけでもない。
ただ。
深く沈まない。
強く引っかからない。
いるまは、キッチンでコップを洗いながら、考えていた。
影が消えたわけじゃない。
でも、機能していない。
――切り離された。
その可能性が、一番しっくり来る。
らん自身は、安定している。
自覚もない。
困ってもいない。
つまり。
いるま
ぽつりと漏れた言葉に、こさめが反応した。
こさめ
軽い声。
でも、冗談じゃない。
こさめ
こさめは膝を抱える。
こさめ
いるまは、無言で頷いた。
それは、回復じゃない。
整理でもない。
切断だ。
こさめ
こさめが、ふと顔を上げる。
こさめ
理屈じゃない。
感覚の話。
こさめ
一拍。
こさめ
その言葉は、静かだった。
だからこそ、深く刺さる。
いるまは、目を伏せた。
こさめ
こさめが続ける。
こさめ
空気が、少し重くなった。
夕方。
今後の話を、二人は簡単にまとめた。
刺激は与えない。
無理に思い出させない。
でも、完全に放っておくわけにもいかない。
いるま
いるまが言う。
こさめ
こさめが続ける。
いるま
二人の視線が、自然とらんに向く。
ソファでスマホを見ながら、何かに笑っているらん。
普通だ。
あまりにも。
いるま
いるまが言った。
いるま
こさめ
こさめは頷く。
こさめ
いるま
いるまの声は低い。
いるま
一拍。
いるま
こさめは、静かに笑った。
こさめ
外では、蝉が鳴いている。
第116話・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡440
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コメント
1件
安定の神✨ らんらん絶対違う方向向かってるよね……