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主
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 二次創作⚠️
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第117話『揺れないはずの、揺らぎ』
午前の空はよく晴れていた。
白く伸びる雲の向こうで、夏は迷いなく広がっている。
六人で駅前まで出るのは、久しぶりだった。
なつ
なつが改札を抜けながら言う。
みこと
みことがスマホを見せる。
すち
すちは淡々と頷く。
らんは、その少し後ろを歩いていた。
足取りは軽い。
迷いもない。
――軽すぎる。
いるまは、さりげなく視線を向けた。
昨日までの違和感。
影が“普通”になっているという事実。
今日は、確かめる日だ。
店内は、布の匂いと冷房の風で満ちていた。
色とりどりの反物が壁一面に並び、白、藍、紺、淡い水色、薄紫――
なつ
なつが低く呟く。
なつ
いるま
なつ
いるま
いるまが返すと、なつが軽く睨んだ。
その横で、らんは一枚の浴衣を手に取った。
淡い、ほとんど白に近い桃色。
主張は強くない。
柄も控えめ。
らん
あまりに自然に、言った。
全員が、わずかに動きを止める。
みこと
みことが笑う。
みこと
らん
らん
理由は、ない。
迷いも、比較も、躊躇もない。
いるまは、無意識に拳を握っていた。
――らんなら、もっと悩む。
影がそばにあった頃。
選ぶとき、必ず“間”があった。
何かを測るみたいに。
何かに確かめるみたいに。
でも今は。
軽い。
まるで、補助輪を外された自転車みたいに。
安定しているのに、不安定だ。
こさめ
こさめが、いつも通りの声で言う。
その視線は、柔らかいまま鋭かった。
らんは笑う。
らん
即決。
揺れない。
それが、一番怖かった。
試着室の前。
店員が手際よく着付けを進めていく。
帯が締まり、襟元が整えられ、布が形を持っていく。
店員が下がる。
カーテンが開いた。
らん
一瞬、空気が止まる。
なつ
なつが言う。
みこと
みことが頷く。
すち
すちも自然に笑う。
らんは照れたように肩をすくめた。
らん
そのまま、鏡の前に立つ。
姿見に映る自分。
淡い色の浴衣。
少しだけ大人びた表情。
らんの視線が、ゆっくりと下へ落ちる。
足元へ。
床に伸びる影。
そこにあるのは、ただの影だった。
輪郭も、動きも、遅れも、滲みもない。
完璧に、普通。
なのに。
らんの目が、ほんの一瞬だけ、探すように揺れた。
何かを確認するみたいに。
何かを、待つみたいに。
――でも、何もない。
らん
らんは小さく頷き、笑った。
らん
何事もなかったみたいに。
その瞬間。
いるまとこさめの視線が、静かに交わる。
揺れた。
でも、戻らない。
極小。
それだけ。
支払いを済ませ、店を出る。
紙袋を抱えたらんは、どこか満足そうだった。
みこと
みことが言う。
みこと
ふいに続ける。
なつ
みこと
みこと
みこと
すち
すち
なつ
いるま
なつ
なつが笑う。
夕方の風が、通りを抜ける。
紙袋が揺れ、浴衣の布が中でかすかに鳴る。
そのとき。
らんが、はっきりと振り返った。
呼ばれたみたいに。
視線は、誰もいない後方へ。
らん
なつが不思議そうに見る。
なつ
らん
らんは首を振る。
何もない。
人も、声も、影も。
ただの、夏の風。
けれど。
こさめが、小さく息を吸った。
いるまも、目を細める。
揺れた。
確かに。
でも、らんは覚えてない。
探した自覚もない。
会話はいつも通りだった。
みこと
なつ
すち
笑い声が、夕暮れに溶ける。
らんも、そこにいる。
軽くて、穏やかで、安定している。
影は、足元にある。
普通の影。
異物ではない。
追えない。
触れられない。
回復ではない。
完成でもない。
切断でもない。
揺れは、あった。
極小だけど、僅かに。
ならば。
まだ。
終わっていない。
いるまは目を閉じる。
心の奥で、静かに言う。
――まだ、終わってない。
117・了
主
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡450
主
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