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「淡々と降り積もる記憶の中で。」

#3

𝐽𝐼𝑁

ハッ…

…どうやら… 寝ていたみたいだ。

窓の外には、街並みが 早く通り過ぎてゆく。

…どうやら、長い夢を 見ていたようだな。

誰か…別の人の人生を 夢で見ていた気がする。

でも…何の夢かは 思い出せない。

「次は~建国大学校前。」

「建国大学校前に止まります~」

𝐽𝐼𝑁

あ…次…か。

僕は大学授業の為の リュックを背負いなおして、 窓の外を眺める。

見慣れたはずの道なのに。

これほどまでに 懐かしく感じるのは…

何故だろうか。

「建国大学校前です~。」

「左側のドアが開きます」

「ご注意ください」

僕は映画俳優を目指して、 建国大学校の映画芸術学科で

必死に勉強している所だ。

バスを降りる。

すると…。

スーツを着たしっかりとした 目つきのスマートな人が、

こちらをずっと見ていた。

…誰だ?知り合い…じゃない 気がするけどな…。

僕は、極力目を合わせないように その人の前を通り過ぎると、

その男の人が 急に声を掛けてきた。

𝑚𝑎𝑛

あの…すみません~

𝐽𝐼𝑁

…は…はい。
なんでしょう?

𝑚𝑎𝑛

わたくし、こういう者
でして…

差し出された名刺には、

「Big Hit Entertainment」 イ・ジフン

と表記されていた。

𝑚𝑎𝑛

Big Hit Entertainment
という芸能事務所でして

𝑚𝑎𝑛

ぜひ、事務所から
デビューとか興味
ありませんか?

𝑚𝑎𝑛

貴方なら、絶対に
いい線いきます!!

𝐽𝐼𝑁

…えっと…

𝐽𝐼𝑁

でも…っ

𝑚𝑎𝑛

検討していただけ
ると嬉しいです。
では、また。

𝐽𝐼𝑁

あ…っ

名刺を渡され、男の人は 去っていった。

…どうしよう。

スカウト…か。

なんか…こういう光景… 前にも見たことのあった気が…

Big Hit Entertainment… 何故か…聞いたことないはずの 名前が、

とてつもなく懐かしく 感じてしまう…。 何故だろう。

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

ソクジナ~、
どうしたんだよ~?
そんな所にぼーっと
立っててㅎㅎㅎㅎ

𝐽𝐼𝑁

あ…ソジュン…か。
おはよう。

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

おはよ。

同じ学部の友達である ソジュンが声を掛けてくれた。

𝐽𝐼𝑁

…ソジュン?

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

ん?どうした?

𝐽𝐼𝑁

…スカウト…スカウト
されたんだけど…さ。

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

え?

𝐽𝐼𝑁

どうしたら…いい?

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

え、スカウト!?
まじでっ!?

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

やっぱ、お前、
カッコいいもんなㅎ

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

で?どこの事務所?
大手?

𝐽𝐼𝑁

え…っと。
書いてあるのは…

𝐽𝐼𝑁

Big Hit Entertainment
って所…みたいだけど?

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

ん、え、何て?

𝐽𝐼𝑁

Big Hit Entertainment。

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

聞いたことない…けど

𝐽𝐼𝑁

え、どうすれば…

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

ジナって…将来
映画俳優になり
たいんだよな?

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

じゃあ…

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

連絡すれば?

𝐽𝐼𝑁

え、まじで言ってる?

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

こんな事なんて、
滅多にないしさ?
キッカケは自分で
掴まなきゃ。
だろ?

𝐽𝐼𝑁

…そっか。

僕はもらった名刺を 丁寧にポケットの中に 入れた。

𝐽𝐼𝑁

…考えてみよ。

𝑆𝑂𝐽𝑌𝑈𝑁

そうだな。

ソジュンと大学に向かう。

大学が終わってから、 家に帰った後。

両親に許可を取ってから、 僕は、名刺の番号に、 電話した。

この電話が…。 僕の人生全てを変えたんだ。

スカウトされ、その 事務所に連絡した 一週間後。

僕は呼び出されて、 事務所の会議室にいた。

𝐽𝐼𝑁

…あの…っ

𝑚𝑎𝑛

ああ、初めまして…
ではないね。

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

声を掛けさせて
もらった、Big Hit
Entertainmentの
イ・ジフンです。

𝐽𝐼𝑁

…はい。

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

電話をわざわざ
ありがとう、今日
からビッヒに
練習生として所属
という事でいいか?

𝐽𝐼𝑁

…ビッヒって…
なんですか…?

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

ああ、ビッヒは、
Big Hit Entertainment
の略だよ。

𝐽𝐼𝑁

ビッヒ…

𝐽𝐼𝑁

練習生…

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

そう。練習生として
色々な経験を積んで、

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

ダンスや歌、
パフォーマンススキル
を身に着けて、

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

順調にいけば、
正式にデビューする
ことが出来る。

𝐽𝐼𝑁

…ダンス?

𝐽𝐼𝑁

…歌…?

𝐽𝐼𝑁

えっと…
そういうスキルが…
必要なんですか…?

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

そりゃそうだろㅎㅎ

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

いずれは作曲などの
スキルも身に着けて
もらわなきゃ、
デビューは…
難しいからね。

𝐽𝐼𝑁

作曲…?え…

𝐽𝐼𝑁

ただ演技をすれば…
いいのだと
思っていました。

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

演技?まぁ…
売れてから俳優業に
手を出すのも選択肢
としてはあるが、

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

当分はまず、
パフォーマンススキル
を身につけなくては
話にならないけどなㅎ

𝐽𝐼𝑁

え?

𝐽𝐼𝑁

えっと…え?

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

どうした?

𝐽𝐼𝑁

え…この事務所って…
何の…事務所ですか…?

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

そりゃ、芸能
プロダクション
だけど。

𝐽𝐼𝑁

えっと…芸能って
言うのは…

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

ヒップホップ
グループだよ。

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

今現時点で
考えられている
コンセプトは、

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

若者に強いメッセージ性
を投げかけるような、
斬新なヒップホップ
グループだ。

𝐽𝐼𝑁

…え?

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

どうした?

𝐽𝐼𝑁

ちょ、ちょっと、
待ってください…っ

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

どうした?

僕はてっきり… 俳優とかの… 事務所だと…え?

ヒップホップグループ って…え?

𝐽𝐼𝑁

あの…
ヒップホップって…

𝐽𝐼𝑁

よう、よう、
おぅ、いえぁ!

𝐽𝐼𝑁

みたいな…ラップとか
そんなやつ…ですよね?

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

まぁ、簡単に言えば
そうだな。

𝐽𝐼𝑁

ちょ…僕っ…

無理ですっ!

そう言おうとした瞬間、 会議室のドアが 急に開いた。

𝑃𝐷

ああ、君か、ジフンが
凄くイケメンな子を
見つけたと興奮してい
たのは。

𝑃𝐷

確か、キム・ソクジン
だよね?

𝐽𝐼𝑁

…っと…はい。

初対面のはず…なのに。

何故か、知っているような 気がする。

とても懐かしくて…

よく知っているような。

何故だろう。

時々感じる、 「デジャヴ」のようなものに 僕は首をかしげる。

𝑃𝐷

私は、パン・シヒョク
だ。ビッヒの創業者で
あり、最高経営責任者
でもある。

𝐽𝐼𝑁

初めましてっ…

𝐽𝐼𝑁

あのっ…

𝑃𝐷

どうした?

𝐽𝐼𝑁

僕…この事務所…っ

𝐽𝐼𝑁

俳優とかそういう芸能
プロダクションだと
思ってて…

𝐽𝐼𝑁

ヒップホップって知って…
僕…ちょっと
ヒップホップは…

𝐽𝐼𝑁

だからやっぱり…

𝑃𝐷

俳優か…

𝐽𝐼𝑁

そうですっ。
俳優志望で…だから
学校とか通ってて…

𝐽𝐼𝑁

なのでやはり所属は…

𝑃𝐷

勿体無い。
綺麗な顔立ちを
しているのに。

𝑃𝐷

それに、ウチに所属
してくれたら、
もしも俳優の依頼が
届いた時には

𝑃𝐷

君に仕事を回すこと
だって可能だが…
本人が遠慮しておく
というのならば
仕方がない…

𝐽𝐼𝑁

っっ…
やっぱりっ…

𝐽𝐼𝑁

よろしくお願いしますっ

𝑃𝐷

そうだね。

シヒョクさん…の声を…

姿を、性格を…

ずっと昔から 知っているような、 不思議な感覚に 駆られた。

𝐽𝐼𝑁

PDニムっ…

っっ…え?

𝑃𝐷

ん?

あれ…?

𝑃𝐷

ジフンから聞いたのか?
私が周りからパンPDと
呼ばれている
ことをㅎㅎㅎ

𝐽𝐼𝐻𝑈𝑁

僕は何も言ってない
ですけどねㅎㅎㅎ

𝐽𝐼𝑁

あっ…すみませんっ…

𝐽𝐼𝑁

あの…
パン・シヒョクさん…

𝑃𝐷

PDでもいいけど。
好きなように呼ぶと
いいよ、

𝐽𝐼𝑁

じゃあ…PD…ニム?

𝐽𝐼𝑁

これから…

𝐽𝐼𝑁

よろしくお願いしますっ

𝑃𝐷

ああ、こちらこそ、
よろしくな、
ソクジナ。

「ソクジナ」

パンさんのその声で 過去にもそう呼ばれた ことがあるような 気がした。

それに…

突然、PDニムって…

口から突然、当たり前のように PDニムという言葉が 出てきて…

驚いた。

初対面のはずの人に、

何故、ここまで親近感… というか、

懐かしさを覚えてしまうのは、 何故だろう。

親しみを覚えてしまうのは、 何故だろう。

訳もわからない、謎の

「デジャヴ感」

僕は、首を捻りながらも、 会議室を後にした。

何か忘れてはいけなかった ことを忘れている気がする。

そんな不思議な感覚と 喪失感をどこかに 感じながら。

淡々と降り積もる記憶の中で。

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