村瀬 蛍
大声を出して病室のドアを開ける
これが日課になってきた
ただ、今日は来るのが遅れてしまった
シーン
村瀬 蛍
蒼くん
いつもは「うるさい」とか
言ってくる蒼くんが今日は少し
寂しそうだ。
村瀬 蛍
そう言いながら蒼くんのベットに
腰掛ける
キシッとベットがきしむ。
村瀬 蛍
蒼くん
俯いていた蒼くんの顔がゆっくり上がり
私の顔をじっと見つめる。
ミーン ミーン
蝉の声がした。
蒼くんはいつもの優しい顔に戻る
蒼くん
村瀬 蛍
蒼くんは窓の外を眺める。
蒼くん
夏だったよね。
村瀬 蛍
蒼くん
変態かと思った。
村瀬 蛍
確かにずっと見てたけどさ、
村瀬 蛍
笑ってたね。
蒼くん
バカだったけど((ボソ
村瀬 蛍
そんな他愛ない会話を交したあと
村瀬 蛍
今が高三になるかな。だから
蒼くん
私が計算していると
蒼くん
蒼くんがズバッと答えを言う
村瀬 蛍
蒼くん
蒼くん
気づいてたんだ
村瀬 蛍
村瀬 蛍
蒼くん
違うんかい!
心の中でツッコミを入れたあと
村瀬 蛍
蒼くんの顔が急に寂しそうになる
蒼くん
蒼くん
村瀬 蛍
何が起こってるのか 分からなかった
ただ、ただ時間が止まったように
私はあまりのことに動けなかった
蝉の声だけが飽和する
村瀬 蛍
やっとのことで出した声は震えていた
村瀬 蛍
蒼くんの顔を見ると蒼くんの目は
真っ直ぐに私を見ていた。
村瀬 蛍
蒼くん
蒼くん
村瀬 蛍
蒼くんの優しい声が
私の涙を誘う。
だめだよ、泣いたら
蒼くんが困っちゃう。
蒼くん
あるんだ。
村瀬 蛍
少し声が裏返る
蒼くんは優しい声で話してくれる
蒼くん
話したでしょ?
村瀬 蛍
コクッ
私は頷くことしかできなかった
蒼くん
村瀬 蛍
蒼くん
村瀬 蛍
ごめん、蒼くん。
何言ってるか分からない。
村瀬 蛍
村瀬 蛍
蒼くん
村瀬 蛍
蒼くん
なんで、サラッと言えちゃうかなー
蒼くん
蒼くんが念を押すように言う。
村瀬 蛍
蒼くん
蒼くんは悲しそうな顔をした。
村瀬 蛍
生きてよ.. 祝ってよ。
蒼くん
蒼くんは また俯く
そして、蒼くんの手の甲に涙が落ちた
村瀬 蛍
もう、ここに居られない
ここに居たら 私も泣いてしまう。
村瀬 蛍
蒼くんに涙は見せられない。
蒼くん
蒼くんはまだ、謝っていた
村瀬 蛍
やめてよ。
謝らないで。
そんなことも言えないまま
何も言わず病室を出た。
家に着いた
村瀬 蛍
そして、伝えるんだ。
「私、歌い手やるよ。」
って。
気づいてたら寝ていたらしく
窓から朝日が刺していた
村瀬 蛍
パンッと頬を叩き気合を入れた
身支度を済ませドアノブに手をかける
村瀬 蛍
私ならできる。
大丈夫、大丈夫
村瀬 蛍
蒼くんのいる病院まで歩いて向かった
大丈夫だ。
村瀬 蛍
勢いよくドアを開けたが
一瞬で私は崩れ落ちた
ー目を開けてー
ー蒼?起きてー
そこにはベットで寝ている蒼くんに
もたれかけるように嘆く女性
村瀬 蛍
女性は 振り返り
こちらを見て 涙を浮かばせる
あぁ、やっぱり蒼くんママだ。
村瀬 蛍
蒼くん、まだ寝てるんですか?
???
医者らしき人に話しかけられ
そちらを見る。
もうこれ以上は言う必要がないと言うように
医者は俯く。
嘘だ。
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
医者
蒼くんママ
ことを話してたの。
村瀬 蛍
聞けば ついさっき
蒼くんは息を引き取ったらしい。
少しずつ歩いて蒼くんに近づく
蒼くんは穏やかな顔をしていた
ただ、眠っているような
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村瀬 蛍
少し震えた声で蒼くんに伝える
村瀬 蛍
まずは、謝る
村瀬 蛍
村瀬 蛍
与えるんだ。
だからね、蒼くん
村瀬 蛍
こころなしか蒼くんが笑ったように見えた
村瀬 蛍
病室を後にして 帰り道を辿る
前より強くなった気がする
蒼くんがいてくれるから
村瀬 蛍
ここは確か赤髪の男性と
ぶつかった場所だったな
村瀬 蛍
村瀬 蛍
蒼くんに貰ったんだよな。 ハンカチ
村瀬 蛍
ポタッ ポタッ
村瀬 蛍
ポタッポタッポタッ
涙が止まらなかった
どうして、あの時ケンカをしてしまったのか
どうして、あの時もっと早く家を出なかったのか
どうして、あの時走っていかなかったのか
どうして、あの時は歩かなかったのか
後悔が止まらなかった。
でも、泣いてても始まらない
村瀬 蛍
目を擦って涙をころす。
村瀬 蛍
村瀬 蛍
天国の蒼くんまで
名前が届くように
村瀬 蛍
私は青くて澄みきってて
綺麗な、まるで蒼くんのような空に
ピースを掲げる。
これは、私が最高の歌い手になるまでの
物語だ。
終わり。
いやー、一段落着きました。
主 うれしい。
叶えてほしいもの。#01の はーとが50を越えました!!
ありがとうございます!
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これからもよろしくお願いします!