宮 兄 弟 の 好 き な コ

もぐもぐと隣で たこ焼きを食べる治くん。

侑くんと来てたはずが、

いつの間にか相手が 片割れにすり変わっている。

なんて少々失礼な 会話をしていると、

一発目の花火が 空に打ち上がった。

花火が上がるたびに 観客の歓声も上がる。

侑くんは私を好きだと 言ってくれた。

それを信じていない わけじゃない。

罪悪感を誤魔化すように レモネードを飲んだ。

治くんに呼ばれて顔を上げる。

冗談やろ、って 言おうとして口を噤む。

治くんの大きな手が 私の頬に添えられた。

私の声は治くんの唇に飲まれ、

小さなリップ音も 花火の音に掻き消される。

ボッと音が鳴りそうなくらい 顔が熱くなる。

ダークグレーの瞳と 見つめ合っていると、

少し遠くに 侑くんが見えて我に返った。

侑くんがこっちに歩いてきて、 治くんの胸ぐらを掴む。

治くんは侑くんの 手を振りほどいてそう言い残すと、

人混みの中に消えていった。