私は、何者にもなれなかった
国内である程度の家柄の嫡男
裕福な暮らしではあった
家は広く、豪華と言えば豪華だった
でも、私には……
それすらも
与えられなかった
父
オシタニア
私はこの頃も出来損ないだった
母
父
父
父
オシタニア
当時、私は29歳
学生服を着用しているが学校は卒業済み
でも私は、家での”正装”として決められている
弟のグッファは他国へ留学中
妹のサクラは国内名門の幼稚園に通園
この”シャルロット家総本山”には
私・父・母
そして屋敷に住み込みで働く使用人がいるだけ
私は国内にある普通の幼稚園に通い留学は許してくれなかった
国内から出ること禁じられており、学校行事の旅行すら許可されなかった
母
母
オシタニア
母は表面上、私の味方だった
父の前では清楚で礼儀正しい
当主を立てつつ、自分も立てる
そんな母
だけど、父が居なくなるとそれは一変する
父
父が部屋を出ていった
バチンッ
オシタニア
母は勢いよく私の頬を叩く
オシタニア
母
母
オシタニア
母は私に大きな期待をしていた
シャルロット家の夫人
だからと言っても、本家とは遠い再従姉妹という関係
父は総本山の次男
本来、父がこの地位に着くなんて有り得なかった
父は当主だったお兄さんの死によって跡を継ぐことになった
お兄さんに奥さんも子供もいなかったからだ
そして、総本山の長老達は父に結婚と跡継ぎを早期に求めた
そこで選ばれたのが、成人したばかりだった母
母
オシタニア
母
ガンッ
か弱い力を拳に込めて私の頭を殴る
オシタニア
母
母
オシタニア
母には当時、交際していた一般男性が居たそうだ
総本山の人間はその事実を知りながら強引に父と母の婚約を進めた
そして……母が私を身篭った年に、その男性は事故で亡くなった
そこから、母は家の規約を忠実に守るようになったそう
母
母
オシタニア
母
母
オシタニア
オシタニア
母
オシタニア
母
オシタニア
まだ私にも言い返せる材料があるだけ十分だった
それだけでも、母や父の期待に応えるチャンスがある
私にはこの家以外の住処なんてない
そして母も、もうこの家から逃げられない
母も愚かだった
シャルロット家という、国内有数の名家の人間である中
何処の馬の骨かも分からない男性に恋をして
束の間だったとしても”夢”を見て
その”夢”を壊されて”自身”も壊れた
オシタニア
オシタニア
オシタニア
オシタニア
オシタニア
オシタニア
母
オシタニア
私は部屋を出る
廃墟となった別邸
総本山を構える森の中で
本邸以外の建物は一度焼けたそうだ
そこで唯一残った建物
シャルロット家総本山 ”廃れた者の別邸”
ここにはシャルロット家にとって不利益を与える人物が入れられる
父も、幼少期はここで過ごしていたそうだ
オシタニア
ここは使用人も派遣されない
全て自分で行い自分で過ごす
別邸ということで部屋数は多い
けど、古びているし焼け焦げているしで、臭いがきつい
オシタニア
オシタニア
『祝福』もない
知能もない
体力及び運動能力もない
持っている【呪い】はグッファに劣る
オシタニア
?
オシタニア
?
オシタニア
オシタニア
オシタニア
奏太
奏太
オシタニア
オシタニア
オシタニア
”奏太” 私が唯一気を許していた青年
彼はごく普通の家系で生まれたが
生まれながらの美貌で今や雑誌に引っ張りだこの有名人
私とは別の意味で天の上の存在だ
奏太
奏太
オシタニア
奏太
奏太
奏太
オシタニア
私は学生服を緩める
薄汚いところに国内のアイドルを座らせるのなんて失礼だが、不法侵入するんだし大丈夫だろう
奏太
奏太
オシタニア
オシタニア
奏太
オシタニア
奏太
オシタニア
奏太
オシタニア
これが……
私が感じた唯一の
幸せだった
奏太はあの日の帰り
街の麓の市場で姿を晦ました
”スカリー・メロディアス、行方不明”
あ、スカリー・メロディアスってのは国内での奏太の名前な?
彼奴は東側の国出身で、こちらの名前と本名とで2つある
そんな奏太が行方不明になったことは大きな記事になった
無論、国内の警察は動く
姿を消す前、私に会っていた事なんて容易にバレた
でも、私は素直に話す
「彼はいつも通りだった」と
私は証人であって、犯罪者ではない
だけどさ、家系はそう思わなかった
嗚呼……私は
この日々が
この不幸が
大嫌いだ!!
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