大学の授業が終わり、バイト先に向かう。
若井
元貴ー!
その途中で、後ろから若井に声を掛けられた。
大森
若井…
正直言って、今一番会いたくない人かもしれない。
若井
昨日、あの後、涼ちゃんに連絡したんだけど返って来ないからやっぱり元貴にお願いしていい?
そんなぼくの心情なんか知りもしない若井はいつもと変わらぬ様子でそう言った。
涼ちゃんと連絡取ってるの秘密にしてた訳じゃないんだ、とか。 好きな人への誕生日プレゼントをなんで人任せにすんだよ、とか。 色々思うところはあったけど、昨日の事を何も知らない若井に、理不尽だとは思うけどすごく腹が立った。
涼ちゃんが今、必要としてるのは、ぼくじゃなくて若井なのに、当の本人は何も知らないなんて…!
大森
涼ちゃん、昨日色々あって…
夜、ずっと泣いてたんだぞ!
夜、ずっと泣いてたんだぞ!
大森
今、涼ちゃんに必要なのは若井なのに!
なんで何も知らないんだよ!
なんで何も知らないんだよ!
若井
え、なに言って…
大森
分かってるよ!こんなのただの八つ当たりだって事!でも…!
感情が抑えられなくなったぼくは、若井に向かって一気に捲し立てる。
急に声を荒らげたぼくに、若井は驚いた顔をしていた。
若井
ごめん、ちょっと待って…
若井
涼ちゃんが泣いてたのは心配だけど、なんでそこにおれが出てくるの?!
若井の言葉に更に苛立つ。 ぼくはもう全部知ってるんだから…! 誤魔化すなよ!
大森
は?だって若井は涼ちゃんの事が好きで、涼ちゃんも若井の事が…
若井
は?!何でそうなんの?!
若井
涼ちゃんは元貴の事が好きなのに…あっ、
若井はしまった!と言う顔で慌てて口を抑えた。
大森
え…
涼ちゃんがぼくの事を…?
聞き間違い、だよね…?
そんな訳…
若井
あー…聞かなかった事に、なんて出来ないよね?
若井
言わないって約束だったんだけどさ…
若井
どこでどうなって、おれと涼ちゃんがってなったのかは分からないけど、涼ちゃんが好きなのは元貴だよ。
大森
うそだ…
若井
嘘じゃないって!
おれ、ずっと涼ちゃんから元貴との事相談されてたんだから。
おれ、ずっと涼ちゃんから元貴との事相談されてたんだから。
若井がぼくの家に来た日、ぼくの事を見る涼ちゃんの目で、涼ちゃんのぼくへの気持ちに気付いた若井は、その日から涼ちゃんの相談相手になったのだと説明してきた。
大森
若井……ごめん。
大森
店長に今日バイト休むって言っといて…!
若井
え、ちょっ!元貴?!
やっと間違いに気付いたぼくは、戸惑う若井を残しバイト先とは別の方向に走り出した。








