それをひっくり返し、少し焦げ目がついた頃合いを見計らって拾い上げる。
中嶋
いや、悪いですね。昼間から焼き肉なんてご馳走になっちゃって。

まさしく、倉科が育て上げ、これからというところだった肉を、中嶋の箸が拾い上げる。
倉科
お前さんには世話になってるからな。わざわざ特別外出までしてもらったんだ。

倉科
これくらいは奢らせろよ。

倉科
――どうにも、あそこの連中ってのは排他的でな。

倉科
お前さんが橋渡しになってくれているおかげで、俺達の立場もなんとかなってるようなもんだ。

普段からアンダープリズンと0.5係の橋渡しをしてくれている中嶋に、ほんのちょっとした礼のつもりでもある。
中嶋
でも、あの2人も世渡りが上手いといいますか、アンダープリズン側にも何名かお友達ができたようで。

中嶋
特に、システム関係のエンジニアとは、俺達でさえ縁がないのに、なんかそこの女の子に懐かれているみたいですよ。

倉科
まぁ、仲良くやってくれるに越したことはないよ。

倉科
あいつらも0.5係としてすでに事件をいくつも解決に導いているし、俺としてはアンダープリズンで肩身の狭い思いはして欲しくないんだ。

中嶋
あの2人に関しては、さっきも話した通りですよ。なんだかんだ坂田とも上手くやってますしね。問題は――やっぱりアンダープリズン職員との溝ですかね。なんだかんだで、彼らは特別視されてましてね。それを快く思っていない方も、実情として数名はいるわけで。

倉科
特にあの楠木とかいう守衛長――あからさまに俺らのこと煙たがってるだろ。

中嶋
わざわざ、こっちが匿名にしておこうとしたところを――。

中嶋
あっ、もう1時ですか。

中嶋
特出の申請、午後1時までで出してあるんですよね。

中嶋
名残惜しいですが、そろそろ行かないと。

倉科
もう1時過ぎてるけど、大丈夫なのか?

中嶋
あー、その辺りは結構緩いので。

中嶋
なんだかかっちりしているところはかっちりしてるくせに、どこか抜けてるといいますか、抜け穴があるのがアンダープリズンですから。

倉科
まぁ、今の話は聞かなかったことにするよ。

倉科
上手く手を抜けるのであれば、それに越したことはないからな。

倉科はそう言うと、クリアファイルを取り出し、書類を差し出す。
倉科
とりあえず、お前から聞き取りをした分を上に提出しなきゃならん。

倉科
ここにサインと、日付、それと時刻を記入してくれ。

倉科
報告は上手いことあげておくし、後で手当もつく。

中嶋
ふふふふっ、特出しておきながら、しっかり手当が出るなんて、なんて手厚いんでしょうねぇ。

中嶋は腕時計で日付と時間を確認すると、まだ報告内容が記入されていない報告書にサインをした。
倉科
ありがとう。やっぱり、0.5係を投入した以上、どうなってるのか知りたがるジジイどもが多くてね。

中嶋
こちらとしては、焼き肉までご馳走になってますから、文句は言えませんよ。

中嶋
それじゃ、俺は戻ります。

中嶋
ご馳走様でした。

中嶋
また、たまには坂田の顔でも見に来てやってくださいよ。

中嶋
事件の時じゃないと顔を出さない――なんて、へそを曲げますから。

倉科
面倒くさい女子みたいだな。

倉科
まぁ、気が向いたらな。

中嶋
えぇ、それじゃ――。

こうして、地下に戻ることになる中嶋の背中を見送る倉科は、まだ知らなかった。
結局、すぐに地下へと潜ることになってしまうとは――。