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カーテンの隙間から漏れる光で朝になった事が分かる。
あの後、結局一睡も出来ずに夜を明かした。
何度も涼ちゃんの部屋のドアをノックしようと思ったけど、本当の想いは言えないのに、それ以外に何を言えばいいか分からなかった。
きっと、もう一度、偏見なんてないと伝えたところで、やっぱり涼ちゃんはぼくが気を使って言ってるだけだと思うだろうから。
ピピピピピピッ
いつも念の為に設定していた携帯のアラーム音が鳴る。 涼ちゃんと暮らし始めて初めて聞いたアラーム音。
いつもはアラームがなる前に涼ちゃんが起こしに来てくれてたから…
ダルい身体を何とか起こしてなんとかリビングに向かう。
いつもと違って、焼き立てのパンやスープの匂いのしない、静かなリビング。
昨日の元恋人の訪問。 どれだけショックだったんだろう… 一緒に住もうって約束してたくらいだもんね… 浮気が原因で別れたとしても、色々と思うところはあるはず。
昨日一瞬見えた涼ちゃんの涙を思い出し胸が痛くなった。
昨日、部屋の前まで行った時、微かにドアの向こうから泣いてる声が聞こえてきた。 本当は直ぐにでもドアを開けて抱きしめたかったけど、それはぼくの役目じゃないから…
コンコン
大森
聞いてくれているかは分からないけど、家を出る前に涼ちゃんの部屋をノックして声を掛けた。
涼ちゃんからは何も反応がなかったけど、 『いってきます』と言って、ぼくは家を出た。