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「しっ、ししし師範!! び、美男すぎますあの男性っ!」
「きゃーーーっ! キュンキュンしてて可愛いわ……!!」
「わーーっ師範ーーっ!! ありがとうございますっ!」
恋柱継子、すれ違っただけの男性にこれである。
それを"可愛い"と形容する恋柱も恋柱だ。
その様子は恋柱様がふたりになったようだと噂される。
そんな継子はあるひとりの人間を見てから全く騒がなくなった。
その人間は才に恵まれ、
鬼を憎む動機すらも忘れてしまったにも関わらず
鍛錬を重ねる不思議な少年であった。
【注意事項】 霞柱オチ 誤字あるかも
周りを眺めながらゆっくりと歩く可憐な少女──奈那。
少女が覚えている"辛い過去"は、赤黒く染まった視界。
そして、酷く生臭く足元に転がる何か。
それがどういう状況か、何であったかは、もう覚えていない。
何故か。それは──
奈那
甘露寺蜜璃
奈那
散歩から帰宅するや否や、
姉に駆け寄る少女を満面の笑みを浮かべて迎え入れる「可愛らしい」という言葉が誰よりも似合う女性
甘露寺蜜璃と過ごした日々のおかげだ。
幸せな記憶があまりにも多いからである。
幼い頃に確かに見たはずの赤黒い景色は実は夢だったのだとすら思える。
物心付く前に起きたあの惨劇の後、少女は何年もの間行く宛てもなく木の実や残飯を食べて暮らしていた。
しかしそんな人生にも転機は訪れるのだ。
齢十にもならぬ頃、蜜璃が痩せ細った奈那を偶然見つけ、迷いもなく引き取りその元で暮らすことになった。
それからの奈那の人生は幸せ以外の何物でもない。
これまで自分を不幸とすら思うことのできなかった壮絶な人生がたったの数年で全て報われるような感覚。
たくさんの幸福を貰うも、奈那は蜜璃のお見合いで素敵な男性が見つかるよう願うことしかできなかった。
蜜璃に、その家族に恩返しをしたいと思っていながら。
奈那が蜜璃と暮らし始め数年。
蜜璃は髪色や筋肉量からか見合い相手に深く傷付けられ、落ち込むことが多かった。
奈那が可愛らしいと褒める髪を黒く染め、家族や奈那が心配になる程食べる量を減らしていた。
奈那は美味しそうにたくさんの桜餅を食べる蜜璃を嬉しそうに眺めた。
見るだけで周囲をも明るくする程に眩しい笑顔を見せる蜜璃が好きだった。
暫くして、結婚したいと言う男性が現れた。
確かに蜜璃にも家族にも優しいが……
正直なところ、奈那は複雑であった。
奈那
何も、知らないのだろう。
奈那
甘露寺蜜璃
奈那
無理やり言ってるように感じる。
それでも蜜璃が結婚すると言うのなら 口出しするつもりはなかった。
しかし破談となったことを知ったとき、少し安心してしまったことを覚えている。
どれ程の時間が経っただろうか。
彼女になんの心境の変化があったかは分からないが、ある日突然家族に告げる。
甘露寺蜜璃
奈那
甘露寺蜜璃
奈那
鬼殺隊……鬼を狩る、命懸けの仕事。
鬼に家族や大切な人を奪われ、鬼を憎むが故に鍛錬を欠かさない人がたくさんいることは容易に推測できる。
奈那は姉も同然の蜜璃に血に塗れるような道を進んでほしくはなかった。
でも、止めることはできない。 奈那には蜜璃に返しきれないほどの恩がある。
そんな蜜璃が目指す道を止めることができる程の勇気はない。
代わりに姉を追いかけようと決めた。
もっとも、年齢や筋肉量の事情で姉と 同期になることは叶わなかったが。