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ようやく、ようやくだ。
13になる頃、奈那は姉の両親から姉と同じ道へ進む許可を得た。
ただ危険な道を歩む姉を追いかけられずに待つ時間は幼い奈那にはかなり長く感じる。
姉は"炎柱"と呼ばれる人の屋敷にいると聞き、すぐに準備を始めた。
最愛の姉を、追いかけなければ。
奈那
私は嬉しさと緊張を胸に、今まで育ててくれたことへの大きな感謝を述べて家を後にした。
蜜璃の元へ辿り着いたのは三日後。
道中何度か甘味休憩を挟んだが無事に再会できた。
見ると、蜜璃に稽古をつけているのは太陽のように明るい髪、立派なつり眉、そして見た者を釘付けにしまうような瞳の男性だった。
それにしても、剣士となり、自身の力を存分に発揮できる蜜璃は前と比べ光り輝いた瞳をしている。
よく見ると努力の証が至る所にあり、昔の蜜璃よりも強くなり、自身の人生への覚悟を感じる。
それでも変わらないのはあの眩しい笑顔だった。
甘露寺蜜璃
キュンキュンしちゃう、と優しい笑みを向ける蜜璃。
本当に何も変わらず元気だ、と奈那は嬉しくなった。
奈那
奈那
久しぶりの再会に心が踊る感覚。
ひとしきり噛み締めた後、 隣に立つどこを見ているか分からない男性に目を向ける。
甘露寺蜜璃
甘露寺蜜璃
甘露寺蜜璃
心の底からの尊敬の念が伝わる。
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
姉をこれでもかと褒める杏寿郎という男。
その言葉に私も嬉しくなる。
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
奈那
甘露寺蜜璃
杏寿郎の圧に押され慌てて自己紹介したものの、 蜜璃との関係で口篭る。
私は姉と呼んでいるが、血の繋がりはない。
しかし杞憂だったようだ。
蜜璃は迷いもなく妹と呼んだ。血の繋がりなどないのに。
私は目に涙を浮かべて喜んでいる。
蜜璃はもう時期、柱となるようだ。
柱とは鬼殺隊の最高位。
自分の事のように誇らしく思う。
そして、柱となる蜜璃は奈那を鬼殺隊にするために 稽古をしてくれると言う。
姉だけでなく、師範にもなってくれる蜜璃に 頬を染めて過剰にも見えるほどに喜んでいた。
こんなに嬉しいことはないとでも言わんばかりに。
程なくして、姉──師範による鍛錬が始まった。
初めは山の麓から山頂までを往復。
やっとの思いで慣れれば次第に往復の回数を増やしたり、 罠を増やしたり……
私は今まで運動という運動をしていないため、無理無理無理、死んでしまう! と、本能が叫んでいた。
しかし蜜璃はこれを息切れひとつなくこなす。
私は自分とは遠い世界にいる姉を見る。
訳が分からない。自分もあんな風になれるのだろうか。
と不安が積もり、焦りを感じる。姉と同じように強くなり、 守って恩返しがたいのに。
疲れすぎた身体は思考を放棄し、気絶するかのように目を閉じた。
奈那
これは私が蜜璃の元で 血反吐を吐くような鍛錬をした時間である。
蜜璃と同じく恋の呼吸を習得し、14になった私はやっとの思いで最終選別と呼ばれる鬼殺隊の入隊試験に参加する許可を得た。
師範の教育は厳しかった。とにかく厳しかった。
奈那
もしかしたら気付いていないだけで何回か死んだかもしれない。
私はふと一年を振り返る。
脱走しようとしたこともあった。
奈那
私は忘れていた。蜜璃は筋肉量が通常の捌倍であることを。
あっけなく捕まり満面の笑みのまま連れ戻される私は思わず言う。
甘露寺蜜璃
奈那
奈那
と。
それでも、それは鬼に殺されてほしくない、怪我をしてほしくないという蜜璃の優しさ故だと分かっている。
だからこそ地獄の鍛錬にも耐えられたのだ。
奈那
甘露寺蜜璃
まだ帰ってくる保証もないのにもう涙を流して鬼殺隊になるのね、と言う蜜璃に笑みが零れる。
奈那
甘露寺蜜璃
必ず帰ると約束して藤襲山へと向かう。
蜜璃は大粒の涙を零しながら大きく手を振り、 見えなくなるまで私を見送ってくれた