短編集

"田中くん"　で

【結局君はさ】

片思いだと思ってた

だから諦めてた

でも.....でも、１回

＿＿

その2文字を声に出すと

もう抑えられなかった

いつも通り6人で集まった撮影を終え

あいつと二人で帰った時

俺たちはカンカンカンと甲高い音を出し赤く点滅する踏切の前に立っていた

そこでふと思った

君にこの気持ちを

言いたい。伝えたい。

俺は、電車が前を通り

大きな音が出た瞬間に

言った。

＿、＿。

俺がその2文字を口にすると、

口元に赤茶色の髪が近付いてきた

白と黒のヘッドセットを少しずらし、

髪を耳にかけ、

俺の言葉を聞き返すように

形の綺麗な耳が目の前にくる。

ドキッとして何も喋らずにいると

彼が俺の耳元で

"なんか言ったー？"

と大声で言い、首を傾げた。

少し顔が火照る。

俺は同じように彼の耳元で

"なんも言ってねーよ！"

とふざけた口調で返した

すると彼はいつも通り

ふにゃっと顔をゆがめ、

声を出して笑う。

その瞬間思う

...やっぱり＿＿だな、

と。

電車が通り過ぎた後、彼が言った

"僕も＿＿だよ"

そして彼は俺に言った

"ずっと一緒だよ"

"明日も明後日も

来年も1億年後もね"

こんなロマンティックな事が

普段頭のワイてる俺らの中で

起きてしまった暁には

幸せにならざるを得ない

...はずだった。

前まではこんなじゃなかった

毎晩通話して

ゲームして

たまに2人で配信して

仲良くしてた

...でも最近はそうじゃない

そもそもまず、

付き合うってなった時だって

俺から一方的だった気がする。

違ったっけ、？

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

ｶﾞﾁｬ

男なのに泣いてるとか。

怖すぎ。

また謝って俺泣いてる。

君との距離を感じてる。

慰めてくれなくなった...よな。

...結局、嫌いになれなくて、

涙で視界がぼやけてる

彼の顔も歪む

...でも、見えた

彼が気まずそうに口角を上げたとこを。

すると突然腕を引っ張られ、

彼の大きな胸の中に吸い寄せられた

あたたかくて

優しくて

綺麗な心がある胸の中

明日も明後日も

来年も1億年後も

ずっと一緒だよ

俺から一方的でも

そうじゃなくても

俺たちは明日も明後日も

来年も1億年後も、

ずっと一緒に居ような？

不安になっても

お互いに不安埋めあって。

結局君はさ

思わせぶりだったり

軽率だったりするけどさ

俺にはお前しかいないんだよ

俺もあげるからさ

お前も沢山ちょうだいよ

不安も混じった、

不安定な愛をさ。