線香花火が落ちる前に

それは突然の連絡だった

夜でも少し蒸し暑くて夏を憎んだ

眩しいスマホの画面越しに高鳴る鼓動

適当にブランコに座って揺らしながら

星が瞬いているのを久しぶりに見た

高校を卒業してからはお互い忙しかった

久しぶりに会えるのが嬉しいのは秘密だ

ブランコの軋む音と

靴と地面の擦れる音だけが響く

いつの間にかまろが

隣のブランコに座ってることに 気が付かなかった

久しぶりに見るその姿は

あの頃と変わってなかった

手持ち花火を2人とも手に持って

同時に火をつけた

最後に袋に残ったのは線香花火だ

それを取り出して2人でしゃがみ込む

じぃ…と音をたてて火の玉が揺れる

その光は2人だけを淡く照らした

俺は線香花火を持ったまま

横のまろの様子をじっと見つめていた

あたたかい光に照らされるまつげ

高くて通った鼻

いつもより真剣な目元

楽しそうに緩む口元

そんなまろがとても綺麗だった

ついに視線を感じたのか

まろとバチッと目が合った

思わずごまかしちゃったけど

まろの耳が赤くなってるの ちゃんと見えた

そんな次の瞬間

俺の火の玉がぽとり、と落ちた