テラーノベル
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七百年前、
母親を腹から喰らい殺し、その魔族は生まれた。
父親は彼を天才だと思った。
強者がすべてという、絶対の法則――
彼はまるで、生まれながらにそれを理解しているようだった。
翌日、腹の空いた彼は、その父親を殺した。
彼は飢えていた。
多くの魔族が、その赤子へ挑んだ。
似た境遇の者から、五百年生きてきた魔族まで。
百を超える群れを殺ったこともあった。
十数年の経ったある日。
彼は、奇妙な魔族と出会った。
名をミルフィーユ。
完全な人型の容姿で、人間のように笑う魔族だ。
気味が悪かった。
彼の繰り出した、すべての攻撃が剣に弾かれる。
そして次の瞬間には、ミルフィーユは彼の背後に立っていた。
それは彼にとって、生まれて初めての敗北だった。
ミルフィーユは剣を止め、話し始める。
食欲で弱者を喰らうたびに考えていた。
真の強さとはなにかと。
しかし、この奇妙な魔族との出会いを経て、
彼の中の大きなものが壊れた。
思えば初めてのことだった、
己よりも強く――殺意を持たない魔族と出会ったことは。
真の強さとはなにか。
その答えは、すぐそこにあった。
強さとは飢えること。
生きるとは抗うこと。
欲に飢えながら、欲に抗う。
本能と理性の中庸。
それが彼にとっての"武"だった。
上空に一つ、点が生まれた。
ビー玉より小さな黒い点。
それが落ち、剣に宿った。
アップルパイ
サヴァラン
闇となる刹那。
重力を持った魔力は一点に圧縮され、空間をつらぬいた。
この斬撃は万物を喰らう――
不可避の絶対切断。
空間を削り取り、光の存在すら許さない。
ゆえに、その軌跡は闇をなす。
アップルパイ
見事、サヴァランを真っ二つに断した。
アップルパイ
アップルパイ
アップルパイ
サヴァラン
サヴァラン
ブラウニー
サヴァランを横に斬り裂く一撃。
振り返るも、既にそこにブラウニーはいない。
光が煌めく。
『ザクッッッ』
またもや一撃。
サヴァラン
人間は通常、全力の半分の力も出すことができない。
全力で筋肉の収縮を行うと、ほぼ確実に自身の骨や健を破壊することになる。
脳がリミッターをかけているのだ。
しかし、既に彼らは死を覚悟した身。
この絶技が最期。
躊躇う理由がどこにあるか。
電流がブラウニーの筋肉を刺激、リミッターが壊れる。
ブラウニー
ブラウニー
速く!
もっともーっと速く!!
速度だけを目的とした、連撃がサヴァランを襲う。
時に、規格外の速度は、質量の暴力を超える。
そして、速度は何百何千と繰り返される。
『迅雷轟々』
この絶技は音速を超え――光速に並ぶ、
雷そのものとなる連撃。
サヴァラン
サヴァラン
サヴァラン
サヴァラン
全力の代償。全身が内部から破損を起こす。
速度を殺せず、ブラウニーは無気力に転がり果てる。
ブラウニー
魔力の結晶、六花はしんしんと降る。
サヴァランの肉塊の一つに触れると、その魔力はそれを氷結に閉じ込めた。
一つ、二つ、三つ、四つ……。
アップルパイに大きく、
ブラウニーに何千と斬り刻まれ、
その数だけ散り散りとなった、サヴァランを終わらせる技。
オペラ
氷塊は塔を成した。
オペラ
ブラウニー
アップルパイ
氷塊にヒビが奔り、崩壊を始める。
その中心にあるのは、完全に再生したサヴァラン。
サヴァラン
サヴァラン
オペラへ飛んだ攻撃、アップルパイが防いだ。
アップルパイ
溢れる魔力、闘気。
魔力制御が安定しないなら、不安定で構わない。
全魔力を使い果たそうとも、
二人を死守する。
アップルパイ
アップルパイ
オペラ
オペラは一瞬ためらうも、倒れるブラウニーを見て戦慄する。
片腕を失った自分以上の重傷。
全身のいたるところから血を流し、おそらくは内臓も傷ついている。
歩くことすらままならない、戦闘不能。
ブラウニー
ブラウニーは微笑む。
ブラウニー
ブラウニー
『ギュルギュルギュルギュル』
カエルの鎮魂歌、再び響く。
しかし、これまでとは違う。
腕だけではない、頭から肩、胴体に至るまでの上半身が裂けた。
まさに他の生物とは違う、魔力の塊だからこその芸当。
何十に増えた攻撃。これまでとは話が違う。
束となり、突き刺しにいった一撃。
それはアップルパイまで届かなかった。
先端が斬られている。
気づけばそこに、彼がいた。
サヴァラン
サヴァラン
彼は天を見上げている。
クロッフル
クロッフル
クロッフル
魔力が開放された。
白銀の魔力――クロッフルのものだ。
その魔力量、圧倒的。
放出されたそれは、あたりを飲み込む円柱となり、天を穿いた。
アップルパイ
オペラ
クロッフル
クロッフル
サヴァラン
サヴァラン
クロッフルの姿が重なる。
かつての魔王――ミルフィーユと。
サヴァラン
魔力が開放される。
紅の魔力。
魔王軍四天王――序列四位、サヴァランのものだ。
その魔力量、圧倒的。
サヴァラン
クロッフル
声が重なった。
サヴァラン
クロッフル
もう一度、重なった。
サヴァラン
クロッフル
コメント
3件
マインドが強すぎる主人公大好きおじさん見参。