数年前
常子
……やっぱりこんな姿だったんじゃね
わしはどうやら死んだらしい
町に流れ込んだ濁流に呑み込まれたらしい
確か突然冷たさが伝わって、それからすぐに目の前は真っ暗になった
息ができなくて苦しんでいたらいつの間にか苦しさがなくなった
きっと、それが死んだ合図だったのだろう
常子
最強なはずのわしでも、、やっぱり勝てなかったのじゃな
ちなみに今は、荒れてしまった、わしの家を見にきた
常子
これは小学生の時の図工で作った貯金箱じゃな
常子
これはタンスに6年間くらい入れていた防虫剤…じゃよね、多分
常子
食いかけの物とか散乱しちゃってるのじゃ…処理が大変そうなのじゃ
常子
タンスとか色々もう使えないのじゃ
パリン
足元から何かが割れたような音がした
常子
……ん?これは
常子
家族写真…
フレームは割れ、写真は汚れ、今にも破れそうだった
わしと親の間に切れ目が入っていた
常子
離れたくないのじゃ、、
常子
まだ生きたいのじゃ
常子
わしはまだまだ将来があったはずなのじゃ
トントン
誰かに肩を叩かれた
本当に生きていたいのですか?
常子
え?
貴方は本当にまだ生きたかったのですか?
常子
え、そりゃあ生きたいに決まってるのじゃ
本当に?
常子
本当なのじゃ、、
本当に?
常子
本当なのじゃ
本当?
常子
本当なのじゃ!
本当の本当に?
常子
だから
常子
本当なのじゃ!!!
嘘つき
常子
だ、だから、、本当なのじゃ
常子
まだまだ生きたかったのじゃ!
生きている時にあれだけ死を望んだのに?
常子
……
いざ死ねば後悔?
なんて自分勝手なのでしょう
常子
いや、あれとこれでは違うのじゃ
何が違うのですか?同じ死じゃないですか
常子
違うのじゃ!
ほらまた自分を正当化するために言い訳してる
常子
言い訳なんかじゃない!
……まあ、もう全て遅いから意味ないですよ、こんなことしたって
一度死んだら簡単には生き返れませんよ
常子
それは知ってるのじゃ、、
今からしばらくあなたは浮遊霊となって、この町をさ迷うのですよ
それがあなたの運命です
受け入れてください
わしは抵抗も説明もできずに、ただただ泣きながら荒れた部屋を見つめていた