鏡が映らないもの

リナは大きな窓から差し込む朝日を受けながら、スマホの画面を眺めていた。

彼女は人気インフルエンサーで、フォロワー数が300万人を超える存在。

毎日の投稿が注目され、スポンサー契約やテレビ出演が絶えず、SNS界のスターだった。

リナは手慣れた様子でスマホを手に取り、カメラを起動した。

少しだけ化粧を直してから、軽く笑顔を作る

動画のコメント欄

しかし、ひとつだけ、他のコメントとは違うコメントが、 目に留まる。

リナは小さく呟くと、スマホを強く握りしめた

自室の鏡の前に立ち、普段なら誇らしげな笑顔を作る

心の奥であの記憶が顔を出し続けるのを感じながらも、 必死にその感情を押し返した。

お昼になりリナは、 マネージャーのユウジとカフェで会っていた。

ユウジはいつものように、 彼女の最新投稿に目を輝かせている。

リナは微笑みながらも、どこか心ここにあらずの様子で、 スマホの画面をちらりと確認する

リナは微笑みながらも、どこか心ここにあらずの様子で、スマホの画面をちらりと確認する

ユウジは心配そうに顔を曇らせる

リナはその言葉に安心したように頷いた。

しかし、心の中であのコメントが意味するもの――鏡に映る「本当の姿」――が頭から離れなかった。

リナはランチを終え、自宅に戻った。

玄関を入って、彼女はリビングの大きな鏡の前に立って、 もう一度自分の姿を見つめている。

その時、スマホに新たな通知が届く。

リナはその言葉に、体の芯から冷たいものを感じた。

彼女の完璧な笑顔の裏に、確かに隠された何かがある。

その問いかけに、答えはまだ闇の中に消えたままだった。