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星月ルア
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ゆでたまご
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あゆまる⟡.·
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数日ぶりにちゃんと顔を見られたこと。 言葉を返してもらえたこと。 「変な人」と、少しだけ柔らかい声で言われたこと。
それだけで、ひろの胸の奥に張りついていた不安は少しだけほどけていた。
もちろん、昨日見たものが消えたわけじゃない。
うりが何も抱えていないなんて、そんなふうに思えるほど単純でもない。
それでも、少なくとも今この瞬間、ここにいるうりは少しだけ穏やかに見えた。
ur
小さく落ちた声に、ひろは我に返る。
hr
もっと話したい、なんて言えるはずもなくて、ひろはパンの袋を握りしめたまま頷いた。
うりは立ち上がって、鞄を肩にかける。
少し長めの茶髪が、動きに合わせて首元でやわらかく揺れた。
無造作なウルフの襟足が、制服の襟にかかる。
その何気ない後ろ姿に、ひろはまた一瞬だけ目を奪われる。
ur
hr
そう返すと、うりは少しだけ振り返って、小さく頷いた。
その仕草が思った以上に嬉しくて、ひろは自分でも笑ってしまいそうになる。
教室の扉が閉まったあとも、ひろはしばらくひとりでその場に座っていた。
今のやり取りだけで、少し浮かれている自分がいる。
単純だな、と苦笑しながら、ひろも遅れて席を立った。
そろそろ自分も戻らないと、五時間目に間に合わない。
ひろは軽く伸びをして、空き教室をあとにする。
特別棟から本校舎へ戻る渡り廊下は、昼休みの終わり特有のざわめきで少しだけ騒がしかった。
笑いながら走っていく生徒たち。 急ぎ足の足音。 どこかの教室から漏れる話し声。
そんな中を歩きながら、ひろはなんとなく、さっきのうりの背中を思い出していた。
少し長めの茶髪。 首元で揺れる襟足。 静かに伏せられた目。
hr
そんなことを考えながら角を曲がった、そのときだった。
二年の教室が並ぶ廊下の先で、ひときわ大きな笑い声が上がる。
ひろは反射的にそちらへ視線を向けた。
ちょうど、うりのクラスの前だった。
何人かの男子が教室の入り口付近に集まっていて、その輪の向こうに、見覚えのある茶色がかった髪が見えた。
――うり。
細い肩が、わずかに強張って見えた。
ひろの足が止まる。
佐藤(モブ
多々(モブ
多々(モブ
笑い混じりの声が、軽い調子で飛んでくる。
冗談みたいな言い方なのに、そこに混じる空気は全然軽くない。
うりは何も言わない。
ただ視線を落としたまま、教室に入ろうとしているだけなのに、進路を塞ぐみたいに誰かが半歩前に出る。
剛田(モブ
短く重なる声に、ひろの胸の奥がざわついた。
なんだよ、それ。
たしかに言葉だけ聞けば、よくあるじゃれ合いみたいにも見えるかもしれない。
でも、違った。
そこにあるのは、対等な空気じゃない。
うりが何か返せば面白がって、返さなくても笑う。
そんな逃げ場のない感じが、廊下の端にいるひろにまで伝わってくる。
そのとき、不意に誰かの手がうりの肩に触れた。
軽く押した、というほどでもない。
けれど、うりの身体は小さく揺れて、鞄が腕からずれ落ちそうになる。
hr
ひろの喉が熱くなる。
うりは慌てたように鞄を抱え直して、それでも何も言わないまま俯いていた。
表情がよく見えない。
けれど、見えない方が余計に苦しかった。
なんで、そんな顔で黙ってるんだよ。
なんで、誰も止めないんだよ。
その場にいるクラスメイトたちは、見て見ぬふりをしているか、あるいは面倒そうに目を逸らしているだけだった。
誰かが助ける気配なんて、どこにもない。
その光景が、ひろにはひどく異質に見えた。
でも、たぶんここでは、これが“いつものこと”なんだ。
そう思った瞬間、背筋が冷たくなる。
hr
気づけば、ひろは一歩前に出ていた。
でもその瞬間、予鈴が鳴る。
鋭いチャイムが廊下に響いて、集まっていた生徒たちが一斉に顔をしかめた。
剛田(モブ
佐藤(モブ
空気が一気にほどけて、さっきまでうりを囲んでいた男子たちが、何事もなかったみたいに教室の中へ散っていく。
その流れに押されるみたいに、うりも俯いたまま教室へ入っていった。
ひろは廊下の途中で立ち尽くしたまま、その背中を見送ることしかできなかった。
あと少し遅かったら。
いや、あと少し早ければ。
何か言えたんだろうか。
何か、できたんだろうか。
さっきまで、少しだけ近づけた気がしていたのに。
うりが抱えているものは、自分が思っていたよりずっと根深くて、ずっと近くにあったのかもしれない。
それなのに、ひろは何も知らないまま笑っていた。
hr
吐き出した声は、自分でも驚くくらい低かった。
ただの気のせいじゃない。
ただの人付き合いの不器用さなんかじゃない。
昨日見たもの。 数日休んでいたこと。 そして今の、あの空気。
全部が一本の線みたいに繋がって、ひろの中で嫌な確信に変わっていく。
胸の奥が、じわじわと熱くなる
怒りに似ているのに、たぶんそれだけじゃない。
悔しさとか、やるせなさとか、いろんなものがぐちゃぐちゃに混ざって、うまく息ができなかった。
うりの少し長めの茶髪が、教室へ消える直前にほんの少しだけ揺れたのを、ひろはまだ目に焼きついたまま忘れられなかった。
六時間目が終わってから、ひろはほとんど走るみたいに校舎を回っていた。
二年の教室にはいない。 昇降口にもいない。 中庭にも、自販機の前にも見当たらない。
どこに行った。
その焦りだけが、ずっと足を急かしてくる。
昼休みに見たものが頭から離れなかった。 教室の前に集まっていた連中の顔も、向けられていた笑い声も、全部まだ耳の奥に残っている。
嫌な予感しかしなかった。
そして、その予感は外れなかった。
部室棟へ抜ける細い通路の先で、複数の声が重なっているのが聞こえた瞬間、ひろは足を止めた。
笑い声。 ふざけた口調。 誰かを囲んでいる、あの嫌な空気。
背筋が冷える。
通路を抜けた先、壁際に追い詰められていたのは、やっぱりうりだった。
少し長めの茶髪が乱れて頬に張りついている。 無造作なウルフの毛先が首元に散って、その細い輪郭がやけにむき出しに見えた。
周りには何人もいる。
ひとりが逃げ道を塞ぐみたいに壁へ手をつき、 別のやつがうりの肩を軽く押して、背中をそのまま壁に触れさせていた。
多々(モブ
佐藤(モブ
佐藤(モブ
笑いながら、前にいた男子がうりの顎に手をかける。
うりはとっさに顔を背けた。 けれど避けきれず、その指先が頬から首筋へすべる。
ur
かすれた声が漏れる。
その瞬間、空気が変わった。
剛田(モブ
多々(モブ
佐藤(モブ
さっきまでの軽い笑い方じゃなかった。
ひろはそこで初めて気づいた。 こいつら、もう止まる気がない。
ひとりが、うりのシャツの裾に指をかけた。
ほんの軽い動きだった。 ただ布をつまんだだけみたいな、あまりにも簡単な仕草。
それなのに、うりの顔色が一瞬で変わった。
肩がびくっと跳ねて、 呼吸が止まるみたいに浅くなる。
ur
その声は、ひどく小さかった。
小さすぎて、 拒絶として扱われるにはあまりにも頼りなかった。
だからこそ、最悪だった。
多々(モブ
佐藤(モブ
笑いながら、前にいた男子がうりの顎をもう一度つかむ。
今度はさっきより強く、 逃がさないみたいに。
うりがはっとして顔を背けようとする。 けれど横から肩を押さえられて、うまく動けない。
佐藤(モブ
剛田(モブ
剛田(モブ
違う、って言いたいはずなのに、 うりの喉はひゅっと小さく鳴るだけだった。
顎を掴んでいたやつが、 おもしろがるみたいに少しだけ顔を近づける。
佐藤(モブ
佐藤(モブ
ur
まさか、と思うより先に、 ひろの背筋を悪寒が駆け上がる。
多々(モブ
周りの誰かが、半分笑いながらそんなことを言った。
止める声じゃなかった。 面白がって、次を待ってる声だった。
うりの目が見開かれる。
逃げようとして、けれど逃げ場がなくて、 細い喉がひとつ、ひくっと震えた。
ur
かすれた拒絶が落ちた、その次の瞬間だった。
ほんの一瞬。 押しつけるみたいに、無理やり触れた。
うりの身体が、びく、と大きく跳ねる。
頭の中が真っ白になる。
――間に合わなかった。
その認識だけで、ひろの理性は完全に切れた。
hr
怒鳴り声が、通路を叩き割る。
振り向くより先に、ひろはもう踏み込んでいた。
うりの前にいた男の胸ぐらを掴んで、 そのまま壁へ叩きつける。
鈍い音が響いた。
佐藤(モブ
相手が息を詰まらせる。
けれど、そんなことどうでもよかった。
ひろの視界には、もうそいつしか映っていなかった。
hr
声が低すぎて、自分のものじゃないみたいだった。
hr
掴んだ襟元をさらに強く引き上げる。
相手の足が半分浮く。
周りのやつらがようやく空気の違いに気づいて、 「ちょ、やば……」とか何とか言っていた気がする。
でも、聞こえない。
頭の中では、さっきの一瞬だけが何度も焼きついていた。
逃げられなかったうり。 固まった顔。 間に合わなかった、自分。
遅かった。 遅かった。 遅かった。
ur
かすれた声が背後から落ちる。
その一言で、ようやく世界に音が戻った。
ひろは息を呑んで振り返る。
壁際で、うりが立っていた。
乱れた髪。 ずれたネクタイ。 浅い呼吸。 血の気の引いた顔。
そして、唇を押さえるみたいに、自分の口元へ指先をあてていた。
その仕草を見た瞬間、 ひろの中で何かがさらに深く壊れた。
hr
声が震える。
怒りでなのか、 殺したいほど後悔してるせいなのか、自分でもわからなかった。
hr
低く落ちたその一言に、 さっきまで笑っていた連中が一斉に顔を強張らせる。
hr
そこまで言って、ひろは言葉を切った。
このまま口を開けば、 本気で取り返しのつかないことを言う気がした。
だから、代わりにうりのほうへ向き直る。
でも、すぐには触れなかった。
さっき見たものが頭から離れなくて、 どこにどう触れればいいのか、一瞬わからなくなった。
hr
名前を呼ぶ声が、ひどく掠れる。
うりの睫毛が、かすかに揺れた。
次の瞬間、張り詰めていた糸が切れたみたいに、 うりの膝がわずかに崩れる。
ひろは反射みたいにその身体を受け止めた。
腕の中に収まった身体は、信じられないくらい冷たくて、 細くて、軽かった。
その軽さが、余計にひろを狂わせる。
hr
思わず零れた声は、 自分でも驚くくらい掠れていた。
hr
ひろは目の前で俯くうりを見て、胸の奥がぎゅっと痛んだ。 誰にも見せたくない表情、かすかに震える手首……。
ur
うりが小さく息を漏らす。 その声に、ひろは胸が締めつけられるのを感じた。 どうしても、何かしてあげたい。
手を伸ばす。ほんの少しだけ、唇に触れる。 驚くうりの顔。固まった唇。 でも、ほんの一瞬でわかる。違和感が、ふっと消えたことを。
ひろは息を殺して、そっと手を引く。 うりはまだ目を逸らしたままだけど、肩の力が少しだけ抜けているのがわかる。
ur
やっと呟かれた声に、ひろは胸が熱くなる。 それ以上は何も言わず、ただ隣で静かに見守る。 それだけで、うりの心が少しでも軽くなったなら、それで十分だった。
しばらくの沈黙。 教室にはふたりだけの時間が流れる。 夕陽が窓から差し込み、二人をやわらかく包んでいた。
ur
小さく零れるその声に、ひろは思わず笑う。 言葉じゃなくても、心で伝わった瞬間。 あの日の夕方から、少しだけ二人の距離は近づいたような気がした。
hr
ひろの声は、できるだけ静かに、優しく。
うりはしばらく黙っていた。 でも、やがて小さく首を振る。
ur
唇の端がほんの少しだけ上がった。 ひろはそのささやかな笑顔に、胸がぎゅっとなる。
hr
ひろも小さく笑い返す。
言葉は少ないけれど、互いの距離は少しずつ縮まっていく気がした。
ur
うりがやっと顔を上げて、少しだけ不安そうに尋ねる。
hr
嘘じゃない。正直な気持ち。 言葉にすると、少しだけ恥ずかしかったけれど、伝えずにはいられなかった。
うりはしばらく沈黙していたけれど、やがて少し笑う。
ur
昨日とは少し違う、柔らかい響き。
ひろはその声に、心の底からほっとする。
hr
でも、そう言いながらも、ひろの心は軽かった。
うりが少しでも安心してくれたなら、それだけで十分だった。
230タップお疲れ様でした!! あと今更なんですけど、多々って、 2人いたと思うんですけど、普通にミスってましたごめんなさい🙇 クラスに絶対いる、苗字被った人と、思ってくれれば嬉しいです! 見てくれてる人ありがと〜! キス表現が始めてすぎて、なんか変になってるかも.. next→♡200