テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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銃口の先のエンディング

第41話 - 愛情の欠片

300

2024年07月22日

#一次創作

#ファンタジー

#冒険

#殺し屋

#人間関係

#日常

四阿朧

サミュエル

待って、そんなの、今いいから

サミュエル

そんなことより止血して────っ

オーウェンはおろおろと怯えるサミュエルの尻尾を掴む

サミュエル

っなに────

オーウェン

…もう、いい。

サミュエル

…っは、ぁ…？

サミュエルの瞳からはぼろぼろと、涙がとどめなく溢れている

オーウェン

分かっているのだろう？

オーウェン

この出血量ではもう───…。

サミュエル

うるさい！！！！

サミュエル

なんでそんなことを言うの！！！

オーウェン

…っはは、なあ、サミュエル

サミュエル

…なん、ですか

オーウェン

話そう

サミュエル

…へ？

オーウェン

俺とお前は…もうずっと、本音で話せてないんじゃないか？

サミュエル

…………え？

オーウェン

忙しくてずっと相手をできてなかった

オーウェン

そのことは最近気づいたばかりで

オーウェン

お前が寂しそうにしていることも、喫茶の店員に聞かねば知れなかったんだ

サミュエル

そんなのいいんだ！！

オーウェン

…俺は、人付き合いが得意じゃない。

サミュエル

待って、お願い───

オーウェン

…聞いて、くれ

サミュエル

っ！

オーウェン

…きっと、俺は親には向かない

オーウェン

たくさん不安を与えてしまう

サミュエル

っ、そんなこと、ない、です

オーウェン

常に生と死のすれすれで生き…一方違えば死ぬところにいる人間だ

オーウェン

それでも俺はただお前みたいな境遇にある子たちを幸せにしてやりたい

オーウェン

俺のそういう気持ちを灯してくれたのはお前なのに

オーウェン

目的ばかりに囚われて、いい子で待ってるお前に目を、向けてやれなくて…

オーウェンはサミュエルを涙を拭おうと、手を伸ばす

しかしその手は空を切る

サミュエル

…っ違う

サミュエル

おれは貴方と…オーウェンさんといれて、幸せなんです

サミュエル

貴方の不器用さなんておれが1番知ってる！！

オーウェン

ああ…そうだな

オーウェン

お前は賢い

オーウェン

…その頭脳があればたくさんの子を救える

サミュエル

…そうだよ、だからオーウェンさんが────

オーウェン

俺がいなくたって

オーウェン

お前はもう、生きていけるよ。

サミュエル

無理だ！！！

オーウェン

サミュエル

オーウェン

お前とずっと一緒にいたかった

オーウェン

お前の成長をもっと、側で見てたかった

オーウェン

…サミュエルが…大切、…だ

つぅ、と一筋の涙が、オーウェンの頬をつたった

それは普段感情を表に出さないオーウェンが人に見せた、最初で最後の涙だった。

サミュエル

オーウェンさん！！！！

サミュエル

オーウェンさん！！！オーウェンさん！！！！！

どのくらい名前を叫んだろうか。

サミュエル

なんでぇ…っ！

サミュエル

…っばかぁ…

瞳が、血の匂いが、生気を帯びているそれではなくなってきたことに

サミュエルは1番敏感に、気が付いてしまった。

サミュエル

なんでメラが…泣くの

メラ

別に…っでも、でもぉ！

メラ

なんかそんなの…悲しすぎるよ

メラ

2人は、大事だったんでしょっ…？お互いが…！

サミュエル

…そうだね、きっと、そう思ってくれてたよ

サミュエル

（あのとき俺はオーウェンさんのご飯を待っていたままで、お腹は空いてたのに）

サミュエル

（…その死体だけは、喰べられなかった。）

実はこの話には続きがある

死の間際、オーウェンの動かしていない片方の手に握られていたのは

サミュエルと久々に出かけようと持っていた、列車の整理券。

その日のオーウェンは仕事に行ったわけではなかったのだ

ただサミュエルのために、黙って用意していたその整理券は

思い出になるはずだったその日を迎えられず、使われないまま散っていく

必死なサミュエルがそれを知ることはなかった。

しかしオーウェンが遺した様々な愛の欠片は、それにとどまらず

そのうちのいくつかは、サミュエルに届いている。

サミュエル

（…本当に本当に、不器用な、人だったんだ）

サミュエル

（…俺はそのことを）

サミュエル

（見えていたようで、見えてなかった。）

今度は、オーウェンの想いを背負って、サミュエルが、仲間に。

自分のできなかったことを…満たしていくように、けしかける。

サミュエル

（メラが持つアメリアへの気持ちは）

サミュエル

（形は違えど、きっと俺がオーウェンさんに感じた気持ちと近しい）

メラ

…ねえ、聞いてもいい？

サミュエル

ん？

メラ

…サミュエルは

メラ

自分の気持ちを伝えられてたらって…考える？

サミュエル

…うん、考えるよ

サミュエル

今思い出して幸せなその思い出は

サミュエル

…過去必死で、幸せだと気づききれなかったものだから。

サミュエル

もし、俺の気持ちを否定されていても

サミュエル

…自分の気持ちくらい、まっすぐ伝えてたらよかったって…思うよ。

メラ

…そっか

メラ

メラに…できると思う？

サミュエル

できるよ。

サミュエル

だって2人だって…お互いのこと、大好きだもん。

メラ

…そう、見えるなら、よかった

メラ

…うん

メラ

決めた！

サミュエル

お、なになに

メラ

頑張ってみるよ、メラ

サミュエル

うん、それがいいよ

メラ

そんでアメリア様に…

メラ

言えてなかったメラのこと、全部話す。

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オーウェンさんにとってサミュエルくんは大切な存在だった……けど、自分は「親」には向いてないっていうのが切ない……😭😭 オーウェンさんの死を活かして仲間であるメラさんに手を差し伸べるサミュエルくんの優しさがよく伝わってきたし、サミュエルくんの話を聞いて頑張ることを決めたメラさんの姿がかっこいいと思った💭 「全部」……それがアメリアさんにちゃんと伝わるといいな……頑張れ、メラさん！！！

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