温かな音色は今も昔も

ｼﾞｼﾞｯ

音を立ててインカムをつける

スマイルのスルースキルで俺らのボケはなかったことになった

俺らは予め総統や幹部の情報については目を通していた

だが、きんときなんて名前であんな見た目をした幹部はいなかった

こっちが聞きたい、そんなツッコミを抑える

マイクが主食ということは本人が言っていた

それもまた意味がわからない

スマイルはなにかを思い出したらしい

甘党のnakamuらしい伝言だ

というか俺らが旅行してるみたいな言い方をしないでほしい

一応敵国なんだから…

その言葉を最後にインカムは切られた

俺たちはバレないように、敵国城へと戻った

何年もこの城にいたのに知らない階段

俺は気になって降りてみる

足が地面に着くとドアを発見した

何年も放って置かれた場所なのだろう

何年も…何年も…

どこからか声が響く

優しい声、悲しそうな声が

周りを見るが誰もいない

ごめんな…

博士は悪くないよ

寧ろ寂しくないから嬉しい

私が助けるべきなのに

痛い…痛いよｯ……！

泣かないでおくれ…

頭を抱え座り込む

お前の幸せを祈る

博士！博士ｯ…！

フラッシュバック

苦しい記憶が頭に流れ込む

上手く呼吸ができない

視界が涙で歪んでいる

どうして今まで忘れていたのだろう

優しい、俺の生きがいの人だったのに

たった一人だけ、俺を人間として扱ってくれた人なのに

俺はこの国の道具だ

実験器具だ

人権なんてなかった

ただの便利な道具

そんな国に命を尽くした

生きていたのは全て無駄だった

でも

この国の兵士は好き

努力して諦めない姿勢

とても輝いて見える

博士は言っていた

「お前の幸せを祈る」と

俺の幸せは─────

もうどこにもない

この体は簡単に死なない

この国で生きるしかない

俺の人生を殺したこの国の総統を殺せることができたら

どれだけ楽になれただろう

洗脳されて総統には逆らえない

抗うことすら無理なのだ