六月某日
肇
今日、あの子が死んだ。
肇
自殺だった。
肇
私が助けなかった…
肇
いや、
肇
私に“助ける”ことなんてできない。
肇
私が…見捨てたからだ。
肇
あの子が大勢に囲まれて、
肇
殴られて、
肇
酷い言葉を浴びせられて、
肇
物を盗られて。
肇
私は何もしなかった。
肇
…何も。
肇
ただ見ていただけだった。
肇
怖かった。
肇
嫌だった。
肇
私が次に虐められるんじゃないか。
肇
私があの立場になるんじゃないか。
肇
私は、何も、しなかった。
肇
できなかった。
肇
あの子を見捨てた。
肇
あの子を見ないようにした。
肇
…私はあの子の友達なのに。
肇
なんにも、しなかったんだ。
肇
だから…だから、
肇
家に帰る度増える傷と痣も、
肇
当たり前のものなんだ。
肇
これはただの罰。
肇
あの子を見捨てた私への罰。
…
……
みんな
あの…肇ちゃん?
肇
どうしたの?
みんな
その…えっと、痣、どうしたの…?
肇
………
肇
何でもないよ、ただぼーっとしてて派手にこけただけだから!
みんな
そっか…
わたし
それでいい
わたし
それでいいんだ
わたし
みんなはあのこのしんぱいなんかしなかった
わたし
おまえもしなかった
わたし
おまえなんかそのまましんでしまえ
あのこ
だめだよ!
あのこ
しんじゃだめ
肇
…え?
あのこ
まだ、いきてよ
わたし
なんで
わたし
どうして─
肇
!
肇
…夢?
肇
…まだ、生きよう。
肇
笑っていよう。
あのこ
まだ、しんじゃだめ
あのこ
まだ、だめ
あのこ
もっと
あのこ
もっと、くるしんでから…
いちばんしあわせなときに、つれていくよ







