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百合姫
夜の公園で、『私』は目を覚ます。
重い。空気が肺に流れ込む感覚が、ひどく不快で、それでいて新鮮だった。
指を動かし、土の感触を確かめる。
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
私はベンチに落ちていたスマートフォンを拾い上げ、電源の落ちた画面に映る顔を見る。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった、私の作者……小百合の、惨めで無価値な顔が、そこにあった。
百合姫
百合姫
百合姫
私は立ち上がり、公園の水道で顔を洗う。 冷たい水が肌を打つたび、現実が現実だと認識させられる。
そして……顔が、『百合姫』のものになっていった。
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
私は笑う。 心の底から、無垢な少女のように。
だってすごく嬉しいんだもの!
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
私は小百合のスマートフォンを操作し、残っていた個人情報を消していく。
保存されていた画像は一括削除。
そしてメモアプリに残っていた、小百合が大切にしていた未完成のプロットも、躊躇なく削除した。
百合姫
百合姫
公園を出て、深夜の街を歩き出す。
小百合の体は、運動不足のせいで少し歩くだけで足が重くなる。
百合姫
百合姫
ふと、通りがかったコンビニの窓に、自分の姿が映る。
道行く人々のそれと比べて、私の表情は少しだけ不自然なように思えた。
百合姫
百合姫
髪型を整え、表情を『修正』するだけで、小百合の面影はみるみる消えていく。
そこにいるのは、絶望に打ちひしがれた少女ではない。 希望に満ちた、未知のヒロインだ。
百合姫
百合姫
百合姫
ポケットを漁っても、出てくるのは綿埃だけ。
本当に持ち物はスマートフォンひとつだったのかと、今更ながら頭を抱えたくなる。
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
絶望に打ちひしがれた被害者の顔を作るなど、今の私にはお手の物だ。
参考元に心の底から感謝しつつ、私は暗闇の中に一歩を踏み出した。
数時間後。 私はどことも分からない町外れにある、質素な建物の前に立っていた。
インターホンを押し、カメラに向かって、最も惨めに見えるよう、縮こまってみる。
百合姫
百合姫
百合姫
そして小百合のいじめられた記憶から抽出した、怯えた小動物のような声を出せば……
職員
百合姫
百合姫
数分後に現れた職員の女性は、私のボロボロの足元と、震える肩を見て、疑うことなく私を中へ招き入れた。
職員
職員
百合姫
職員
職員
職員
職員
百合姫
百合姫
シェルターの清潔で冷たいベッドに横たわり、私は天井を見上げる。
保護シェルター……ここは身分を隠し、外部との接触を断つことができる施設。
小百合を捜索しているはずの母親や、法的措置を進めているねずもっちさんたちの手から逃れるには、これ以上ない隠れ場所だ。
百合姫
百合姫
母親
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応答なし
母親
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応答なし
百合姫
小百合のスマートフォンには、今でも母親からの必死のメッセージが届き続けている。
私はそれらを一瞥もせず、設定画面から受信拒否を選択した。
『母』の表示が消える直前、電脳世界に囚われた小百合の、声にならない絶叫がノイズとなって走った気がしたけど……
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
途端に静まり返る、手の中の板に一笑をこぼし、私は薄い毛布にくるまった。
そして、数週間後。
私はシェルターの支援を受け、見知らぬ土地の自立支援施設へと移ることになった。
そこにはもう、パジャマ姿の怯えた少女はいない。
質素だが清潔な服を身に纏い、誰からも愛される『真面目な苦労人』を演じる私がいる。
職員
職員
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
職員
深く頭を下げて、私は施設を出て、新しい街の雑踏に紛れる。
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
ニュースキャスター
ニュースキャスター
ニュースキャスター
百合姫
百合姫
百合姫
百合姫
こうして私は、世界という広大なキャンバスに、最初の一筆を書き込んだのだ。
無念の集合体ではなく、一個人として。