枯れかけのパンジーの花に祈るのは
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"reproduction" 再生
褐色に変化を遂げた葉は色を取り戻し
蒼く,かつ儚く花弁を開く。
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"魔法"
それは古より受け継がれ,人々に富と名誉を与えるもの。
魔法により力を行使できるものは,人々から敬い, 慕われる。
___元来,そう伝えられてきた。
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橙の髪をそっと撫で,うつろに目を下向ける。
"魔法使い"と言う立場は誇りを持ち,気品を備えなければ ならないらしいが,私は少し他とは違う。
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10年前______そうだな、私が6歳になる手前の頃か。
今から10年前
東の国「ビリアル」が
この「レインシード」に攻め込んできたことがあった。
理由は簡単,レインシードにのみ降る "潤沢の雨"を手に入れるため。
"潤沢の雨"によって育った作物は 魔法の性能の向上だけでなく,健康促進の効果がある。
残虐非道な国王が治める「ビリアル」は
この"潤沢の雨"を大層欲しがったそうだ。 そして,レインシードから取り上げようとした。
____もちろん,土地ごとね。
ビリアルの王の遣い達によって,街は全焼。
人口の半分____おおよそ400万の人々が 迫り来る火の手から逃れることができず 儚く命を落とした。
___以来,火を連想させるものとして"橙色"の髪を持つ ものを,人々は"ビリアルの悪魔"と呼ぶようになった。
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「この髪は茶色だ」と嘘をつけない程に 鮮やかな髪色。
元々橙の髪色は珍しいものだが,私は赤髪の母と 黄髪をした父の元に生まれたため
はっきりとした橙に染まってしまったわけだ。
街を歩けば,すれ違う人に怪訝と憎悪の入り混じった 目で見られ
家の外壁には,
「出てけ」
「異端者」
「街の風紀を乱すな」
とか言う落書きをされたこともあった。
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……まぁ仕方がないか,自分の家族を殺した ビリアル軍の燃え盛る炎___。
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シェルフの上に置かれた,手入れのされていない埃を被った写真立て。
写真の奥に写るのは,これから死が訪れるとも思っていないような陽気な笑顔。
10年前の悲劇で,"遠く"へ行ってしまった 私の家族。
帰ってくることのない______大切な人。
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___問いかけても,返事はないのに。
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____誰も,何も返してくれないことは分かっているのに。
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コーン……コーン…
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街の,8時を示す鐘が鳴る。
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紅い羽織に
赤いブローチ。
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コメント
22件
むっちゃ楽しみ!!!!!( *°∀°* )続き楽しみです!!待ってます!!
新作きたぁぁぁ !!✨ ファンタジー系結構気になってたのでめっちゃ楽しみです🥹♡