春千夜
春千夜
俺は隊長がすきだ
どうしようもなく好きだった
黒いマスク
それを俺は呼吸器のように
手放せずにいる
それはあの日
誰からも守られなかった俺に
初めて差し出してくれた
あの人なりの「理解」の象徴だった
ムーチョ
ムーチョ
ムーチョ
春千夜
春千夜
ムーチョ
春千夜
ムーチョ
春千夜
春千夜
ぶっきらぼうで、雑で。
でも
あまりにもやさしかった
顔も心も、ひどく覆ってくれた
その布切れに
俺は救われてしまったのだ
そんな隊長が
春千夜
よりによって、あの人が
満面の笑みを浮かべて
誰かの唇を塞いでた
見えないガラス越しに見えたのは
俺には届きそうのない
夕焼けに透ける金魚鉢のような
どこか空虚な幸福だった
ムーチョ
ムーチョ
スマイリー
_スマイリー
その名を喉の奥で何度も転がす
100% 純粋な悪意のように笑ってるアイツ
隊長の背中を見ては
子犬のように駆け寄る姿
春千夜
俺は
そのガラスの向こうの世界に
入りたくて入りたくて仕方なかった
でも入れない。
俺はただの隊長の部下止まりだ
春千夜
隊長がくれたマスクを唇に押し付ける
そうしないと、嗚咽が漏れてしまいそうで
まるで子供が手放さない毛布みたいだ
大人になれない俺の、唯一の温もり
ベットに潜り込む
春千夜
暗がりの中、泣いた。
泣きながら、笑った
これでいいんだ
隊長が幸せなら、それで
春千夜
でも、心臓がズキズキと鳴り止まない
まるで小さな虫が内側から肉を食い破ってくるように
脳裏に焼き付いた光景を
何度も何度も爪で引き裂いては
また思い出す
マイキー
千咒
春千夜
明石
明石
明石
明石
春千夜
いつもこればかりだ。
妹の千咒が粗相をすると、俺が怒られる
俺はどうしても欲しかった
大事にしてくれる「家族」や「兄」とか
そういうモノを
春千夜
春千夜
ムーチョ
自分の形をした空洞に
隊長を無理やり押し込めた
春千夜
あの時、笑ってたけど
あれは俺のじゃない
あんな顔、俺には向けてくれない
だから、今日もこのマスクを握りしめて
心の底で、貴方の名前を呪うんです
だって
春千夜
春千夜
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