ガタンガタン、と電車が揺れる音。
踏切の音が混じり、不協和音を奏でている
夏の生温い風、飴を口に頬張りながら自転車を漕いで漕いで、漕ぎまくった。
彼女は覚えているのかな、なんて聞けやしない質問が頭に浮かぶ。
晴天の空に映された君の影が、
高いポニーテールのセーラー服の少女が
いつまでも忘れられなかった。
夏音
夏音
海岸沿いのフェンスに浮かぶ藍色の花。
図書館で彼女と笑い合った日々も、
授業中にふざけ合って怒られた思い出だって、
彼女から私への贈り物の一つだったのだ。
あの遠い夏の日、私たちは確実に同じ景色を見ていた。
重なり合う私たちの自転車の影が、
そしてその面影を忘れさせない今の自転車の風景がそれを教えてくれた。
夏音
無意識に雫が零れ落ちた。
彼女の豪快な笑い声が脳内で響いて離れなかった。
わたしは覚えている。
そして、彼女も、覚えていたのだ。
洟希
洟希
わたしは思わず膝から崩れ落ちる。
彼女との沈黙の時間。
何粒もの滴は、彼女の天色のハンカチによって拭われた。
夏音
わたしは笑った。
後悔しないくらいに、全力で笑った。
赤く腫れた目で、不細工な顔で精一杯笑ったのだ。
そして、彼女も笑った。
彼女は貰い泣きなんてしない性格だけど、
彼女の笑顔は、3年前の彼女によく似ていた。
いつまでも子供らしい彼女の唯一の変点は、
なによりも、その笑い方なのだった。
ツユクサ
「懐かしい関係」
コメント
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やっぱり花言葉と言えば音緒、、、、お題やってくれるかなって思ってたんですけど思いっきりやってくれて最高………… この子に何があったのかとか何にも書いてないのになんとなーく理解できるし敢えて死んだとか居なくなったとか直球に伝えてこないところにこの作品の柔らかさを感じるしこの子はいつまでもその子を思い出し続けるだろうなって思うと泣けてくる、、、すごい語ってしまいましたがとにかく一言でまとめると好きです