世界中が
モノクロになってしまった
青かった空は
薄いグレーになってしまった
茶色かった地面は
濃いグレーになってしまった
比喩とか
そういうのじゃなくって
実際に
私たちの目の前に広がる景色は
白と黒しか存在していなかった
理由は分からない
けれども、それは確かに
今の私の心を
映し出していたのかもしれない
TELLER文芸部
理菜
理菜
理菜
昨日の、たしか夜12時半ごろ
カーテンの色が
ピンクから薄いグレーに
変わっているコトに気が付いた
ぱっと辺りを見回してみると
イロイロな物の色が消えており
もしかしたら
私の色彩感覚が 狂っちゃったのかなぁなんて
少し
いや、だいぶ、焦った
それで凄く心配になって
ママやパパを起こして
このコトについて相談すると
ママやパパも私と同じで
『色』が視えなかったようで
理菜パパ
理菜パパ
理菜ママ
理菜ママ
がっつり驚いていた
異常な事態に眠気覚めて
そのまま眠れないまま
みんなで朝を迎えてしまって
今に至るという訳だけど
理菜
理菜ママ
理菜ママ
理菜ママ
理菜パパ
理菜パパ
理菜パパ
今やニュース番組は
この話題で持ちきり
異常事態だということで
学者や研究者は
夜から朝にかけての
約6時間ぽっきり
この異常について調査したようだ
結果としては
理菜
理菜
理菜
理菜
理菜
理菜ママ
理菜パパ
理菜パパ
理菜
理菜
理菜
幸いなことに
モノクロになったのは
『モノ』だけだった
人間や生き物には色味というか
少なからず光彩はみられた
理菜ママ
理菜パパ
理菜パパ
理菜ママ
ただ、それも
私たちが『色』を持っているのも
今だけなのかもしれないと思うと
ちょっぴり怖くて
少しドキドキしてしまう
理菜
理菜
理菜
理菜
理菜
思い立って
私は
このモノクロ世界に
一歩、足を踏み入れてみる
なんだか悪いことを
している気分だ
理菜
理菜
理菜
理菜
時々、モノクロでない部分が
街の中に紛れ込んでいることに
気が付いた
理菜
理菜
理菜
青い鳥の置物
緑のクローバー
空には七色の虹が掛かっている
理菜
人、生き物
そして、一部の景色には
残された色が映えていた
理菜
理菜
理菜
心配なのは
私の家族以外の人たちは
色を持っているのだろうか
ということ
理菜
理菜
私の友達は大丈夫だろうか
まだ色は付いているだろうか
理菜
理菜
理菜
そして......
私がひたすらに恋い慕う相手は
このモノクロに
支配されてはいないだろうか
それだけが不安で
不安でたまらない
理菜
スマホを探す
理菜
理菜
スマホを家に忘れるという
痛恨のミス
まぁでも
人に害はないし
大丈夫かな
なんて
自分に言い聞かせておく
図書館の人たちは
みんな、それぞれの色を佩びていた
ただ
本や図書館の机
そして図書館の窓に映る景色は
白とグレーのグラデーションに
染まっているだけだった
理菜
理菜
理菜
理菜
この異常気象に少し興味を持つ
ミーハーな奴だ
そして私は無意識に
自然科学・気象学の本棚の前に
来てしまっていた
理菜
理菜
理菜
気象についての文献を
探してみる
探してみて
ふと目線を奥の方へ向ける
玲都
そこには
私の心が揺れるほどに
鮮やかな色を放った
想い人の姿があった
理菜
理菜
理菜
爽やかな玲都くんの
そのナチュラルベージュの色に
見惚れてしまう
玲都
玲都
理菜
理菜
声を掛けてきやがった
いや凄く嬉しいけど
玲都
玲都
理菜
玲都
玲都
玲都くんは辺りを指差す
玲都
理菜
理菜
私は緊張して
誤魔化すことしかできない
ただ、そうすることしかできない
玲都
玲都
玲都
玲都
理菜
物知りの玲都くん
超、奥ゆかだ
あ
"奥ゆか"っていうのは
慎み深くて奥ゆかしい
という意味
私が考えた言葉
ま、そんなこと
どうでもいいけど
理菜
玲都
理菜
理菜
理菜
私の内容のない質問に
玲都くんはきっぱりと
玲都
と言った
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都くんはやっぱり勉強家で
努力家で
本当に本当に
奥ゆかなのだ
そういう所が...
たぶん...
凄く、すごぉーく...
私は、好きなんだと思う
玲都
玲都
理菜
玲都
玲都
玲都
外ではいつの間にか
雪がチラチラと降っていた
理菜
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
モノクロになっても
雪はただただ、真っ白いまま
純白で混じり気のない白
その中に、純粋で、強い
志(こころざし)を感じる
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
理菜
理菜
理菜
私は思いのままを伝える
降り積もる雪のように
純白な気持ちで
この真っ白い雪は
どうして降るのか
その謎は恐らく
今までの研究者たちが
苦労を重ねて
解明してきたのだろう
このモノクローム現象も
玲都くんが躍起になって
調べていくのだろうか
そんな姿を私は
見てみたいし
見ていたいと思ってしまう
だって私は彼が
どうしようもなく好きなのだから
理菜
理菜
理菜
理菜
理菜
玲都
玲都くんは満足げに窓辺を見て
雪が降っているねと呟いてから
私の方を向き直して
私の目を見つめた
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
そして
彼は私に
そう告げた
その次にはもう
私たちの周りは色付き始めて
見慣れたカラーが
図書館に広がり始めた
玲都
玲都
理菜
理菜
理菜
理菜
憧れの玲都くんに告白されて
嬉しいはずなのに
涙が溢れ出てくる
理菜
理菜
理菜
理菜
玲都
玲都
玲都
玲都
私の心を映しているよう
煌びやかな色たちは
とても幸せそうな表情をしていた
理菜
理菜
理菜
理菜
理菜
理菜
理菜
理菜
理菜
理菜
理菜
玲都
玲都
理菜
玲都
理菜
理菜
理菜
理菜
理菜
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
玲都
理菜
理菜
理菜
研究が進んで
色々なことが解り始めた
幸せが一定量溜まると
その場所は色を取り戻す
そう
私の予想は正しかったのだ
恐らく人や生き物は
家族がいること
友達がいること
そもそも、生ていること自体
"幸せ"だから
色を失わずに済んだみたいだ
では何故、世界全体が
モノクロになったのだろうか
それは、地球自体が
"不幸"であるからだと
ある研究者は、そう結論付けた
温暖化
オゾン層の破壊
様々な変異ウイルスの蔓延
そうだ
一番の被害者は
地球なんだ
地球が色を取り戻すまで
あと何年掛かるか分からない
人間が絶滅しないと
色付かないのかもしれない
けれど、私は
色を取り戻した地球の姿を
もう一度見たいから
私のできることをしようと思う
うん、多分
みんなも同じ気持ちなら
取り戻せるはず
いつかきっと
色に溢れた地球を
もう一度
『世界がモノクロに見えた日』
お題「白黒」
課題「冬にまつわる」
夜柚
fin
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
夜柚
最後までお読みくださり ありがとうございました
コメント
26件
読むの遅くなりましたがとても面白かったです! これを読んでいると、現実を忘れてその世界に入ってしまうような、そんな気がします! 2人が付き合って幸せになって、色がついてた物と照らし合わせると…! ってな感じで私も「うわぁぁ!!!」ってなって、とにかくとても感動しました! フォローさせてもらいますm(*_ _)m
なんか色々と考えさせられるお話でした😌 色だけに...
夜柚さんらしいですね。 地球が砂漠化したらモノクロですもんね。 月もモノクロだよなとか考えて読みました。 無機質、生命がないと色もないのかなとか。 素敵な作品でした✨✨