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『スパイ、裏切りの印』
ーー任務は、急だった。 夜の街を見下ろすビルの屋上。風の強い夜。 なおきりは、手元の端末を静かに見つめていた。
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背後から聞こえた足音。 振り返れば、えとがいた。服装は潜入仕様 ーー黒でまとめられた軽装、だけどどこか似合っている
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なおきりはわずかに頷いた。
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えとさんは軽く指を鳴らす。だけど、笑ってはいなかった。
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一瞬、風の音だけが鳴った。 なおきりは彼女に視線を合わせると、どこか柔らかく笑ってーー
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ふたりは背を合わせ、それぞれのルートへ向かって歩き出す。
その夜、静かに“裏切り”の幕が上がったーー。
第二幕 信じてたのに。
地下研究施設。 無数の監視カメラが巡回する無機質な廊下。 その隙間を縫うように、えとは軽やかに走っていた。
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息を整え、次の通路へーー その瞬間
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床に仕掛けられたセンサーに気づくのが、一瞬遅れた。 ガシュンーー!遮断扉が閉まり、赤い警報が鳴り響く。
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四方から、完全武装の警備兵が現れる。
「止まりなさい。抵抗すれば、命はない」
えとは、拳を握った。けれど、体勢が悪い。 戦えない……いや、戦っても逃げられないーー。
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が、現れたのはーー その人影を見た瞬間、えとの心臓が止まりそうになった。
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警備兵たちを背に、冷たい表情を浮かべた男がひとり。 施設の職員と同じバッジを胸にーー なおきりだった。
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「了解、技術部門へ搬送します」 「ご協力感謝します、“エージェントK”」
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呆然と見上げるえとの前に、なおきりが静かに歩み寄る。 そして、小さく囁いた。
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耳元にだけ落とされた声。 けれど、えとの胸にはざわつく感情が渦巻いていた。
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そしてえとは、そのままーー 拘束され、研究施設の奥へと連れて行かれてしまった
第三幕 信じる理由
「……起きてください。ここは安全です」
重たいまぶたを開けたえとは、白い天井を見上げた。 機械音も、警報も、もう聞こえない。
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起き上がろうとすると、手首に違和感。 応急処置がされた包帯。そしてーー
「無理に動くと、また傷が開きますよ」
目の前にいたのは、なおきり。 以前と変わらない、どこか優しげな目でこちらを見ていた。
でもーーその目を、えとはもう、信じていいのか分からなかった。
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声が震えていた。怒りとも悲しみともつかめない感情がこみ上げてくる。 それでもなおきりは、まっすぐにゆっくりと言った。
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静かな空気。えとは、まだその意味が飲み込めずにいた。 なおきりは、ふっと笑った。
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えとは、言葉を失っていた。 強がってばかりいた自分に、真正面からそう言ってくれた人なんてーー
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小さく小さくつぶやく。
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でもその声には、怒気はなかった。 代わりにーー頬を伝う、熱い涙だけがあった。
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えとはナイフを握りしめ、そっと階段を上がる。 そのすぐ背後ーー足音を殺すように、なおきりが続いていた。
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ふっとえとが笑う。 トゲのない、どこか照れたような笑み。
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えとは、小さく息を吐く。
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ーーその瞬間。 ガラスの破壊音と共に、煙幕弾が室内に投げ込まれた。
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なおきりが反射的にえとを抱き寄せ、壁の影へ転がり込む。 腕の中で感じる心音が、やけに近い。
煙の中からは、敵組織の残党が静かに姿を現す。 “偽装解除”される識別タグ。ーー味方のフリをした裏切り者。
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ふたりは背中を預け合いながら、完璧な連携で敵を制圧していく。
けれど、戦闘が終わった直後
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えとの声。視線を向けた先には、ナイフを構えて突っ込んでくるひとりの敵。 動きが……間に合わない。
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えとの体がなおきりを突き飛ばし、ナイフがえとの腕を裂いた。
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倒れ込んだえとの腕からは、赤い血が滴っていた。 そしてーー
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傷の痛みに顔をしかめながらも、彼女はそう言って、微笑んだ。
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沈黙。 なおきりは、傷口を押さえながら、優しくえとを抱き起こす。
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彼は、ふっと目を伏せた。
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『報酬は、あなたの全部』
任務後、帰還したふたり。 怪我の応急処置も終えて、ソファにだらんと座るえとが ふと口を開いた。
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えとがソファの上でぐっとガッツポーズ。 それから、なおきりの方を振り返るとーー
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えとは、わざとらしく指を一本立てて、なおきりの目を覗き込む。
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えとはにやっと笑って、口元に指を添えた。
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ぐっと距離が近づく。 なおきりの膝に片手をつき、少し前かがみに覗き込むようにして。
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ぐいっと、ネクタイを軽く引っ張る。 距離が、ほとんどゼロになる。
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心音が跳ねる。 いつもの軽口なのか、あるいはーー。
なおきりの瞳が、わずかに揺れるのを見て、えとはくすっと笑った。
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えとは勢いよく立ち上がって、指をピンとたてた。
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そうしてにっこり笑うその表情は、少しだけーー本気に見えた。
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えとの目がきらんと光った。その笑みは、これまでなおきりが浮かべてきた“からかい” の笑顔とは、どこか違っていてーーまるで獲物を追い詰める側の顔。
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その声に、なおきりは思わずまばたきを忘れた。
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えとはいつになくまっすぐな瞳で、なおきりを見つめていた。 元ヤンとは思えないほど、やわらかで、けれど確かな意思を宿した目。
からかわれる側になるのが、これほど胸にくるとはーー なおきりはその時、初めて思い知った。
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コメント
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et彡をナイフで刺したのは 誰だぁああ ! ! 🫵🏻🔥 許さぁ ー んっ ! ! no兄が裏切る 訳ないもんね ー ! ! ✨ 流石です 👍🏻 続き楽しみにしてます ! !