僕には思い出がない。 正確には、覚えてないだけで思い出はあるのだろうけど。
寝る度に記憶が無くなってしまうんだ。 幾度と、寝ないことにも挑戦したが絶対に寝てしまう。
でも、こんな僕でもうっすらと残っている景色があるんだ。
海
綺麗な海なんだ。よくわからないけど、とても綺麗なんだ。 矛盾してるかもしれないけど…でも、言葉に出来ないほど綺麗なんだ。
僕の夢。いつかその海に行って、入ってみるんだ。
僕の記憶が無くなり始めた頃、思い出を少しでも残せるように始めた日記。
初めから決めてた僕の夢。
記憶が無いから感情も曖昧だけど、夢を考えるときはワクワクしてるの、分かるよ。
だから、今日は特別な日。
最近、友達になった子が僕をその海に連れていってくれるらしい。
実は、僕は何度か海に行ったことがあるらしい。が、
なんだか、思い出の海ではなくてピンと来てないらしい。 日記に書いてあるだけだから分かんないけど。
でも、
今日は本当にその海らしい。僕が友達に海の話を少ししたら思い当たる海があったそう。
だから今日は特別な日。日記を持っていって気持ちを書くんだ。
凄く楽しみ。
僕は移動中、考えた。
その海に行ったらもしかして記憶が戻るんじゃないかって。
僕、記憶が無いって言ったけど、文字は書けるし、海のことは少し覚えてるし。
だから、もしかしてって。僕はその'もしかして'に希望を託そうと思う。
記憶が戻ったら何をしよう。どうしよう。
と、僕は考えていたらあっという間に着いた。
そこは凄く心地よかった。
驚くほどに心が安らいだ。何でも出来るような気がした。
空気を一杯吸って、一杯はいた。
これほど嬉しいことは無かった。とても満足した。
でも、これで終わりじゃない。
僕は海に入りたいんだ。
僕は何も気にしなくていいと友達に言われたから気にしなかった。
服のまま、思うまま海に入った
海を眺めるのも良かったけど、入る方が何倍も良い。
この瞬間がとてつもなく心地良い。
このままで良いとさえも思った。
すぐ叶った。
僕
僕
僕
そっか。
その時全てを理解した。今まで友達だと思ってたのは紛れもない僕。
だからこの場所も知っていたのだと。全てを理解した。
そのとき、見てたはずの泡が消えた。
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