雨が叩きつける高架下のコンテナ内。深澤からの暗号めいた
メッセージが冷え切ったメンバーの心に一筋の火を灯した。
しかし、その喜びをかき消すようにコンテナの鉄板を外側から何者かが
鋭利な刃物で引き裂くような不快な金属音が響き渡る。
ギギギ……とミリ単位で抉じ開けられる隙間。そこから流れ込んで
きたのは雨水ではなく、意思を持った「黒い霧」だった。
深澤(?)
【お前ら、聞こえるか? 通信圏内に入ったぞ。……時間がない、
俺のハッキングがバレる前に、そこを脱出しろ!】

佐久間
ふっか!? ふっか無事なのかよ!?
今どこにいるんだ!?助けに行くから待ってろ!!

深澤(?)
【……俺のことはいい。それより阿部ちゃんだ。アイツ、今……
ブラック・アイスの本拠地「アイアン・スノー」の最深部で
無理やりシステムに直結させられてる。】

渡辺
アイアン・スノー……? あの難攻不落の浮遊要塞かよ。
あんなとこ、今のボロボロな俺たちでどうやって潜入しろってんだ。

岩本
……ふっか、お前……その情報をどこで手に入れた。
お前の後ろに……誰かいるな?

岩本の鋭い指摘に、通信の向こうで沈黙が流れる。
その時、ノイズが走り深澤の声ではない「別の声」が混ざり始めた。
低く、理性的で、どこか悲しげな……
聞き慣れた、しかし決定的に「何かが違う」声。
阿部(?)
【……照、みんな。……久しぶり、かな。】

ラウール
阿部ちゃん……! 阿部ちゃんなの…!?
今すぐ助けに行くから待ってて! どこにいるの!?

阿部(?)
【ダメだ、ラウール。……来ちゃいけない。今僕の脳の80%は、
氷室のAIに「共有」されている。僕がみんなと話せば話すほど、
みんなのバイタルデータも居場所もすべて氷室に解析されちゃうんだ。】

宮舘
……阿部。お前は、自分の意志でこの通信を開いたのか?
それとも……これも氷室の罠の一部なのか?

阿部(?)
【……両方だよ、舘様。……氷室は、僕を使って君たちを「狩る」つもりだ。
でも僕の中の「阿部亮平」が、一瞬だけシステムの隙間をこじ開けた。
……いいか、これから言うことを一文字も漏らさず記憶して。】

目黒
……阿部ちゃん…苦しそうだ。
そんなに無理して喋らなくていい! 俺たちが必ずそこまで辿り着くから!

阿部(?)
【……時間がない。……アイアン・スノーの外部装甲には、0.2秒周期で
切り替わる周波数シールドがある。僕が……今から、僕の「全知
(ライブラリ)」をオーバーロードさせてそのシールドに穴を開ける。】

岩本
……待て、オーバーロードさせるって……!
そんなことしたらお前の脳にどれだけの負荷がかかると思ってんだ!
精神が焼き切れるぞ!

阿部(?)
【……いいんだ。……みんながまた笑える未来のためなら……。
……それに、僕も「戦場」に立ちたいんだ。
アイドルとしてじゃなく……Snow Manの「矛」としてね。】

向井
阿部ちゃん、何かっこいいこと言っとんねん!
死んだらアイドルも矛もあらへんやろ!
……あかん!待って、阿部ちゃん! 返事してや!!

通信が激しい火花のようなノイズに飲み込まれていく。
阿部の意識が氷室の冷酷なプログラムに再び飲み込まれていく様子が
ノイズの「波」となってメンバーに伝わってきた。
氷室
……戦場へようこそ。……諸君。

最後に響いたのは阿部のものではない、氷室の凍てつくような笑い声だった。
その瞬間、コンテナの天井が爆圧で吹き飛ぶ。雨空を見上げると巨大な黒い影
――浮遊要塞「アイアン・スノー」が、ゆっくりとその姿を現していた。
佐久間
……マジかよ。あんなデカいのが迎えに来てくれたってわけか…上等だ……
阿部ちゃんが穴を開けてくれるんなら、俺は光速でそこを潜り抜けてやる!

渡辺
……ったく。あいつ、いつも無茶ばっかりさせやがって。
……おい、ラウール。まだ震えてんのか?

ラウール
……ううん。…僕には視える。阿部ちゃんが涙を流しながら「こっちだ」って
手招きしてる未来が。……行こう。今度は、僕がみんなを導く番だ!

岩本を先頭に7人が雨の廃墟を駆け出す。
空から降り注ぐ無数の追尾レーザーを潜り抜け、彼らは阿部が命を懸けて
作り出した要塞の「唯一の欠陥」へと突っ込んでいく。
Snow Man史上、最も過酷で、最も熱い救出作戦が今、始まった――