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薔薇の隠し事

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薔薇の隠し事

21 - 薔薇の隠し事 第21話

♥

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2019年12月29日

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ジェシカたちが揃ってエレノアを追い詰めている。

エレノアが必死になにかを口走り、やがて窓の外から身を乗り出し…。

ジーナ

ジーナはハッと目を覚ました。

汗が頬を通じて流れている。

ジーナ

(また嫌な夢を…)

マックスと共謀して次々と殺人を実行に移して以来、

ジーナは毎晩同じ悪夢に悩まされていた。

彼女にはまだハッキリしないことが一つだけあった。

エレノアは本当に自殺を図ったのか?

その場合、原因はジェシカたち仲間内でのいじめによるものなのか?

ジーナ

(それとも…)

本当は自殺などではなく、誰かに窓から突き落とされたのではないのか?

殺人。

立て続けにうなされる悪夢に映るエレノアが自分を見詰める目は、

一体どんな事実を語りかけているのだろうか…。

ジーナ

(…エレノア)

ジーナ

(教えてエレノア)

ジーナ

(あなたは自分で自分を絶ったの?)

ジーナ

(それとも誰かに…)

ジーナ

不意に寝室の電話が鳴った。

受話器を取る前に時間を確認すると既に深夜の2時を過ぎていた。

真っ先に娘のナディアのことを思い浮かべたジーナは一瞬顔を強張らせた。

受話器から聞こえたのは娘を誘拐した男の声だった。

マックス

起きてるか?

ジーナ

えぇ…

マックス

ロドリゲスだが

マックス

警察に捕まる前に自殺を図った

ジーナ

………

マックス

ナディアだがロドリゲスの隠れ家から別の場所に移す必要になった

ジーナ

………

マックス

聞いてるのか?

マックス

自分の娘のことだぞ

ジーナ

…ねぇ

ジーナ

教えてほしいことがあるの

マックス

なんだ?

ジーナは少し躊躇ってから口を開いた。

ジーナ

エレノアだけど

ジーナ

本当にジェシカたちにいじめられて自殺を図ったの?

マックス

今さら何を聞いてるんだ?

マックス

そう教えたじゃないか

マックス

だが、少し違う

マックス

ジェシカたちがエレノアを毛嫌いしていたのは事実だ

マックス

だが、彼女が精神的に参って自分から飛び降りたと思わせているが

マックス

実際は、揃って彼女を窓から外に放り出したんだ

マックス

俺たちはそんな卑劣な人殺しに制裁を下す目的を果たし

マックス

エレノアの墓前に復讐を成し遂げた報告をするんだ

ジーナ

ジーナ

夢を見たの

マックス

夢?

ジーナ

見覚えのある教室で今あなたが言ったような光景が広がってるの

ジーナ

メアリー、ジェシカ、ジュディットの3人が

ジーナ

エレノアを窓の傍まで追い込んでどんどん迫ってるの

ジーナ

そのときの彼女の目、とても恐怖で震えていたわ

マックス

当然だろう

マックス

エレノアはアリス先生の実子だった

マックス

自分たちより贔屓にされてると思い込んで一方的に冷たく接したんだからな

マックス

エレノアにとっては堪えられなかったんだろう

ジーナ

ジーナ

夢の中のエレノアだけど

ジーナ

なにかを必死に訴えているのよ

マックス

どんなことを?

ジーナ

分からない

ジーナ

けど、なんだかその光景が妙に頭に焼き付いてて…

マックス

それはきっとジェシカたちに訴えていたんだ

マックス

「どうして私をいじめるの?」

マックス

「先生の娘だから?」

マックス

「変に勘繰るのはやめて!」と

マックス

俺とジーナは現場に居合わせていなかったから想像するしかないけど

マックス

追い込まれてるときのエレノアの心情を想像することは容易だ

マックス

仲間意識で溢れてた教室がいつしか嫉妬といじめの快楽に浸かった

マックス

醜い格差社会の場と化したんだ

マックス

純粋にダンスと友情を満喫したかった彼女のことを考えると

マックス

今でも胸が苦しくなってくる

ジーナ

ジーナ

私はね、マックス

ジーナ

エレノアは別のことを夢の中で私に訴えかけてるんだと思うわ

マックス

なにを言ってるんだ?

ジーナは少しの間があってから、

ジーナ

私に対して、本当に正しいことをしているのかって問い掛けてる気がしたの

ジーナ

彼女の無念を晴らすために私たちは今度の計画を実行に移した

ジーナ

けど、それをエレノアが疑問に思ってるんじゃないかって

受話器の奥からマックスが小さく溜め息を吐くのが聞こえた。

マックス

そんな綺麗事は言うな

マックス

よくドラマとかじゃ復讐を喜んでるはずがないって言われてるが

マックス

それはあくまで復讐者の心理を揺さぶる手段でしかない

マックス

今回、ジーナが見た夢は捉え方によっては

マックス

「この卑劣ないじめを楽しむ人間を裁いてくれ」と

マックス

言ってるのかもしれない

ジーナ

(エレノアはそんな子じゃない)

ジーナは心の中で呟いたが、黙ってマックスの言葉に耳を傾けた。

ジーナは誤魔化したが、夢の中のエレノアの目が訴えていた言葉はこう捉えていた。

「彼女たちを恨まないで」

迫るジェシカたちを哀れむような眼差し、ジーナにはそう感じられた。

たかが夢だと割り切れるが、ジーナは得体の知れない不吉な予感を抱いていた。

そんな彼女に気付く気配もなく、マックスは諭すように言った。

マックス

だが、今になって中止するわけにはいかないよ

マックス

まだ1人残ってるんだからね

ジーナ

え?

マックス

モリー・シェパード

マックス

知ってるだろ?

ジーナ

知ってるけど…

ジーナは記憶を辿らせたがある疑問が頭から離れられなかった。

ジーナ

(モリーはジェシカと仲違いしてたはず…)

モリーの父親は暴力亭主で、平和な家庭環境とはとても言えなかったが、

その境遇から暴力と犯罪を徹底的に憎むようになった。

現在は、確か犯罪心理学者として活動しているはずである。

ジーナ

(そんな彼女が非行に走ってたジェシカと共謀してエレノアを追い詰めた…?)

ダンス・スクールでの2人は仲間同士として生徒たちと団結していたが、

プライベートでのジェシカとモリーはお互いを毛嫌いしていたはずでは…。

…いや、それよりも不自然なのがもう一つ。

マックスは確かキャサリンで最後だと言っていたはずでは…?

2019.12.29 作

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