ジェーン・ドウの偽言

キナリは背後に立つオミズを 低い位置から蹴り上げた。

ジェーンさんが突然、 肉のようなものでできた壁に囲まれる。

突然家に押し入ってきた 大勢の大人の一人が、そう言った。 服装からして、 おそらく神官だったのだろう。

その瞬間、父の顔色が変わる。

兵は、そう言って父を睨んだ。

そう父に縋ると、父は私を見て 裾を掴む私の手を握り返した。

兵は腰の剣に手を伸ばす。 引き抜かれた剣身が、 窓からの朝日にきらりと反射した。

まったく調子を変えず そう言うものだから、 自分の耳を疑う。

言いながら、そばに置いてある紙に"透明"と書き込む。その瞬間、キナリさんの姿はパッと消えてしまった。

【創作(アーティスト)】 紙に文字や絵を書くことで、 書いた内容を紙に反映させる。 紙が破れれば無効化される。

襲撃時私を連れ戻そうとした、 絵のような笑顔を貼り付けた男。

バチ、と火花の散る音がした気がする。 怒りを滲ませたキナリさんは、 男から私に向き直った。

私の言葉をかき消すように キナリさんが叫び、私に耳打ちする。

広い通路に、2人の足音だけが響く。

キナリさんはこちらに顔も向けず、 歩きながら話し続ける。

ふと、キナリさんが振り向いたと思うと、ずい、と仮面が近付く。

初めこそ驚いたが、今では見慣れた紙の仮面。それのせいで見えない瞳が、こちらに視線を向けている。

前へ向き直り、私の少し前を再び歩く。 …キナリさんの背中を見て、 ふと考えがよぎる。

…今私は、何を考えた？ それはしないと、 心に決めたのではなかったのか。

自分の思考に戸惑っていると、 再びキナリさんが振り向く。

ちらりと見えたキナリさんの口元は、 静かな…しかし、どこか歪な笑みを 浮かべていた。

お面のせいで、やはり顔の上半分はほとんど見えない。しかし…。

キナリさんは、こうなることが わかっていたかのように余裕綽々。

わざとらしく首を傾げ、にっこりと笑う。

おそらく、本当のことなのだろう。 実際、王の兄にあたる人物が、 父親…つまり、先代の王の毒殺容疑で 次期国王の地位を失っている。

キナリさんが前へ歩み出ると、 兵が取り囲んだ。

どうしたらよいかわからずうろたえていると、背後から突然、口を塞がれる。

必死で暴れていると、 キナリさんが視界に入り込んだ。

ピリ、と空気が張り詰める。 男の顔から、あの気味の悪い笑顔が 剥がれている。

すやすやと眠るジェーンを見て、 頭を掻く。

To be continued—