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クリスマスって

わくわくする

あ、でも

〝わくわくした〟

の方が正しいのかも

別にクリスマスが嫌いなワケじゃない

小学生の頃とか

中学生の頃のような

あの頃の

夜が来るのが楽しみで仕方なくて

大きなクリスマスケーキとか

少し特別なフライドチキンの芳ばしい香りとか

朝目覚めて

プレゼントを見つけた時のドキドキするような

そんな気持ちを

忘れてしまっただけ

でも

大人になった今でも

クリスマスになると

何か起こるんじゃないかなと

期待をしてしまう自分がいる

«12月24日»

千津

寒っ…!!

会社から出た瞬間

喉も凍るような冷たい空気に襲われた

千津

もう嫌だなぁ...

千津

企画はボツにされるし

千津

部長には怒られるし

千津

何より寒いし…

凍った手のひらを頑張って擦ってみるけれど

あまり意味がなかった

千津

早く帰って温かいコーヒー飲も...

大通りは青色や白色のイルミネーションに飾られていて

少し眩しくも綺麗だった

とは思いつつも

企画ボツの怒りがふつふつと込み上げてくる

千津

そんなに駄目かな…

〝火を吹くはにわストラップ〟

デザイナーの駆け出しではある

でもそれなりに頑張った

頑張ったつもり

実費で立体化もしてみた

でも部長に見せた途端に

「こんなぶっ飛んだものが売れるか!!!」

と怒鳴りつけられた

千津

あんなに怒らなくてもいいのにさ...

千津

頑固オヤジっ...

口を尖らせながら大通りを歩いていると

どこからか

「ジングルベール♪ジングルベール♪」

と聞き慣れた音楽が流れてくる

千津

なーにがジングルベルじゃ!!!

千津

このーーー!!!

軽やかな曲から逃げるように

大通りを駆け足で抜けていく

期待通りに音楽が離れていったけど

代わりにクリスマスっぽくないものが聞こえてきた

千津

あっ

小学4年生くらいの女の子が

道の端で目を真っ赤に腫らしながら泣いていた

その周りを大人達は

知らんぷりで通り抜けていく

千津

冷たいなぁ

一瞬してしまったしかめっ面を笑顔に変えて

女の子に声を掛けに行った

千津

どうしたの?大丈夫?

女の子は、はっとした表情をすると

私の右腕の端を握り締めてきた

女の子

お母さんと...お母さんと...

続きを言いたいようだったけれど

嗚咽が酷くて言葉にならない

千津

はぐれちゃった?

うんうん、と必死に首を振る

千津

そっかそっか

千津

じゃあお姉さんと一緒に探そ?

千津

絶対見つかるから!ね?

冷たくなったハンカチをコートのポケットから出して

少しゴシゴシと摩擦熱をつけてから涙を拭ってあげた

千津

よしっ!

千津

ココア好き?

女の子

えっ...?

『ガゴンッ』

女の子

美味しい..

千津

寒い時のココアはめちゃくちゃ美味しいよね...わかるわかる...

近くのベンチに2人で座って

両手をちょっとずつ温めながらココアを啜った

千津

少しは落ち着いたかな?

女の子

うん...

女の子

ありがとう...ございます...

千津

いい子だなぁ…( ;∀;)

千津

よし!早く見つけよう!

女の子はわぁっと明るい表情をすると

「うん!」と元気な返事をしてくれた

千津

お母さんどこにいるのかねぇ…

スマートフォンを取り出して

迷子の子を探しに行きそうな所を調べてみる

ケーキ屋さん、スーパー、デパートの迷子センター...

千津

色々あるな…

千津

うーん...お母さんを最後に見たのはどこかな?

スマートフォンの画面を見ながら尋ねてみる

返事が返ってこない

千津

うん?

横を見ると女の子が

私のスマートフォンをじっと見つめていた

千津

どうしたの?

女の子

これ...なぁに?

女の子が指をさしたのは

〝火を吹くはにわストラップ〟だった

立体化した物の1つを自分のスマートフォンに付けていたやつだ

なんだか恥ずかしくなってくる

千津

あ...えーっとねぇ…

千津

は、はにわさん...だよ…?笑

女の子

はにわ?

千津

置き物みたいなやつって言えば早いのかな…

女の子

なんで口から火が出てるの?

千津

なんでだろうねぇ…笑

なんでだろう...

え、なんでだろう?

女の子

いいな...

千津

え?

女の子

これどこに売ってるの?

千津

!?!?

女の子

クリスマスプレゼントこれがいいな...

女の子

サンタさんに言えばまだ間に合うかな?

千津

こ、これは…

千津

どこにも売ってな…いかなぁ...笑

女の子

えー...

女の子は想像以上にしゅん...と落ち込む

千津

じゃあ...

千津

はいっ

女の子

女の子

いいの?!

バックに入っていた予備のはにわを (予備のはにわってなんだろう)

女の子に手渡した

女の子

わぁ...

女の子

口から火が出てる!

女の子

お姉さんありがとう!!

千津

こんなもので良いなら…笑

部長よりもなかなか見る目があるなぁ...

という言葉は飲み込み

女の子の言っていたお母さんを最後に見たデパートへ

ココアで温まった手を繋ぎながら

2人で向かって行った

女の子

お母さん!!

女の子のお母さんはデパートの受付嬢の人と話していた

だぁーっと女の子は走っていき

お母さんに思い切り抱きつく

女の子とお母さんはぺこりと頭を下げてお礼を言ってくれた

その2人を手を振って見送ると

私も曇った夜空を見上げながら家路に帰る

何故かは分からないけど

大人になってから今までで

一番クリスマスに近づいた気がする

千津

なんでだろう...

思わずうーん...と唸ってしまう

千津

あっ

千津

そっか

朝起きてプレゼントを探すだけが

クリスマスじゃなかった

私はサンタさんじゃないけど

プレゼントを渡す側になるのも

なかなか悪くないかも

いつもなら重いこの足取りも

今日はとても軽かった

久しぶりにケーキ屋さん

寄って行こうかな

この作品はいかがでしたか?

1,011

コメント

2

ユーザー

あかいとまとさん いつもありがとうございます〜!! はにわストラップは昔描いた絵が元になっています笑

ユーザー

千津、いい人ですね(*´∀`) いいお話なのに、はにわストラップで笑ってしまいます😆

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