クリスマスって
わくわくする
あ、でも
〝わくわくした〟
の方が正しいのかも
別にクリスマスが嫌いなワケじゃない
小学生の頃とか
中学生の頃のような
あの頃の
夜が来るのが楽しみで仕方なくて
大きなクリスマスケーキとか
少し特別なフライドチキンの芳ばしい香りとか
朝目覚めて
プレゼントを見つけた時のドキドキするような
そんな気持ちを
忘れてしまっただけ
でも
大人になった今でも
クリスマスになると
何か起こるんじゃないかなと
期待をしてしまう自分がいる
«12月24日»
千津
会社から出た瞬間
喉も凍るような冷たい空気に襲われた
千津
千津
千津
千津
凍った手のひらを頑張って擦ってみるけれど
あまり意味がなかった
千津
大通りは青色や白色のイルミネーションに飾られていて
少し眩しくも綺麗だった
とは思いつつも
企画ボツの怒りがふつふつと込み上げてくる
千津
〝火を吹くはにわストラップ〟
デザイナーの駆け出しではある
でもそれなりに頑張った
頑張ったつもり
実費で立体化もしてみた
でも部長に見せた途端に
「こんなぶっ飛んだものが売れるか!!!」
と怒鳴りつけられた
千津
千津
口を尖らせながら大通りを歩いていると
どこからか
「ジングルベール♪ジングルベール♪」
と聞き慣れた音楽が流れてくる
千津
千津
軽やかな曲から逃げるように
大通りを駆け足で抜けていく
期待通りに音楽が離れていったけど
代わりにクリスマスっぽくないものが聞こえてきた
千津
小学4年生くらいの女の子が
道の端で目を真っ赤に腫らしながら泣いていた
その周りを大人達は
知らんぷりで通り抜けていく
千津
一瞬してしまったしかめっ面を笑顔に変えて
女の子に声を掛けに行った
千津
女の子は、はっとした表情をすると
私の右腕の端を握り締めてきた
女の子
続きを言いたいようだったけれど
嗚咽が酷くて言葉にならない
千津
うんうん、と必死に首を振る
千津
千津
千津
冷たくなったハンカチをコートのポケットから出して
少しゴシゴシと摩擦熱をつけてから涙を拭ってあげた
千津
千津
女の子
『ガゴンッ』
女の子
千津
近くのベンチに2人で座って
両手をちょっとずつ温めながらココアを啜った
千津
女の子
女の子
千津
千津
女の子はわぁっと明るい表情をすると
「うん!」と元気な返事をしてくれた
千津
スマートフォンを取り出して
迷子の子を探しに行きそうな所を調べてみる
ケーキ屋さん、スーパー、デパートの迷子センター...
千津
千津
スマートフォンの画面を見ながら尋ねてみる
が
返事が返ってこない
千津
横を見ると女の子が
私のスマートフォンをじっと見つめていた
千津
女の子
女の子が指をさしたのは
〝火を吹くはにわストラップ〟だった
立体化した物の1つを自分のスマートフォンに付けていたやつだ
なんだか恥ずかしくなってくる
千津
千津
女の子
千津
女の子
千津
なんでだろう...
え、なんでだろう?
女の子
千津
女の子
千津
女の子
女の子
千津
千津
女の子
女の子は想像以上にしゅん...と落ち込む
千津
千津
女の子
女の子
バックに入っていた予備のはにわを (予備のはにわってなんだろう)
女の子に手渡した
女の子
女の子
女の子
千津
部長よりもなかなか見る目があるなぁ...
という言葉は飲み込み
女の子の言っていたお母さんを最後に見たデパートへ
ココアで温まった手を繋ぎながら
2人で向かって行った
女の子
女の子のお母さんはデパートの受付嬢の人と話していた
だぁーっと女の子は走っていき
お母さんに思い切り抱きつく
女の子とお母さんはぺこりと頭を下げてお礼を言ってくれた
その2人を手を振って見送ると
私も曇った夜空を見上げながら家路に帰る
何故かは分からないけど
大人になってから今までで
一番クリスマスに近づいた気がする
千津
思わずうーん...と唸ってしまう
千津
千津
朝起きてプレゼントを探すだけが
クリスマスじゃなかった
私はサンタさんじゃないけど
プレゼントを渡す側になるのも
なかなか悪くないかも
いつもなら重いこの足取りも
今日はとても軽かった
久しぶりにケーキ屋さん
寄って行こうかな
コメント
2件
あかいとまとさん いつもありがとうございます〜!! はにわストラップは昔描いた絵が元になっています笑
千津、いい人ですね(*´∀`) いいお話なのに、はにわストラップで笑ってしまいます😆