この世は 綺麗で溢れている。 美しい空 美しい景色 人々の楽しげな声 鳥達が楽しそうに泣く囀り。
あっちの世界が羨ましい。 そう何度思った事だろう。
美しく明るい世界へ 這い上がれなくて ドロドロで、 血まみれた世界へどんどん 引きづり降ろされた話。
この手は真っ黒で汚らわしいのに 幸せになってしまった話。
蘇枋
蘇枋
右目に黒い眼帯を付け、 年代物のタッセルピアスを しゃらりと揺らし 姿勢よく立つ とても容姿が整っている男は 不満そうに自分の上の者に 声を掛けた。
ミステリアスなオーラを放つ この男___ 蘇枋隼飛は、 この業界では中々の有名人らしい。
生まれ持った綺麗な容姿に 腕のよさ そしてこれと言った確かな情報は あまり知られていない。
マフィアであるこの男の 情報と言えば、 どこの組に所属しているのか どんな容姿をしているのか くらいである。 それで尚、容姿の事は、あまり詳しく 知られておらず、 情報としては、 美しい容姿を持っており、 右目に黒い眼帯。 両耳に年代物のタッセルピアスを している。 ただこれだけだ。
自分より権力が 上にある男が そう告げた。 唇の端を少しあげ、 上品、とは言えない 笑い方をした。 この笑い方にこの声が とても嫌いだ。
蘇枋
自分でも思ってない程 不満げな声が出てきた。 慌てて相手をチラリとみやるが 気づいてない様で、 気色の悪い笑顔をしているままだった。
気づかれて居ない事に ホッと胸を撫で下ろしながら、 相手の言葉を大人しく待った。
少し間を開けて やっと放たれた言葉は、 この裏世界ならではの 言葉だった。
蘇枋
蘇枋
元々闇オークションなど 買手も売り手も雰囲気も 全てが気味悪く とても好ましい場所とは 思えない所だ。 それが更に 気味悪い場所になっている らしい。
蘇枋
そして俺が引っかかったのは、 戦いに適している筈の マフィア達が、 次々と商品になっている という事だ。 位等がいくら弱いと言っても マフィアと言うのは そんなにヤワじゃない。
まずまず、そこまで弱ければ 自分の組織にでも 心臓や脳でも撃ち抜かれ 資金の1つにでもされているだろう。
だからこそ可笑しい。 マフィア達が、次々商品に なっている というのが。
蘇枋
蘇枋
蘇枋
蘇枋
目の前の男が言う噂。 この男自身興味は無いし 話すらも聞きたくは無いが、 何故かその噂に着いて 気になってしまった。
気味の悪い笑顔を浮かべる 男が言うには、 オークション会場の スタッフとして、 最近とある男が入ったという。
身長は俺よりも小柄で、 奇妙な見た目をしているらしい。 その男は、 武器を何一つ持たず、 拳だけでマフィア達、 その他に立ち向かうんだそう。
男の特徴について 話し終えた 組織のボスは、 男の異名について 愉快そうに笑った。 俺がどれほど冷たい凍った目で 子の男を見つめているとも知らずに。
蘇枋
蘇枋
この任務を俺に任せたのは、 この組織の中で 高位に立っているのと、 マフィアを生け捕りに する程の実力を持つ 相手に、組織の下っ端達が 勝てるわけない。という判断も あったのだろう。 どちみち、この場で 俺の答えは1つしかないのだ。
目の前の男の笑う顔は 無視して、 静かに下を向いて返事をした。
蘇枋
この場所に来てから 約3ヶ月。 俺はいいように 使われていた。
この奇妙な見た目の所為からか、 名を呼ばれる時はいつも お前か、ゴミ。 まぁ名前にいい思い出は 無いしいいのだが。
他のスタッフ達と会話をするのは どんな奴を捕まえろ。 連れていく。 等の必要最低限の物ばかりだ。 ここの暮らしは とても窮屈に思えたが、 ここを出たとて、 この目立つ髪や目の色 が周りの情報として 広まってしまっているので
さっさと殺されてお終いだろう。 返り討ちにしてやる と思いたい所だが、 流石にマフィアや、 裏組織相手が大勢で 乗り込んでくれば負けるも当然だろう。
それに俺は売られた身だ。 ここから逃げたら、 ここの場のスタッフ達や この会場に参加するであろう 者達にも追われるであろう。
扱いは酷い物だが、 一応ここの戦力、 売上貢献として 買われたのだ 逃げればそりゃあ追いかけられる。
だから俺は、 何も思わない事に決めた。 理不尽だと何かを思い 口に出しても それらは全部無視。 言葉の代わりに帰って来るのは 全て暴力だった。
縛られ動きを封じられ、 動きが鈍くなる様な、 動けなくなる様な 薬を飲まされた。
あれだけは本当に勘弁だ。
いくら慣れてると言っても 見世物にされるように 大勢で殴られるのは さすがに精神的にも 体的にもくるものがある。
もうあんな目に合わない為にも、 何事もなく過ごす為にも、 俺も必要最低限話すのも 信用するのもやめた。
こんな世界、 糞だらけだ。
暗い廊下に 1人歩いていると 組織から支給されたスマートフォンが 明るく光った。
あぁ、今日もまた、 糞みたいな俺の 始まりだ。
俺達には眩しすぎる暗いの 子供の笑顔や、 大勢の人の声に 呑まれながら、 俺はスマートフォンを再度確認した。 表示されたメッセージには、 「マフィア幹部、蘇枋隼飛を捕まえろ。」 の素っ気ない一文。
桜
桜
桜
桜
1人スマホを見てブツブツと呟く。 今まで学等受けた事が無く、 難しい漢字や、計算等が 出来ない。という欠点が疎ましく思える。
桜
名前だけ送られたスマホを じっと見つめ 舌打ちを1つ零した。 明らかにこの広い世界で、 一人の男、 ましてやマフィアなど、 見つけられる訳がない。
こんな無理難題は、 何度もあったが、 さすがに今回のは難易度が 高すぎる。 マフィアの幹部だと? 流石に巫山戯てるだろ
自分の顔が見られぬ様、 フードを深く被る。 取り敢えず行く宛もないので、 フラフラ周りを歩き回る事にした。
桜
こちら側の人間が居そうな場所を 手当たり次第に歩き回った。 だが、どこも外れで、 やはり何かしらの情報が 欲しいと思った。
情報屋を雇えば、 このスマホに書かれている名前の 男のよく行く場所、特徴ぐらいは わかるだろう。 だが組織は俺にそんな金を 使いたくないらしい。 だから毎回メッセージに書かれる 内容は、薄っぺらく 極端な物ばかりだ。
桜
ここからどうしようかと 悩み立ち尽くす。 この場に留まるだけでは 狙われるだけだと言うのに。
桜
音も無く、 俺の背後に立つ男に 唯ならぬ雰囲気を感じとった。 物音は一切無く、 この俺でも気づかない程だ。 反射的に振り向き、 容姿を確認すると、 風に吹かれたピアスが ジャラリと揺れ、 右目に眼帯を付けた 不思議な雰囲気を漂わす男が 立っていた。
男の声は、 とても柔らかく優しそうで、 とても敵意がある様には 思えなかったが、 この場にいる。 ということはこちら側の者なのだろう。
桜
蘇枋
桜
あまりにも長い言葉に 思わずキョトンとしてしまう。 俺の様子をみてか、 目の前の男は クスリと楽しそうに笑った。
蘇枋
フードの隙間から見えた深く赤い瞳が、 じっとこちらを見つめてくる。
蘇枋
蘇枋
俺が警戒心をむき出しにしていると、 またもや男が笑った。 貼り付けた様な 胡散臭い笑みだった。
桜
蘇枋
蘇枋
特徴を聞いた瞬間に分かった。 こいつが探しているのは俺だと。
きっと気づかれてしまえば、 俺はこの場で殺されてしまうだろう。 自分より明らかに格上の相手。 自分が殺されてしまう風景が 脳を過り、 変な汗が出てきた。 フードをもう一度深く被り直し、 男に返事をする。
桜
蘇枋
蘇枋
蘇枋
蘇枋
本当に残念そうに眉を下げる男 だが俺は男の表情よりも 気になった言葉があった。、
俺が"目の前にいる男を 探している" という事だ。 この言葉に俺の頭は 混乱状態に陥った。
どういう事だ? 俺がこいつを? 何かの間違いじゃないか? 思考はぐるぐる回り出す。 それでも言葉を出さないと 怪しまれるので、 訳が分からないまま 男に喋りかけた。
桜
蘇枋
桜
蘇枋
蘇枋
桜
男の笑顔は どこか笑ってない様な気がした。 そこらの一般人が こんな怖い笑顔を向けられれば 腰を抜かすだろう。
蘇枋
蘇枋
桜
蘇枋
なぜこんなに楽しそうに笑うのか こちらの世界に居て どうして明るくいられるのか 俺には理解できない程に 笑い声はとても楽しそうだ。
蘇枋
蘇枋
桜
俺がお前を? そう言いそうになるのを 寸前で止めた。 にしても、俺に殺されたい為に 俺を探そうとしているだなんて、 はた迷惑な奴だ。
桜
蘇枋
桜
蘇枋
桜
蘇枋
桜
蘇枋
蘇枋
フードの隙間から見えた にっと笑う男の顔は、 年相応の少年の様な顔に見えた。
桜
蘇枋
淡々とそう告げる男は、 笑っている様で 笑っていない。 どこか冷たい目で辺りを見ていた。
桜
桜
バレてしまっているならば さっきの気になった点を 聞いてしまおう。 そう口を開いた。 「俺はお前なんか知らない」 そう全て言葉を紡ぐ暇は 与えられず、 目の前の眼帯をつけた男が 静かに口を開いた。
蘇枋
蘇枋
桜
うーんと考えてもみるが 名前に身に覚えがない。 いくら考えたって 何も思い浮かばなかった。
蘇枋
桜
蘇枋
ビックリして深く被って 居たはずのフードは すっかり無くなってしまい、 両思いというワードで 真っ赤になってしまった顔を 見られた。
桜
蘇枋
桜
桜
もしかしてと思い、 スマホのトーク画面を開いた。 そこに写し出されたのは 「蘇枋隼飛」という 難しい漢字が並んだ言葉
桜
蘇枋
桜
蘇枋
蘇枋
桜
蘇枋
目の前の強敵に ブルりと全身が震えた それでもやらなきゃやられる。 それがこの世界だと 自分の心を落ち着け 両手を静かに構えた
蘇枋
目の前の男は 戦闘の意思はないといわんばかりに、 パッと両手を広た。 たしかに表情や 雰囲気からも 戦闘の意思は感じられない。
それでも油断することなく 相手を睨みつけた。
蘇枋
桜
蘇枋
桜
睨みつけていた筈の目は 大きく見開かれ、 戦闘体制を取っていたはずの 体は、びっくりしすぎて 体制を崩していた。
蘇枋
桜
桜
蘇枋
蘇枋
先程までのおちゃらけた 雰囲気とは違い 男の目は真剣そのものだった。
その眼差しを真に受け、 ゆっくり唾液を飲み込んだ。
桜
桜
蘇枋
蘇枋
桜
桜の顔は、 今すぐ噴火してしまいそうなほど 真っ赤だが、 蘇枋は楽しげな雰囲気で じっと両手を上げながら 笑っていた。
蘇枋
蘇枋
この世界を抜けられるかもしれない。 その言葉を聞き、 桜の心は一気に 揺らいだ。
もしかしたらこんな世界から 逃げられるかもしれない 抜け出せるかもしれない。 この男と一緒にいれば。
桜
桜
甘い誘惑に 乗ってしまいそうになったが、 自分の思考を働かせ よく考えてみた。 逃げたとて どこまでも追いかけられる。 この行為は無駄なことなんじゃないかと
蘇枋
蘇枋
蘇枋
桜
蘇枋
桜の返答に 蘇枋はお利口だと 言うように目を細めた。 まるで自分のぺっとでもみるようだ。
蘇枋
蘇枋
きっとこの男は わかって言っているのだろう。 桜がどれほど不利な状況にあるかを。 自分より明らかに強いマフィア それをいけどりにして 連れていかなければならない。 そして桜には武器がない。 武器を使って相手を痛めつけるのは 一方的でかっこ悪いと思ったからだ。
この男は2つの選択肢を出している様で 結果は全て1つに搾っていた。 ずるく計算高い男だ。 きっとこの男のこういう所に 殺された物は、 何百といるだろう。
桜
蘇枋
俺の返答に男はホッと 胸をなでおろし 優しく笑った。 この返答を待っていたと 言わんばかりに。
蘇枋
桜
蘇枋
蘇枋
桜
一度決めてしまった事だ。 もう変えられないし 変わらない。 ターゲットであるはずの男と 一気に距離が近ずいた気がした。
蘇枋
蘇枋
桜
蘇枋
桜
桜
蘇枋
桜
柔らかく微笑む笑顔に、 ダメだと分かっていても 少しづつ溶かされている感覚がした。 じっとこちらを まっすぐと見つめてくる 蜂蜜を紅茶に混ぜた様な 甘い瞳。 それだけ期待した眼差しで 見られてしまえば、 言葉に出さなければと 思ってしまった。
桜
蘇枋
蘇枋
桜
桜
柔らかく返された言葉を つい突っぱねてしまった。 恐る恐る蘇枋の 様子を伺ってみるが 柔らかく微笑むだけで 起こっている様子はない。
蘇枋
この言葉にブラッと全身が 赤く染った まるで桜色の様に。 収まりきったはずの熱は、 何度もぶり返し 桜の全身を 染め上げた。
蘇枋
桜
蘇枋
蘇枋
蘇枋
桜
桜
今まで散々咎められてきた容姿。 それらをみれば 1目でわかる。 自分はどこからどう見ても 美しくもないし 綺麗でもないと。
蘇枋
蘇枋
これからの明るくも なんともない未来を 思い浮かべて 蘇枋は目を細めて笑った。 その顔は俺なんかよりも 桜の花言葉が合うなと 思った。
桜
蘇枋
桜
少しムスッと 頬を膨らませ 問いかける。 それでもこの男 蘇枋隼飛は動じない。
蘇枋
桜
この言葉を聞くだけでも既に 真っ赤になっている自分 蘇枋の花言葉は、 一体どんなものなのだろうか。 気になるには気になるが、 知ったところで得は無いだろうと 考えるのをやめた。
蘇枋
蘇枋
桜
蘇枋
蘇枋
桜
蘇枋
2人の裏世界の人間は 突如として姿を消した。 とある場所を最後に…だ。
暗いこの場所から… 世界から 抜け出すかの様に 出口に向かって歩いて行った。
これから始まるであろう 明るくも ドロドロで もう綺麗にはならない 自分達への生活に 何一つ不安はないかの様に
こちらの世界で残ったのは ハナズオウの 花言葉ただ1つだけだった。
甘い蜜に絆されて。
ℯ𝓃𝒹
コメント
17件
凄く素敵なお話でした! 蘇枋隼飛の漢字が読めなかったり、「レオナルド・ディカプリオ」だと名乗られた時に困惑している所は闇オークションのスタッフらしからぬ行動だけど、桜っぽいなーとも思いました! 闇オークションのスタッフはポーカーフェイスなイメージなんですけど、桜は顔を真っ赤にさせて、凄く可愛らしいなーとも思いました! お2人が末長く幸せになる事を願ってます!笑 素敵な作品をありがとうございました!
マフィアの2人最高すぎました………
今回も素敵なお話ありがとうございました🙇♀ 視聴者の皆様、そしてどっかの誰かさんの想像力が豊かで尊敬します✨ マフィアパロ、私も大好きなので見れて嬉しいです😊 本当に素敵な企画ありがとうございました! これからも頑張ってください、応援してます💕