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故旧忘れ得べき

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故旧忘れ得べき

第28話 - ムルソー編

101

2024年06月27日

#文スト

#nmmn

#新連載

紫響☁🕊‎@通りすがりの変人

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101

紫響☁🕊‎@通りすがりの変人

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故旧忘れ得べき
#28 ムルソー編 / 紫響☁🕊‎@通りすがりの変人

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今回は

ムルソーです

正直書きたくない

だって確認したら8冊分あったんだもの

正直面倒臭い

けれどまぁ妹の頼みだ

受けてやろうと思って

しかしこちら最新刊のネタバレを含みます

それでも大丈夫だという方はご覧下さい！

あと誤字は許して！

それではどうぞ！

条野

1着は何番の馬でした？

太宰

9番だよ

高見

ん？

条野

どうも

条野

あなた方当てましたね？

太宰

おや、判るのかい？

条野

えぇ、発汗、体温、筋肉の音、光を失ってかえって見えるものが増えましたよ

高見

凄いねぇ

高見

俺達には判らないことだ

条野

あなた方の明日の運命も当てられます

太宰

本当に？

高見

それはすごい

条野

えぇ

条野

あなた方に明日は来ません

条野

元マフィア幹部太宰治

条野

共謀殺人138件、恐喝312件、詐欺その他625件

条野

高見順、共謀殺人127件、恐喝285件、詐欺その他539件の犯罪容疑で

条野

逮捕する

高見

わぉ

太宰

やられたね

太宰

追跡には気づいていたが...あの『猟犬』部隊が相手では人混みに逃げ込んでも無駄か

高見

だから競馬なんて連れてきたのかい？

太宰

さぁ？どうだか

高見

教えてくれてもいいのに

条野

群衆に逃げこめば、群集ごと消すだけです

太宰

...

高見

凄いねぇ君

条野

ふふ...聞こえます貴方の憤り

条野

いずれそれが罰への恐怖へと堕ちる...その瞬間が待ち遠しい

太宰

...君とは気が合いそうだね

高見

俺は絶対合いたくないけれどね

太宰

ひとつ教えてくれ

太宰

なぜ今頃私達を逮捕しに来た？

条野

ある時、急に証拠が復活したのです。指紋、録音、写真...

条野

まるで消された照明のスイッチが再び灯ったように

高見

へぇ？面白いことを言うね君

太宰

暗殺は阻止したよ魔人さん

フョードル

あぁ、そう来ましたか

太宰

こんな場所で退屈だろう？

太宰

話し相手になってやるよ

高見

やぁ、俺もいるよ

フョードル

...探偵社を救うためにわざと捕まったのですね？

太宰

君の策略を見抜くにはここに座るしかないからね

フョードル

外の仲間とはどうやって連絡を？

太宰

もちろん秘密だ、君と同じくね

フョードル

こんな地下でチェスの相手に恵まれるとは

高見

それなら俺が審判してあげよう

太宰

勝負だ、ドストエフスキー

フョードル

ふふ、その前に

太宰

？

フョードル

何故高見君が太宰君と同じ部屋なのですかｯ！？

太宰

えぇ............

高見

さぁ？どうしてだろうね

太宰

私は高見と同じで嬉しいよー！

高見

やめろくっつくなｯ！！

フョードル

クソｯ！どうして別々では無いのですかぁ！？

フョードル

おかしい...っは！！これが猟犬の策略...！？

高見

...フョードル変わったねぇ？

太宰

ここに幽閉されすぎておかしくなったのかもしれないね

フョードル

こうなったらもうあれしかありませんね

高見

ん？

太宰

？

フョードル

うきうきお悩み相談かーい

太宰

.........

高見

.........

フョードル

というわけでやって参りました第一回うきうきお悩み相談会、司会は僕ドストエフスキーが

太宰

はい待ち給え一旦待ち給え

フョードル

何です？

太宰

何が？

フョードル

何って何が？

高見

.........

太宰

ああ...相談ね

太宰

確かにこんな機会でもないと無理か

フョードル

素早いご理解感謝します

高見

君たちは多分頭がおかしいのだね

フョードル

我々は持ち前の頭脳のおかげで相手の思考を読めます。が、

フョードル

それ故に『相談』という行為を他者に行いえません

フョードル

相手が自分と同等の頭脳を持たない限りは...

フョードル

なのでこの機会に悩みをぶつけ会おうという趣旨です

高見

面倒臭いねぇ君

フョードル

なんとでも言ってください

フョードル

僕は高見君になら何を言われてもめげません

高見

............

太宰

じゃ、先に君から

フョードル

『僕の部下は指示待ちばかりで自主性に欠けます。どうすれば自ら動く優秀な部下になるでしょう？』

太宰

ふむ......

太宰

『毎日何もせずぐうたら怠けていればこのままでは拙いと思った部下が勝手に努力し出すでしょう』

フョードル

なるほどぉ〜〜〜

高見

莫迦だね君たち

太宰

次は私

太宰

『喫茶店の女給さんを口説いても靡いてくれません、どうすればいいでしょう？』

フョードル

職と住居を失わせ家族を騙して離縁させれば向こうからあなたに縋り付くでしょう

太宰

なるほどぉぉ〜〜

フョードル

ははははは

太宰

ふふふはふ

高見

はぁ...もうお家帰りたい...

監視官

なんなんだこいつら

監視官

その3人は犯罪史に残る悪魔だ

監視官

一言一句聞き漏らさず見張れよ

監視官

頭どうにかなりそう

フョードル

では、次は同時に質問しましょう

太宰

いいとも

『外部との連絡方法か知りたい』

太宰

...

フョードル

...

高見

ふふ

フョードル

やはりそれですか

太宰

当然だ、相手より先に連絡手段を見破れば外の仲間に頼んでその連絡手段を絶てる

太宰

つまり勝利だ

太宰

ちなみに高見はわかる？

高見

分かってたまるか

太宰

だよね！

フョードル

僕の連絡方法は見破れませんよ

フョードル

高見君になら言ってもいいですが、その場合天人五衰として攫います

高見

怖

太宰

見破るさ、その為に来た

太宰

くくくく

フョードル

はははは......

高見

はぁ.........

高見

君たちそんな話ばかりで俺飽きてしまうよ

太宰

高見はもうわかってるくせに

フョードル

へぇ？そうなんですか？

高見

そんなことよりチェスをしよう

太宰

話変えたね？ねぇ高見？

太宰

言う事聞かないならここでもう犯してしまってもいいのだよ？？

フョードル

やめてください

太宰

君に言ってないのだけれど

高見

いや切実にお断りする

太宰

何故ｯ！！

高見

ほらチェスしないのかい？

フョードル

しかしチェスは二人でやるものですよ、余った太宰君はどうするんですか？

太宰

どうして私が余る前提なのだい？？

高見

君たちでやればいいさ

高見

同じ頭脳の持ち主同士楽しみ給えよ

太宰

高見はどうするのだい？

高見

全て見破ってあげるよ

太宰

ははっ、面白いね

フョードル

では、やりましょうか

フョードル

キングをＥ７からE6へ

太宰

ふむ、君らしい手だ、根性が悪い

フョードル

ええ、悪意こそ神が人に与えた最高の果実です

太宰

頗る同意見だね、クイーンをE2からＣ４へ

フョードル

クイーンを戦場に？大胆ですね

太宰

君が相手ではね、使える駒は全部使わねば

フョードル

あなたのクイーンはモンゴメリさんですね？

太宰

まぁ、読まれているとは思ったよ

太宰

このチェスの盤面は天空カジノ

太宰

しかし探偵社員は公衆の場には出られない、だから『猟犬』に出入り口を爆破させた

高見

............

太宰

質問がある

太宰

たぜシグマ君を『砦』...カジノの守護者に選んだ？

フョードル

なんの話しでしょう？

太宰

惚ける気かい？つれないじゃないか

太宰

盤面はもう動きだした、つまり我々が出来るのは暇つぶしだけ...そうだろう？

太宰

それとも雑談は気は嫌いかい？

フョードル

...いいでしょう、ですがまずは

太宰

先に私の手札を晒せ？いいとも

太宰

実はシグマを掘り下げた所面白いことがわかってね、彼には過去がない

高見

ほぅ？成程

太宰

世界中の異能情報機関を当たったが記録無し、彼の人生は3年前、欧州警察に逮捕された記録から始まる

太宰

まるで途中から始まっている小説のような男だ

太宰

どうにかわかったのは彼の異能だけ『触れることで相手と己が最も知りたい情報を交換する』能力

太宰

種田長官から『頁』の情報を抜き取った能力だ

太宰

だが逆に言えば彼が必要なのはその一瞬だけ、私ならテロ計画の前線から退ける、何故未だカジノにいる？

フョードル

さて......あなたの考えは？

太宰

...私の考えでは、シグマはそもそもテロリストでは無い

太宰

と、高見と話していて気づいた

高見

俺と？

太宰

この間天空カジノの話をしただろう？

高見

そうだね、13年前に戦勝国による秘密会議で設立が決まったとされているらしいけれど...

太宰

では誰が如何なる思惑で決定したか？建築技術は？資金源は？

太宰

どんな情報機関にも情報がなかった

高見

調べたのだね

太宰

頑張ったのだよ？

太宰

それで気づいた

太宰

設立経緯は極秘ではなく、｢そもそも存在しない｣のではと

太宰

天空カジノが建造されたのは13年前じゃない

太宰

八日前だ

フョードル

............

太宰

8日前に『頁』に書き込まれ一瞬で現れた、13年分の歴史と共にね

太宰

作った目的は2つ、次なるテロの拠点とするためと、シグマに異能を使わせる代金として渡すため

太宰

.........全く無駄がないね

フョードル

我々のボスは無駄が嫌いでして

フョードル

さて.........楽しいお話をどうも、次は僕の番ですね

フョードル

...

高見

そうだねぇ

太宰

βfル號192з34GNa？

フョードル

j¿ω............88△σヲN✝

高見

αAЙЖナQｐ濟４Σ642¿

監視官

くそ

監視官

さっきから何を話しておるのだこいつら！

監視官

警備長！本国から囚人の会話の解読結果が届きました！

監視官

おおようやくか！

監視官

ばかな！こんなことが可能なのか！！

監視官

三人は過去に互いが会話した内容を全て暗記しており

監視官

その会話、単語を番地のように指定することで、3人だけに通じる番号を即席で作っていると推測される...

監視官

即席で！？では...解読は

監視官

きまっているだろう不可能だ

監視官

怪物共め......！！

フョードル

確かにシグマはテロリストではありません

フョードル

己が何者かすら分からない彼は居場所を欲した、それがカジノです

フョードル

だからこそカジノを守る為ならば、地獄の執念で猟犬すら焼き尽くすでしょう

フョードル

何故なら、この世で最も恐ろしいのは、必死になった凡人なのですから

太宰

そんな説明で私を騙したつもりか？

フョードル

！

太宰

記憶が無いからシグマが強い？それなら行きつけの喫茶処のおばちゃんが最強だ

太宰

いつも私の注文を忘れる

高見

それ関係あるかい？

太宰

ううんないよ

太宰

いいか、幾らシグマの覚悟が深かろうと、猟犬とでは｢格｣が違いすぎる

太宰

正面衝突は自殺行為だ、何が狙いだ？

フョードル

｢格｣？

フョードル

格というなら格下なのは猟犬の方です

太宰

！？

フョードル

猟犬だけではありません、この世の万象、僕やあなたでさえシグマとは比べ物にならない

フョードル

シグマはこの宇宙の異物、なぜ彼があれほどカジノに執着するか分かりますか？

フョードル

孤独です

フョードル

彼の欠陥には悲しみの音楽が流れている、シグマはこの世界の究極の異邦人

太宰

！？

フョードル

そんな彼にとってカジノは唯一己と同じモノ、だから失うわけにはいかない

太宰

......真逆

フョードル

その通り

フョードル

シグマは3年前『本』の書き込みによって生まれました。無から忽然と

太宰

.........莫迦な、そんなものが本当に人間と言えるのか？

高見

少なくとも、『頁』に書かれた事柄が分からない限り、俺たちに勝ち目は無い...

高見

それなら尚更だね...

太宰

.........何て奴だ

フョードル

ぼく？僕は何もしていません

フョードル

僕はここに座って祈っただけ、祈りは神に通じるのです

太宰

効果爆弾、テロすらも囮か、猟犬と探偵者を同時にカジノへ呼び込むための......

太宰

何のためだ？

フョードル

その方が美しいでしょう？

高見

美しい...ねぇ

太宰

ははは

太宰

くはははははははっ！

フョードル

！

太宰

ははははははは！

太宰

君は神について何も分かっていないね！

フョードル

...........................聞きましょう

太宰

｢完璧と調和｣？そんなもの神は毛穴ほども気にしちゃいない

太宰

何度も見てきた。あいつの売りは偶発と不条理だ、それが...我々二人に共通した弱点だよ

高見

.........

太宰

幾千の神算鬼謀を巡らそうと我々が居るのは結局ここ、ちの果の牢獄だ

太宰

実際に世界を回すのは偶発性の嵐の中で叫び、走り、血を流す者達

太宰

その魂の強度の前に君も私も立ち竦むしかないのさ

太宰

それがどういう事か...判るかい？

フョードル

............

太宰

君の言う通り人間は罪深く愚かだ

太宰

だが、君が考えるほどつまらない存在じゃあない

高見

ねぇさっきの話、俺含まれてるかい？

太宰

？なんの事？

高見

共通した弱点、2人と言ったよね？

太宰

あぁ、高見に弱点なんてあるわけないじゃない

高見

...そういうことでなくて

太宰

なぁに？仲間はずれにされたと思ったのかい？

高見

死にたいのかな？

フョードル

私を抜いて2人で話さないでください。不愉快です

太宰

仲間はずれなのはドストエフスキーの方だったね

フョードル

............ﾆｺﾆｺ

高見

わぁ怖い

高見

というかお腹すいたのだけど

太宰

確かにねぇ

フョードル

料理はどうやって運ばれてくるのでしょうか？

高見

さぁ？

高見

〜〜〜〜〜っ！！

高見

びっくりした！！

太宰

こうやって運ばれてくるのだねぇ

フョードル

驚きです

高見

はぁ、もう動けない

太宰

弱くないかい？

高見

弱点は俺になかったのではなかったかな？

フョードル

............

太宰

.........何かさ、上が騒がしくない？

フョードル

...有り得ませんりここは隔離された異能空間ですよ？

太宰

ふうん...

太宰

...高見塩持ってる？

高見

いーや持ってない

太宰

......塩がない、ねぇ塩取って

フョードル

......どうぞ

ゴンッ

高見

......

太宰

...

フョードル

............卵がありません、そちらにありますか？

太宰

...高見持ってる？

高見

あぁ.........

太宰

......

ベシャｧｯ

太宰

...

フョードル

......

高見

.........莫迦なのかな

太宰

.........はぁぁぁぁ〜！

太宰

もうこの部屋も飽きたなぁ！！

フョードル

なぜ朝食に生のままの卵が...

高見

そこ？気にするとこそこなの？

太宰

最初こそ愉快だったけど、君との雑談も大凡し尽くしたし............

太宰

そろそろ｢あれ｣をやる頃かな

フョードル

............あれとは？

太宰

あれって言ったらあれだよ勿論...

太宰

ぅぅ、ご馳走様

太宰

はい食器宜しく、次は蟹料理で頼むよ！

フョードル

あれとはなんです？

高見

まだ聞くか

フョードル

えぇ答えてくれるまで

高見

.........

太宰

...どちらかが死ぬ

フョードル

！

フョードル

それは素晴らしい案ですね

太宰

だろう？地上は世界の終わりの大騒ぎなのに我々3人だけ最後まで生き残ったら滑稽だよ

高見

それ俺は？俺もだよね？？

高見

俺も君たちと遊びたいのだけれど

太宰

高見は死んではダメだよ

太宰

私と心中するのだから

高見

なんだいそれ初めて聞いた

太宰

まぁまぁ、で？どうだい？

フョードル

全く同意見です

フョードル

ではそろそろ脱獄＿＿

太宰

？

太宰

......ドストエフスキー？

太宰

...流石にそれは行動が早すぎ＿＿

高見

え？だざ＿＿

ドッ

太宰

痛っ！！

太宰

ったぁぁぁ〜〜！！

高見

う"わぁ！？

ドッ

太宰

ヴｯｯｯ！！

ニコライ

ハハハーハ！

ニコライ

箱抜け奇術大成功だ！！

シグマ

......

ニコライ

推論通り！『触れた凡百異能を無効化する』＿＿逆に言えば！

ニコライ

転送局面にさえ触れなければ空間接続は可能ということだ！はい助手！大拍手！！

シグマ

誰が助手だ！そんなことより、3人に状況を説明しなくていいのか？

ニコライ

あぁ〜大丈夫大丈夫！だって＿＿

太宰

.........

フョードル

......

高見

...............

太宰

...成程ね

フョードル

そういう事ですか

高見

面白いことをするねぇ君

ニコライ

ほらね？

シグマ

......

太宰

空間接続の異能者ゴーゴリ、先程の上の騒ぎは君が侵入した所為だね？

フョードル

そして異能で僕たちを監房から出した...目的はなんです？

高見

あの顔を見れば明らかだけれど...

ニコライ

あああ我が親友！会いたかったよ！！

フョードル

！

ニコライ

君の無事をしれて胸が張り裂けんばかりだ！私がなぜ来たかって？そんなもの決まっているだろう！

太宰

...

フョードル

...

高見

ははは...

ニコライ

君をぶち殺す為だよ

フョードル

......

太宰

...ワオ

シグマ

...

高見

あぁ......

ニコライ

親友を救いたいと願うこの情動は実に揺るがしがたい！故に不退転の意思でそれを打破する！

ニコライ

それこそヒト種の自由意志の証明！！

太宰

.........君いい友達持っているねぇ

高見

友達と認めたくないけれどね

フョードル

.........

ニコライ

だが！だがだが！！

ニコライ

ここで哲学的難問が1つ！！

ニコライ

単に私がドス君を殺してもそれは｢自由意志を証明したがる己の本能｣の発露に過ぎず、動物的感情の照明でしかないのではないか！？

フョードル

.........

高見

......面白いねぇあの子

ニコライ

その問いに脳が千切れるほど煩悶した末遂にひとつの結論に辿り着いた！

ニコライ

｢親友たるドス君の救出｣と｢ドス君への殺意｣を同時に満たす、その妙策を得たのだ！

太宰

？

高見

へぇ

ニコライ

君たち3人には今から脱獄決闘をしてもらう

太宰

.........

フョードル

.........

高見

俺も...？

太宰

ふふ、君本当にいい友達を持っているねぇ

フョードル

でしょう？

太宰

ふふふ、楽しそうじゃあないか

太宰

高見も勿論やるよね！だって私と心中できるチャンスなのだから！

高見

.........君と心中はしないけれど、楽しそうではあるね

ニコライ

安心して！3人分の注射器をきちんと用意しているよ！私ってば何て天才！！

太宰

その注射を打てば30分で死ぬのだね？

ニコライ

そう！全身から血を吹き苦しみながらね！

フョードル

芸術ですね

高見

どこが？

シグマ

.........

ニコライ

勝負は単純！このムルソーから先に脱獄した方が勝ち！

太宰

！

ニコライ

君たち3人にはこの致死毒を注射もらい、先に脱獄した方だけがこの解毒薬を得る

ニコライ

解毒薬は世界にこれ一つ、つまり

フョードル

30分以内に、僕と太宰君、高見君の誰かが死ぬ

ニコライ

んー

ニコライ

太宰君と高見君には申し訳ない話だ、本来私が殺したいのはドス君だけ

ニコライ

だがこうでもしないと彼は毒を１おらなくてね

太宰

なぜ謝るんだい？

太宰

これぞ最高の好機、天の恵みだ

フョードル

確かに、ですがあと30分でチェスの相手を失うと思うと寂しくもありますね

太宰

もう勝つ気かい？

フョードル

それ以外になんの結末が？

高見

若しかしたら俺の一人勝ちもあるのを忘れないで呉給えよ？

太宰

くくくくく

フョードル

くくくく

高見

ふふ、

ニコライ

これより背神の遊戯、ゴーゴリゲームを開始する

高見

面白いねぇこれ

ニコライ

さて！今更だがルールを説明しよう！

ニコライ

君たちが先程収監されていたのは地下層、棄権異能者収容のための異能空間、通称『無限賽室』

ニコライ

今いるのはその上、通常監房の地下第四層だ

ニコライ

それでも地上までの脱出路には世界最高峰の警備機構が待ち構える

太宰

......

フョードル

.........

高見

...

ニコライ

まず、各層の廊下は数十もの｢セル｣と呼ばれる区画で区切られ、通り抜けるには暗証番号が必要となる

ニコライ

隔壁の解錠番号は6時間ごとに変更され、入力を1度でも間違えば永遠に開かない

ニコライ

隔壁の厚さは扉も壁も脅威の120cm！しかも対異能性特殊金属で破壊は不可能

ニコライ

隔壁をぬけてもさらに厄介な｢昇降装置｣がある

ニコライ

情階層にはこの昇降装置で登るしかないが、動かすには掌紋、声紋、網膜、遺伝子認証が全て必要だ

ニコライ

その認証番号は中央制御室に送られ、監視が搭乗員を映像確認してようやく昇降装置が作動する。度から誤魔化しは不可能

ニコライ

お腹一杯かい？まだまだあるよぉ〜！

ニコライ

すべての階層で重武装の警備兵が巡回、警告無しで発砲してくる

ニコライ

彼らの武器にも遺伝子認証が使われていて、奪って使用すれば警報がなる

ニコライ

いやーさすがは私の企画したゲーム！！

ニコライ

100万回死んでも脱出は無理だね！！

ニコライ

あ、いちばん悪い情報を伝え忘れてた！

ニコライ

不審者が見つかると即隔壁閉鎖

ニコライ

10秒後に注水が開始する

太宰

...

高見

ほぅ

フョードル

......

ニコライ

ご丁寧にも普通の水ではなく、同位体元素で構成された重水だ

ニコライ

普通の水より比重が重いため潜って仲を泳げない、おまけに人体に有害で多量に飲むと死ぬ

太宰

！

フョードル

...！

ニコライ

つまり警備に見つかれば、閉じ込められ、魚すらも溺れる水を注がれ、苦悶と後悔の中でもがき死ぬ

ニコライ

勿論！30分経っても注射した毒が君たちを殺す！

ニコライ

どう？泣きたくなってきた？☆

フョードル

ふふふふ...

太宰

くくくく......

高見

はぁ、つまり誰よりも先に出ればいいのだろう？

ニコライ

そういうこと！！

ニコライ

さて！最後はいい知らせだ！

ニコライ

死地に赴く君達に経緯を表し、このゴーゴリから気まぐれプレゼントがある！！

ニコライ

助手！例のものを！

シグマ

誰が助手だ！！

ニコライ

その中から1つだけ持ち出しを許可する

ニコライ

いずれも勝敗を決定しうる強力な武器だ

ニコライ

問題はどれを選ぶか

太宰

成程、勝負は既に

フョードル

始まっているという訳ですか

高見

じゃあ俺これー

ニコライ

お、早いねぇ！

ニコライ

効果爆弾？面白いものを選ぶねぇ高見！！

ニコライ

さて、それではドス君から！！行ってみよう！！

フョードル

......ではこれを

ニコライ

いいだろう、

ニコライ

さぁ太宰くんは何を？

太宰

これがいいね

シグマ

.........私？

ニコライ

ハハハーハ！いいよ君！最高だ！！

ニコライ

それじゃあレッツスタート！！

太宰

高見は私と来るよね？

高見

えぇ、

高見

...フョードルは？

フョードル

私はまだここにいますよ

フョードル

高見君も一緒に待ちますか？

高見

いや、遠慮しておくよ

高見

じゃあ行こうか

太宰

あぁ、行くよシグマ

シグマ

ちょ、おい！！

シグマ

応えろ、なぜ私なんだ？

太宰

〜♪

シグマ

何故あの中から私を選んだ！何を企んでいる？

太宰

私が今何を考えているか判るかい？

シグマ

何？

太宰

まず1つ目〜！

太宰

高見が隣にいる！嬉しい！！好きー！

高見

............はぁ

太宰

2つ目！広い！！

太宰

狭苦しい独房に比べたらまるで舞踏会場だ！

太宰

踊ろう！

シグマ

あのな...そんな事

高見

わぁ〜笑

シグマ

っ、より私を何に利用...っする気だ？ドストエフ

シグマ

スキーをどう倒す？あと止まれ！！！

太宰

止まったよ

高見

わぁ

シグマ

お前...少しは真面目になれ！この時間もドストエフスキーは出口に近づいているんだぞ！

太宰

......それはどうかな

高見

まるで国木田くんのようなことを言うのだねぇシグマ君

高見

フョードルならまだ動いていないよ、どうせね

シグマ

なぜ分かる？

高見

...俺とフョードルが似ているからさ

太宰

嫉妬

高見

何故？？

太宰

もう！ほら高見！！踊ろ〜！！

高見

何故？？？

太宰

嗚呼楽しいなあ！自由っていいなあ！

シグマ

.........勝負を忘れるなよ

太宰

そうだ！ちょっと監獄観光してく？滅多に来られる場所じゃないし！

シグマ

ぉ絵は地獄でも観光していろ.........

太宰

！

高見

太宰

太宰

あぁ

シグマ

？おいどこへ行く

シグマ

そっちは出口ではないぞ

太宰

職員用配膳室に行く！囚人食に飽きたから甘いものが食べたい！

シグマ

は？配膳盆でどつくぞお前

高見

......俺足疲れた

太宰

嘘でしょ高見

シグマ

はぁ、私は一人で行く！

シグマ

お前ではドストエフスキー君には勝てない！それがわかった！

太宰

えー？

シグマ

私には、負けられぬ理由がある！

高見

...成程ねぇ、

太宰

...ふぅん、そういう感じか

太宰

君面白いね

シグマ

は？

太宰

よし！君はここから生きて出すと約束しよう！

シグマ

くっつくな！

高見

えー？俺はー？

太宰

高見はもちろん私と心中＿＿

ズンッｯ

シグマ

......なんだ？上層から......？

高見

.........

太宰

...

シグマ

.........音が納まった？

太宰

侵入者だ

シグマ

何？

太宰

最初のあの騒ぎは君とゴーゴリの侵入が原因ではなかった訳だ、そうと分かっていれば......

シグマ

待て...侵入者だと？何故そこまで断言出来る？

太宰

簡単さ、天使が囁いてくれた

シグマ

天使？何の話だ

シグマ

そもそも侵入者は何者だ？

太宰

ひとつしか有り得ないだろう？

シグマ

ドストエフスキーの手駒か......！

シグマ

これは......

太宰

成程...

太宰

侵入者が誰かわかった

高見

最高だね

太宰

ドストエフスキーめ、厭な手札を切ってきたな

高見

ふふ

シグマ

な............！

太宰

ははは

太宰

これで単純な二対二の構図になった

太宰

こちらは私と君、あちらはドストエフスキーと中也

太宰

二対二だ

高見

まぁなんとかなるでしょう

高見

というか、その中に俺は含まれていないのかい？悲しいね

太宰

だって君も敵じゃあないか

シグマ

え？

高見

.........ふふ

太宰

ま、私は君を信じているけれどね、高見順

高見

あぁ、任せたまえよ太宰治

シグマ

...本当に大丈夫なのか？

シグマ

敵はあの重力使い中原中也、戦闘力は我々より圧倒的に上だ

シグマ

肉挽き機から逃げているのと同じ状況だぞ

太宰

大丈夫さ、この七年間毎日中也を殺す方法を考えてきたからね、それに

太宰

天使も助けてくれるし

シグマ

天使...先刻も言っていたな...もしかしてそれは

シグマ

外部協力者からの助言か？

高見

お

太宰

............3歳にしては鋭いじゃあないか

太宰

確かに私は安吾と連絡をとっている

太宰

私には伝えたい内容を数値化して字分の心拍数でその値を再現、それを体内の検知器に読み取らせ、外の安吾が受け取った数値を解読しているのさ

シグマ

嘘だな

太宰

！

高見

へぇ？どうしてそう思うんだい？

シグマ

少なくとも真実の半分でしかない。その方式には欠陥があるからだ

シグマ

その方式ではこちらから情報を送ることしか出来ない。一方通行だ

シグマ

地上からの情報はどう受信する？

太宰

...いい指摘だ

太宰

もちろん方法はある。ドストエフスキーすら欺く鉄壁の受信方法がね

太宰

当ててみるかい？判れば君はドストエフスキー以上だ

シグマ

む......むむむ.........

太宰

.........

高見

素直だなぁ

太宰

敦君みたい

シグマ

............はっ！

シグマ

クイズ大会を楽しんでいる場合か！時間が無い早く話せ！ドストエフスキーより先に脱獄しなければ＿

太宰

脱獄なんかしない

シグマ

.........は？何を言っている？

シグマ

愈々おかしくなったのか？脱獄しないならどうやって勝つ？

太宰

簡単だよ

太宰

勝負の時間内にドストエフスキーを殺す

高見

今頃フョードルも気づく頃かな...

太宰

何が？

高見

いや、なんでもないよ

高見

行こう

太宰

ムルソーの隔壁は対異能金属、異能自体を吸収する仕掛けが施されている

太宰

中也でも時間内には破れまい

太宰

確かに中也は強い、だから対面せず斃す

太宰

1度閉じた隔壁は絶対に開かない、そして注水の解除方法もない、世界最高の監獄は伊達じゃないってわけさ

シグマ

！？何をしている！？その扉を開けるな！

シグマ

この先の中央制御室はムルソーの心臓部だぞ！中の武装警備に撃ち殺されたいのか！！やめろ！

太宰

もう開けちゃった♪

高見

......

シグマ

......嘘だろ

シグマ

全員倒されている......

シグマ

お前がやったのか！？だが扉は今開けたばかり！1体どうやって...

太宰

時間を止めたのさ

シグマ

...！？

シグマ

待て太宰！時間を止めただと！？ありえない！お前の能力は異能無効化だろう！はぐらかすな！

太宰

このムルソーは危険異能者の見本市だ、古今東西の異能が揃っている

太宰

そんな内に“其奴”は居る

シグマ

？

太宰

異能犯罪者、彼女は世界一の海賊だ

太宰

南米で政府の軍事機密書類を8つ盗んでお縄になった。彼女の異能は面白いよ

太宰

数秒の間自分以外の時間を止める

シグマ

！？

太宰

効果範囲は彼女の周囲数メートル

太宰

そんな彼女と安吾は司法取引をした。彼女波形期短縮の見返りに

太宰

毎朝必ず時間を止める

太宰

安吾に支持された長さと回数だけね

シグマ

............？なんだそれは

太宰

.........

高見

ふっ

シグマ

待てよ...『異能無効化』...！

太宰

その通り

太宰

ちなみに、高見の異能は知っているかい？

シグマ

相手の思惑と反対のことをさせる.........？

高見

そうだよ

高見

だから数メートルの範囲にかけられた異能を、俺だけ避けることも可能ということになる

太宰

つまり、私たちだけは止まった時間の中を動ける

太宰

そして、止まった時間の中を動いて制御室を制圧した

シグマ

............なｯ

太宰

動かない警備員を気絶させるのは寝ている猿を斃すよりも簡単だったよ

太宰

ねぇ高見〜♪

高見

全部倒したのは俺だけれどね

太宰

気にしない気にしない〜

太宰

さて、これで先程の｢宿題｣の答えも出るね

シグマ

...そうか！｢外からの連絡を受け取る方法｣！！

太宰

そう、毎朝の時間停止の長さと回数がそのまま暗号になっているのさ

太宰

そして...判るかい？

シグマ

その方法なら太宰以外には絶対に読み取り不可能...！

太宰

聞こえるかい？ドストエフスキー

太宰

もう時期溺れ死ぬ気分はどうだい？

フョードル

...ぼくは殺せませんよ

太宰

いいねぇその反応、だがどう脱出する？

太宰

異能で脱出しようにも壁は破壊不可能、それに中也の重力は触れたものに発生するから粉末や液体はやや苦手だ

太宰

では君の異能かな？

太宰

だとしたら面白いけど、察するに君の異能はこの状態を敗れるものじゃない

太宰

だからこの罠を選んだ

フョードル

............

高見

ねぇフョードル

高見

俺フョードルに言わなきゃいけないことがあるのだけど

フョードル

っ.........なんですか？

高見

俺ね、フョードルとお別れすると聞いて少し寂しくなったよ

高見

これまで遊んでいた友達を失うような...そんなね

フョードル

...っ

高見

でも、そうだねぇ

高見

ふふ、...俺のために死んでくれるかい？

フョードル

.........えぇ、喜んで死にましょう

高見

ありがとうフョードル

高見

これでさよならだね

太宰

...中也、君ともお別れだ

太宰

こんなことになって残念だよ

太宰

出会ってから7年、君とはいがみあってばかりだったね、でも

太宰

今思えば時には心を通わせた瞬間もあった...例えば＿＿

太宰

ごめん特になかった！それじゃ

太宰

グッド・バイ♪

太宰

あー楽しかった！

高見

これでフョードルの顔を見なくていいと思うと清々するよ

シグマ

しかしこれからどうするんだ？

シグマ

出口に行こうにもカードが無くては出られないのではないんじゃなかったか？

高見

あー、その辺は大丈夫だよ

シグマ

？

高見

まぁ見てなさいって

太宰

あっ！そうだ！じゃんけんしよう！

高見

.........

シグマ

何を言っているんだ、今の状況をわかってて言ってるのなら病院を紹介するぞ

高見

君容赦ないね

高見

辛口の敦君みたい

太宰

いーから！はいじゃーんけんぽん！

シグマ

...！

太宰

ぽん！

太宰

ぽん

太宰

ぽん！

シグマ

.........何故1度も勝てん！？

太宰

はは緊張と間合いだよ

太宰

腕も緊張や視線、動作のまあ出て次の手がわかる

太宰

それに加え、こちらの仕草にさりげなく次の手をまぜて、相手の無意識に次の手を刷り込む

太宰

練習すれば君にもできるよ

シグマ

...お前がカジノの客でなくて良かった

高見

太宰はずる賢いからね

太宰

これで分かったろう

シグマ

何？

太宰

全部小手先の技術だ、私は人智を超えた超人じゃあない

太宰

この世には、超人も凡人も存在しない

シグマ

.........そうは思えない

太宰

なぜそう思う？

シグマ

...答えずともお前ならわかるのだろう？

シグマ

太宰、お前は超人だ

シグマ

たった一人でドストエフスキーを倒した、私など必要なかった

シグマ

なのにあの時、なぜ私を選択した？

シグマ

有用な道具を捨ててまでなぜ私なんかを......

太宰

理由は2つ、1つは国木田君の代役だよ

高見

.........はは

シグマ

？

太宰

私の活躍にびっくりしたり感心したり、引き立ててくれる誰かがいないとつまらないだろう？

太宰

高見は私の手を読みすぎていたようだし

高見

まぁね〜

シグマ

......！触るな！！

太宰

ひょいっ

シグマ

この期に及んでお前はまた適当な......！！

太宰

国木ぃー田君は元気かなぁ〜〜〜〜

高見

莫迦

シグマ

......わかった、こういうことだろう？｢私には真実を話すほどの価値すらない｣

太宰

.........

高見

...

シグマ

............

太宰

...違うよ、なんに説明しても君にはわかるまいと思っただけさ

太宰

何故ならば君は、天人五衰を始め、凡百組織に利用され続けてきたから、そんな君に理解は難しい

太宰

.........が、まぁひとつ試してみるかい？

太宰

その前にひとつ確認だ、君の異能は死体からでも情報を引き出せる

太宰

そうだろう？

シグマ

あ.........ああ

シグマ

死後間もなければ...

太宰

矢っ張りね、君を選んだ理由はそれだよ

高見

ドストエフスキーの溺死体から今後の計画を読み取って欲しい

シグマ

......！

太宰

ドストエフスキーの異能はおそらく、触れたものに発動するものだ

太宰

だが死んだ今なら問題なくやつに触れられる

太宰

やつの死体から今後の計画を抜き取り、空港にいる探偵社を助けなくてはならない

シグマ

.........空港？探偵社？

シグマ

では私を選んだのも、ドストエフスキーを脱獄前に殺す戦略を取ったのも

シグマ

全ては探偵社を助けるため...？

太宰

あ、これでも探偵社の禄を食む身だからね

太宰

さて、そんなわけでこの昇降機に乗れば目的地まですぐだ

シグマ

警備機構は？

太宰

勿論中也制御室で切ってある

太宰

高見肩貸して

高見

やだ

太宰

はーい失礼☆

高見

............

シグマ

何をしている？

太宰

いや何、念の為内部機構の確認をね
配線がこうで.........

太宰

よし！罠もないね！では元気に出発！！

高見

早く降りて呉

太宰

はーい♪

シグマ

なぁ、さっきの話だが、私を選んだ理由はふたつあると言ったな？

シグマ

2つ目はなんだ？

太宰

......もし私が選ばなければ、君は勝負後ドストエフスキーかゴーゴリに口封じにされていたよ

シグマ

！！

シグマ

それで私の命を助けたのか？

太宰

......高見もいるしね

高見

俺...？

シグマ

......っ

太宰

......おかしい

シグマ

？

太宰

長すぎる

ドンｯ

太宰

！

高見

っ！！

シグマ

！？

｢私は頼まれて時間停止の異能を使っただけなの！だから命だけは助けて！お願ｯ｣

シグマ

っ！

太宰

............

フョードル

さて太宰君

フョードル

濡れて寒いので手短にお伝えします

シグマ

な.........なんだ今のは

太宰

やられた

太宰

時間停止の信号が途絶えた

太宰

恐らく時間停止の異能者、彼女か殺されたんだ

フョードル

太宰君

フョードル

正直なところ驚きました

フョードル

洪水の試験にではありません

フョードル

7年来の相棒でありながら、重力使いに洪水を防げないと考えたその絆の浅さにです

太宰

何？

フョードル

隔壁のレールを事前に重力で歪めておいたのです

高見

......へぇ

太宰

.........！

フョードル

この程度も思いつかないとは、重力使いを使役する資質に欠けているのでは？

シグマ

莫迦な！

シグマ

確かにそれなら脱出は可能かもしれないが...

シグマ

それは事前に浸水攻撃があると知っていなくては不可能な対応だ！有り得ない！！

太宰

吸血種だ

シグマ

何？

太宰

何日も前から警備の誰かを吸血種に変えて潜ませていたんだろう

太宰

そいつからの連絡が途絶えたことで制御室の制圧を推測したんだ

フョードル

とはいえ...危険に青ざめたのも事実です

フョードル

洪水の試練は神の下僕たるぼくに相応しいものですが、僕は虚弱で風邪でも引いたらたまりません

フョードル

そこで返礼として

フョードル

貴方達にも同じ試練を

高見

参ったねこりゃ

ドバァッ

太宰

！！

シグマ

！！

シグマ

駄目だ！扉も閉鎖されている！

フョードル

...そう言えば

フョードル

高見君

高見

はぁい？

フョードル

先刻あなたはぼくに、いなくなって寂しく思うと言いましたね

高見

それがどうかしたかな？

フョードル

......僕も、あなたが死んでしまうのは悲しく思います

フョードル

なのでこうしましょう、高見君のみそこから助けます

高見

...！

太宰

は......？

シグマ

何っ！？

フョードル

その2人は置いて僕のところに来ませんか？

高見

それはデイトのお誘いかい？

高見

生憎俺は君よりも太宰の方が好きでね

太宰

高見...

フョードル

デイトではありませんよ、これは牽制です

高見

！！ふふふ

高見

あははははははっ！

太宰

............高見

高見

分かってるよ

高見

そうだねぇ、太宰たちといるのも楽しいけれど、悪役になってみるのも案外面白そうだ

シグマ

は？何を言ってるんだお前はっ！

高見

フョードル、君の仲間に入れてもらえるかい？

フョードル

勿論、貴方なら来てくれると思ってました

フョードル

そちらを開きます、太宰君とシグマさんが出た瞬間、そこの隔壁が閉まりますのでご注意下さい

太宰

っ！クソ...

シグマ

そんな.........

高見

...それじゃあ！2人で楽しんで♪

フョードル

貴方達に神の腕に抱かれんことを

太宰

.........！

シグマ

.........！！

太宰

.........っ！！潜れ！！

シグマ

！？

シグマ

.........！

シグマ

っ！！

太宰

“駄目だ”

シグマ

......！

太宰

.........

太宰

っ！！！

高見

助かったよ、まさか俺を助ける選択をするとはね

フョードル

僕は高見君には生きていて欲しいと思ってしまいましたからね

高見

それも実は策略かい？

フョードル

まさか

フョードル

純粋な愛情ですよ

高見

ふふ、どうだか

高見

さて、これからは中也かい？

フョードル

えぇ、貴方も行きますか？

高見

そうだねぇ別れの挨拶といこうかな

フョードル

中也さん

中也

............

太宰

.........折れてるな

太宰

...

太宰

やぁ、頼むよ、いい加減痛いんだ

太宰

楽にしてくれ

フョードル

喜んで

フョードル

聞こえますか中也さん、高見君

フョードル

標的は第5層の水質管理室前です、殺しなさい

フョードル

...！

シグマ

太宰への攻撃指示を取り下げろ

シグマ

次は当てる

高見

だそうだよ太宰

太宰

はぁ...どうせなら君と心中したかったよ...

高見

無理なお願いだね

太宰

...どうして高見は、ドストエフスキーの方へ行ったのだい？

高見

.........

太宰

...答える気は無い...という感じだね

太宰

...裏切ったのかい？私を...いや

太宰

探偵社を？

高見

......裏切ったつもりは無いよ

高見

ただ、これが最善策だった...ただそれだけの話だ

太宰

.........そう

太宰

あぁ、この光景は何千回と想像したよ

太宰

最も...想像では立ち位置が逆だったけどね

中也

.........

太宰

どうした？来いよ中也

太宰

へなちょこパンチで私を楽しませてみろ

中也

っ！！

フョードル

止まりなさい

フョードル

挑発です、あなたに触れることで吸血種化を解除する気です

フョードル

離れて仕留めなさい

太宰

......ちっ

太宰

はぁぁぁぁ

高見

............

高見

中也、ちょっと遊ぼう

中也

.........ﾄﾞﾝｯ

太宰

ぎっ

太宰

痛いったあああああああ！

太宰

あぁっクソ！痛い！！

太宰

どこ狙ってるんだよ下手くそ！！

ゴリッ

太宰

...

フョードル

これで外す心配はありませんね

太宰

はぁぁぁぁぁ

太宰

全く最悪だよ、痛いしドストエフスキーには負けるしおまけに殺される相手は高見じゃあなくて中也だし...

フョードル

万策尽きたという風情ですね

太宰

どうかな？私が今感動的な台詞を吐いたら、奇跡が起きて中也が元に戻るかもよ？

フョードル

......そう思うならどうぞ

太宰

...中也、目を覚ませ

太宰

私たちの運命はこんな所で完結しない、何故なら...私達は運命の＿＿

ﾄﾞﾝｯｯｯ

高見

......うへぇ...

ﾄﾞﾝｯﾄﾞﾝｯﾄﾞﾝｯ

太宰

................はは、漸くだ

太宰

この時を......待ち望ん......

中也

.........

フョードル

さようなら、太宰君

高見

............

高見

行ったかな？

中也

......

高見

...............よし

高見

もうすぐだね

高見

はーいお疲れ様

太宰

もう最低すごく痛い、高見慰めて

高見

はいはい良く頑張ったね偉い偉い

太宰

中也も中也だよね！

太宰

最後の3発いらないよねぇ！？

中也

......っるせぇよ！！

中也

手前ェ最後の台詞なんだあれ！キモっちわりぃなぁ！！

高見

それは俺も思ったよ

太宰

絶対言った方が面白いと思って

中也

キモイんだよ青鯖！！

太宰

なんだい蛞蝓のくせに

高見

うるさいよ青鯖君に蛞蝓君

太宰

高見ぃ〜(泣)

中也

ちっ

高見

ほら、そろそろ出口だ

太宰

はーい

ニコライ

ごォォォォォぉル！！

ニコライ

今！1着で栄光のゴールインッ！

ニコライ

素晴らしいの極み！流石我が親友！賛美歌もつけちゃうっ！！

フョードル

......ｹﾞｼｯ

ニコライ

あぁっ！

フョードル

賞賛は不要です、例のものを

ニコライ

例のものとはー、これのことかな？

フョードル

ｽｯ…

ニコライ

ｻｯ…☆

フョードル

............

ニコライ

その前に聞いていいかな？太宰君は暗号化した心拍を仲間に読み取らせていたが、君はどうやって外と通信を？

フョードル

...簡単な話です、これですよ

ニコライ

成程...ムルソー警備員に協力者...いや、従者がいたのか

ニコライ

さぁ、君のものだ

フョードル

確かに

ニコライ

？打たないのかい？

フョードル

腐っても欧州最高の監獄、脱獄に気づかれ空域封鎖される前に離陸します

フョードル

ヘリの中で打ちますよ、そのくらいの時間はあります

フョードル

............僕は怪我で操縦桿が握れません、ヘリの操縦を頼みます

ニコライ

ドス君！シグマくんはどうした？

フョードル

勇敢でしたよ

フョードル

もう二度と目覚めることは無いでしょう

ニコライ

...ドストエフスキーに逆らうものは悉皆非業の死を遂げる...か

ニコライ

それなら、君自身はここを出たらどうする？

フョードル

あなたが今言いましたよ？

フョードル

とりあえず、僕を殺そうとしたあなたを消します

ニコライ

.........いいね

ニコライ

なんだいドス君、祝杯の葡萄酒でもこぼしたのかい？

フョードル

っ............

ニコライ

は？

太宰

残念だよ、もう少しで死ねたのに

フョードル

っ！

ニコライ

っ！

太宰

でもね、君では私を殺せない

フョードル

太宰君...何故.........

太宰

魔人ドストエフスキー、万象を掌で操る君と違って、私の手札は不確定要素ばかりだったよ

太宰

だが君には1つ弱点があった、君は己で操れないものを信じない

太宰

仲間だよ

太宰

空港にいるブラムが異能を取り戻した、そのブラムと乱歩さんが交渉し、ヘリを運転する吸血種を操ってもらった

太宰

事前に打ち合わせられる内容じゃない

太宰

だが乱歩さんならそうすると、信じていた

フョードル

ですが貴方は頭を撃たれて...

太宰

ああこれ？いや実際に痛かったよ

太宰

あの莫迦が加減を間違えるから

中也

誰が莫迦だ！

フョードル

！！

フョードル

ああ、成程

太宰

中也は最初から吸血種じゃあなかった

フョードル

...待ってください...高見君は......？

高見

俺ならここだよ

フョードル

っ！？

太宰

もう、ドストエフスキーはせっかく高見を味方につけたのに、置き去りにしちゃうんだから

高見

ふふ

高見

ごめんねぇフョードル

高見

否、違うね.........

高見

“フェージャ”

フョードル

っ！？

フョードル

なぜその名を...っ！！

高見

なぜだと思う？

フョードル

............

高見

君の過去を少し漁ろうと思ったのだけれどね？不思議なことにいつの文書を見てもその名があるのだよ

フョードル

......

高見

...ねぇフェージャ？

高見

俺では君に足らなかったかい？

フョードル

っ！

太宰

高見は私のものだよ...

高見

.........はいはい

中也

クソ取れねぇ

中也

被せるだけでいいってのに首領が面白がって接着しちまったから

太宰

はは

高見

どれどれ見せてご覧〜？

中也

あー

高見

うん、無理☆

中也

おい

フョードル

.........では全て

太宰

そう、演目だよ

太宰

そもそも私がエレベーターから脱出出来たのも、中也が外から重力干渉したお陰だ

太宰

そして、銃弾を重力で遅くして私の頭を打つ

太宰

弾は頭蓋骨で止まる...なぜなら

高見

俺の異能力で反発させたからね

太宰

この手、昔よく使ったねぇ〜

中也

五月蝿え！

太宰

画面越しでは弾速までは見えない

太宰

そして水責めは、本当の目的から君の意思をそらすためのものだよ

フョードル

本当の目的......？

太宰

その傷

太宰

爆発で手を怪我すれば運転を吸血種に任せるしかない

太宰

そして吸血種は

フョードル

待っ！

太宰

さよなら、ドストエフスキー

高見

会えて嬉しかったよフェージャ

フョードル

ああ、神よ......
何ぞ我を見捨て給うや

高見

.........

中也

で？貧血野郎は死んだのか？

太宰

ああ、ドストエフスキーは間違いなく死んだ

ニコライ

そうか...

太宰

お目出度うゴーゴリ

太宰

彼を殺したかったんだろう？

ニコライ

ああその通りだ

ニコライ

いや違う、いや......その通りだ

中也

...なんだこいつ

高見

しー

太宰

...

ニコライ

ドス君とかわした言葉は決して多くない、だが

ニコライ

彼とあって以降の人生は、それまでと全く別物のように感じられる

ニコライ

ドス君の言う通り僕は、自分を見失う為に戦ってきた

ニコライ

そして今...そうなった

ニコライ

今はただ.........

中也

......いつもみてえに皮肉はいわねぇのか？

太宰

いや、いまはやめておこう

太宰

解毒剤も手に入った、脱出だ

高見

............

高見

あ、

太宰

ん？

高見

なんか忘れてなぁい？

中也

はぁ？何も...あ

太宰

......シグマ

ふわぁ

太宰

......

中也

......

高見

......

ゴスンッ

中也

...起きねぇ

太宰

ふつ、寝不足かな

中也

15回落としたのにか？

中也

これで寝不足なら不憫だからもう寝かしといてやれよ

高見

いやぁでも、ねえ？

太宰

シグマ君はドストエフスキーと最後に話したはずだ、話を聞きたかったが...

中也

異能で眠らされてるんだろ？

太宰

それなら私が触れれば起きる

高見

俺が死の淵やろうか

中也

やめとけ

中也

何を心配してんだよ

中也

あの貧血野郎は死んだ、お前も確かめただろうが

太宰

ああ...だが............

高見

...

太宰

何故シグマ君は目覚めない...？

高見

そうだなぁ、睡眠薬の多量摂取かな

中也

そんなもんどうやって分かんだよ

太宰

それじゃあ自殺？

中也

莫迦言え

高見

ううむ...

太宰

う〜〜〜〜〜ん

中也

悩む時床転がる癖やめろ太宰

中也

視界がうるせぇ

高見

息の根止めるよ

太宰

怖

中也

何がまだ心配なんだよ

中也

そりゃシグマが目覚めない理由は判らねぇが...

太宰

.........シグマ君が目覚めない理由はわかってる

中也

は？

高見

中也、情報負荷だよ

太宰

異能で過大な記憶情報が流入した場合、情報整理の為に脳が意識を落とす

太宰

敦君もそれでしばらく意識を失ったそうだ

太宰

となるとドストエフスキーは記憶を態と読ませた？何故そんなことを......

高見

.........

太宰

っ！

中也

？

太宰

自分の異能を偽装するためか？

太宰

共食いの最後で我々に見せた異能はフェイクの可能性がある

太宰

あれは予め躰にホーソーンの血液を仕込んでおき、触れた兵士に血液を移して体内から破壊させたのだろう

太宰

だが、あれで私達はドストエフスキーの異能の発動条件が触れることかもしれないと警戒し

太宰

作戦を遠隔中心に立てた

太宰

ヘリを落とし、触れず倒すことにしたのもそのため...

太宰

なら、本当の発動条件はなんだ？

高見

な......ッ！！

高見

太宰！！

太宰

っ！！

中也

あ！オイどこ行きやがるポンツク！

太宰

ドストエフスキーの死体を確認する！

太宰

く.........ッ

中也

............

中也

珍しいぜ

高見

何が？

中也

太宰が汗なんか流してやがる

高見

そうかな？

高見

俺を追いかけ回す時なんかも汗かいているよ

中也

知りたくなかった

中也

...ほらな、やっぱり死んでたろ

太宰

そうか？なら.........

太宰

こいつは誰だ？

高見

全く覚えのない顔だね...

太宰

私と脱獄勝負した時！ドストエフスキーは必死だった

太宰

なぜなら奴は、私にも毒にも殺される訳には行かなかったからだ

太宰

奴は、吸血種に殺される必要があった

中也

は？

高見

つまりだよ中也

高見

全てフョードルの思惑通りってわけさ

太宰

わかったぞ、やつの企みが全部

太宰

最悪だ

太宰

すぐに乱歩さんに知らせないと！！

中也

あ！オイ説明を！

太宰

やつの異能の発動条件は触れることじゃない！

太宰

発動条件はドストエフスキーを

太宰

殺すことだ！！

中也

は？どういうことだよ！分かるように説明しろ！

太宰

ドストエフスキーを殺したのは吸血種だ、だが自分の意思で殺したんじゃない

太宰

彼は操り人形であり、その男の指先

太宰

ヘリを操縦した吸血種自身は銃や刃物とおなじ道具に過ぎない

高見

.........だからね中也...

高見

殺意を持ってフョードルを殺した相手...つまりは＿＿

中也

っ！！ブラムって訳か......！？

太宰

死体が別人になった理由

太宰

奴が諾々と地球の裏側で投獄されていた理由、可能性はひとつしかない

太宰

ドストエフスキーの能力は＿＿

太宰

自分を殺したか人間が次のドストエフスキーになる能力だ！！

中也

っ！！

高見

......俺が殺せばよかったね...

太宰

そんなこと絶対に許さないからっ！！

高見

そんな必死になるかい？

中也

そりゃあなるだろうよ

中也

俺だって高見が貧血野郎になったら困惑するわ

高見

そう...

高見

それじゃあ空港に急ごう

中也

おう！

太宰

あぁ

本編へ続く