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クマノミ
クマノミ
会議も終わり、雑談を交わす。 それぞれの過去について話していた。
とうとう自分の番が来てしまったようだ。 思い出すのも苦だ。
煮干し
荒い呼吸音、高鳴る心臓。 激しい動悸が止まらない
目の前の輪に恐れ、ただ震えた
煮干し
机の上に置いた1枚の写真と 丁寧に書いた母宛の遺書が目に映る
煮干し
声も脚も震えていたが、身を乗り出した
椅子を蹴り、宙吊りになる 血が止まり脳に酸素が往かないのが分かる。 涎と涙と鼻の水が混ざり、床に垂れる
数分もすると意識はなくなっていた それから、医学的に死亡となる。
どうしてこうなったのだろう
蝉は鳴き止まず、夏の日差しがしつこく主張する夏の日だった
仕事もサボり、公園のベンチでお気に入りの本を読んでいた。いつもの神話系の本だ
︎︎
突然後ろから声がする。自分に向けられた発言だと気づいたのは、言われて数秒経ってからだった。
蓮
蓮。 彼とは中学と高校が同じだった。
煮干し
大学進学は違ったため、それきり連絡が取れなかったのだ。
蓮
初めはそれほど仲良くなかった。 真面目に友達が出来ていたのは、高校に上がった頃の話だ。彼は今更、何を言いに来たのだろうか
中学時代。
︎︎
︎︎
自身の弁当もぐしゃぐしゃになっており 中にアイツらに入れられた虫が入っている。
右目が生まれつき目が白く、ほとんど見えなかった。それが原因で虐められており、誰もが見て見ぬふりをしていた
それは蓮も同じだった
蓮
ただ、可哀想なものを見る目で見つめて 関わらないようにそっとその場から離れる。
自分は彼に期待をしてしまっていた。 助けてくれなかったことが、虫を食べさせられそうになったことより、殴られたことより、教科書を捨てられたことよりも心にきた。
中学とは違い、少し頭の良さそうな高校を選んだ。すると、そこにも彼はいた。
高校に入ると彼から積極的に話しかけられた 今思えば単純に、いじめに巻き込まれたくなかったが、友人としては仲良くしておきたかったのだろう。
高校では一緒に昼食を食べたり、授業をサボったり、図書室でテスト勉強や張り合いをしていた。彼と過ごした高校生活が一等星のように輝いている。
彼と過ごしていくうちに、彼がいない生活など考えられもしなくなっていた。
"ああ、これが恋心なのか" そう気づいたのは卒業してからだった。
その一等星は、二等星や三等星があるからこそ輝くのだろう。今の穏やかで何の刺激もない生活が、過去の記憶を飾っている。
場所を変え、蓮オススメのカフェに来ている。外観もよく、珈琲も美味しい
蓮
蓮
煮干し
思い返してみると、彼は少し痩せた気がする
いや、気がするのではない。 確実に痩せている。肌も青白く、病的だ
蓮
煮干し
話を聞くと、彼は難病を患っているようだ。 生まれつき心臓が悪く、糖脂質が蓄積するとか…難しいことはわからないが、とにかくやばい病気だそう。
煮干し
蓮
煮干し
蓮は携帯電話を取りだし、メールアドレスを見せる。電子板に映し出された彼のメールアドレスは、何年も片思いしてきた自分にとって喉から手が出るほど欲しかった。
蓮
蓮
急いでメールアドレスをメモし、蓮に軽く会釈をした。彼は立ち上がり、こちらに手を振りながらゆっくりと帰っていった
煮干し
煮干し
再び彼が目の前に現れてしまったのがいけないのだ。何年も拗らせていたパンドラの箱がようやく開いた。
煮干し
ゼウスの投げる雷が大地の岩を打ち砕くように一瞬にして恋の矢が射抜かれた瞬間だった。
「先生、それは恋でしょう」 かのKが見透かすようにそう言う。
月日が流れて、2人で出歩く機会が増えた。 しかし、彼が何故話しかけてきたのかが未だに分からないのだ。
闇一色の中、銀糸のような道を横並びにして歩いていた時だった
蓮
煮干し
寄って、少し離れて。 気づけば彼の腕を取り、支えるようにして歩いた。彼に触れた部分だけが熱くて。
煮干し
蓮
2人きりの時間が延びていく。酔いが回り、まともに自分の家の場所も思い出せずにいるのが何故だか嬉しく思う。
煮干し
思わず漏れてしまった言葉だった。 その言葉に蓮は目を見開いてこちらをじっと見つめている。慌てて訂正しようと口を開こうとするが、震えて上手く説明できない。
煮干し
蓮はふっと笑い、頻りにぎゅっと、支えるために掴んだ手を包み返している
蓮
煮干し
1度思考回路がショートしてしまいそうになったが、これは事実のようだ。彼の足並みが突然揃い、前へ前へと進む
彼も、この時間を共に過したいと思ってくれている。それだけで__
蓮
聞き覚えのあるフレーズに、咄嗟に反応してしまう。昔はよく、小説内の台詞を再現する遊びをしていたものだ。
煮干し
歎息を聞かせないようにするのではなく、例の蛙と山椒魚のように。
そっと寄り添い掴む先を下げ、掌で互いの温度を共有していた。 彼の体温を感じて、生きていると思った。
気づけば彼の家の前。 手のひらが段々と血色が無くなるようで、寒気を感じる。彼を見つめることも出来ずに、下を向いた
蓮
煮干し
言いかけた時に、蓮は両頬を大きな手で包んだ。その後すぐ、何か柔らかい感触のものを肌で感じた
酒が入っているというのは、どうやら本当のようで。彼からはまだ酒と、甘い味がした。
煮干し
蓮
一等星が2人を照らした