映画を観終わり二人で帰っていた時
突然立ち止まって楓音は言った
楓音
あのさ…結羽くんはさ
大学生の結羽
うん。
楓音
昔から私の事どう思ってたの?
大学生の結羽
えっ…どうって
真剣な顔をした楓音が僕を見つめる
僕はそもそも昔の記憶があまり無い
楽しい記憶。思い出。 僕の中には無かった。
楓音は産まれながらの 親の付き合いだった。
だけど僕には彼女との記憶が無い。 誰との記憶も無い。
大学生の結羽
俺は…
大学生の結羽
昔から何か欠けていた俺に沢山の友達
や、勇気をくれたって思ってる。
や、勇気をくれたって思ってる。
大学生の結羽
だけど俺にはまだ分からない。大切なものが分からないから。
楓音
…やっぱ覚えてないんだ。
大学生の結羽
ごめん…俺物覚え悪くて…何時から
なんだろう…
なんだろう…
楓音
あのさ、落ち着いて聞いてくれる?
大学生の結羽
うん…
楓音
結羽くん珊瑚島って知ってるよね?
大学生の結羽
あっ…珊瑚島
楓音
結羽くんは昔そこで
楓音
水難事故にあったんだよ。
大学生の結羽
えっ何それ…全然分からない
楓音
だよね…結構深刻で結羽くんは
もう見つからないって言われてたんだ
もう見つからないって言われてたんだ
大学生の結羽
それってどういう事?…
楓音
話せば長いんだけど…
楓音
結羽くんが4歳か5歳ぐらいの時、
私の家族と結羽くんの家族で一緒に
珊瑚島の海に遊びに行ったの。天気は少し悪くて、でもそれでも予定どうり遊べるぐらいの天候だったから遊んでたの。
私の家族と結羽くんの家族で一緒に
珊瑚島の海に遊びに行ったの。天気は少し悪くて、でもそれでも予定どうり遊べるぐらいの天候だったから遊んでたの。
大学生の結羽
うん。
楓音
その時は楽しくて、色んなものに興味深々だったから、私と二人で親の元から少し離れた海辺に行ってしまったの。花が咲いてて波打つ海が綺麗な少し離れた場所。そしたら、風が強くなってきて、私の履いていたサンダルが飛ばされて海に落ちたの。
大学生の結羽
うん…
楓音
そしたらね…結羽くんはそのサンダルを拾って来るって言って海に飛び込んで行ったの。今考えたら止めといたら良かったって思ってるんだけどね。
そしたら結羽くんが泳いでる時に、高い波が来て、大人がいれば助かるぐらいの波だったんだけど、私達まだ子供だったから何も出来なくて。結羽くんそのまま溺れて、二三日姿が見えなくなったの。
そしたら結羽くんが泳いでる時に、高い波が来て、大人がいれば助かるぐらいの波だったんだけど、私達まだ子供だったから何も出来なくて。結羽くんそのまま溺れて、二三日姿が見えなくなったの。
楓音
私のせいで結羽くんがって思って、親の所に走って行ったんだけどその時にはもう結羽くんの姿がなくて、雨もきつくなってきたから一旦その場から離れようってなって、その日はその場を撤退したの。
大学生の結羽
じゃあ僕はどうやって助かったの。…
楓音
それは私にも分からない。
楓音
私ね、そのあとの数日間、1人でその島に行ったの。今考えれば凄い危ないことだなって思ってるけど。その日は晴れで、すごい快晴だった。色んな所探して、最後に居なくなった人目のない浜辺を見に行ったの。そしたらね、
大学生の結羽
うん。
楓音
そこには結羽くんが、眠っていたの。
なんと言うか誰かが助けてくれたみたいな感じで、そっと置いてくれてるみたいな感じ。それを見つけた瞬間涙が出てきて、思わず抱き抱えながら号泣しちゃった。
なんと言うか誰かが助けてくれたみたいな感じで、そっと置いてくれてるみたいな感じ。それを見つけた瞬間涙が出てきて、思わず抱き抱えながら号泣しちゃった。
大学生の結羽
そうなんだ…そんなことがあったんだ
楓音
でも、もし助けてくれた人がいるならお礼が言いたい。なんか私が助けたみたいになってるから。警察の人達に、『この子は自衛隊や警察の捜索よりも先に見つけた天才的な子供だ』みたいに言われたけど、1ミリもそんなことない。ましては私が悪いのに。
大学生の結羽
僕なんで記憶ないんだろ。
楓音
この事故が起きた後、結羽くんは1ヶ月目を覚まさなかった。起きたのは少し涼しくなってきた時期。目を覚ました時の結羽くんは、体に傷一つ無く健康だった。だけどその前までの記憶が無い。つまり記憶が事故のせいで無くなったの。
楓音
私の事も忘れていて、少し記憶を思い出すだけで頭痛を引き起こしていた。
海をとっても怖がっていて、お母さんの傍にずっと居た。
海をとっても怖がっていて、お母さんの傍にずっと居た。
大学生の結羽
ダメだ…全然覚えてない。
大学生の結羽
なんで僕の人生は困難ばかりなんだ。
楓音
でもね。結羽くんのお母さんは結羽くんに優しかったよ。水を怖がる結羽くんに毎日毎日童話の人魚姫を読んであげていた。『海の世界には結羽が怖がるものなんてなんにもないんだよ笑
とっても綺麗なんだよー笑』って。
とっても綺麗なんだよー笑』って。
楓音
結羽くんにこのことを伝えなかったのはきっとお母さんの優しさだと思う。大人になるにつれて大切な誰かに気付かせて貰えるからって言ってたから。
大学生の結羽
お母さん…
お母さんはいつも言っていた。
僕が虐められたり、性格について馬鹿にされた時に。
『どんな結羽でもいいんです。弱い子でも強い子でも。私の元に産まれてきてくれたことが、私の求めた1番の幸せだから。』
大学生の結羽
…
楓音
なんかごめんね。色々と
楓音
急にカミングアウトしちゃって
大学生の結羽
ありがとう。言ってくれて
楓音
えっ…どうして…
大学生の結羽
ずっとずっと悩んでたんだ。
何か忘れてるんじゃないかって。
何か忘れてるんじゃないかって。
大学生の結羽
でもやっと思い出した。あの時の記憶
大学生の結羽
息苦しくて、身体がだるくて。
でも、なんだか不思議な感覚だった
でも、なんだか不思議な感覚だった
大学生の結羽
もう何も分からないけど、何か暖かい声。不思議な世界。なんか不思議な感覚だな。ほんとに
楓音
ふふっ笑もう。結羽くんったら笑
大学生の結羽
笑笑なんだよ
楓音
でもずっとそんなとこが好きだったんだよね。
大学生の結羽
何か言った?ん?
楓音
何も無いよ笑。ずっとずっと私は覚えとくね。
大学生の結羽
わかったありがとう。笑笑
一つ一つだけど
困難さえも愛おしくなる日々が 来る気がした。
きっとあの出会いも。