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君の涙の理由

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君の涙の理由

3 - ライバル

♥

85

2020年11月16日

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森山浩太

セクハラの件、解決できたみたいだな

安田直樹

ああ

森山浩太

知ってるか? 部長、子会社に異動になったらしいぞ

安田直樹

……そうなんだ

森山浩太

どうした? 元気ないなぁ

森山浩太

彼女の悩みは、もう解決したんだろう?

安田直樹

……そうなんだけど

森山浩太

だけど、何だよ?

安田直樹

……泣いてたんだ

森山浩太

泣いてた?

安田直樹

紗織さん、涙を流してた

森山浩太

何で?

安田直樹

分からない

森山浩太

……まぁ、セクハラを受けてたわけだし

森山浩太

繊細な女性なんだろう

安田直樹

ああ

安田直樹

でも、何か他に理由がある気がするんだよなぁ

森山浩太

そんなこと言って躊躇してたら、付き合えないぞ

森山浩太

細かいことは気にせず、どんどん行けよ

安田直樹

……わかった

仕事を終えた直樹は、受付へと向かった。

安田直樹

(紗織さんともっと仲良くなるために、食事に誘おう……!)

受付の前には、一人の男子社員がいて、紗織と何やら喋っている。

安田直樹

(……あれは、営業部の成宮速斗)

安田直樹

(社内で一番人気の男性社員が、なぜ紗織さんと?)

直樹はその様子を眺めた。

成宮速斗

これから、食事でもどう?

水瀬紗織

いえ、今日は

成宮速斗

そんなこと言わないで行こうぜ

安田直樹

(成宮が紗織さんにアプローチしてる……!)

安田直樹

(成宮が相手じゃ、勝負にならないよ)

直樹は一気に自信を無くした。

成宮からの誘いを、紗織は困った顔で何度も断っていた。

その様子を、隣で高井安奈が見ていた。

彼女は不機嫌そうだった。

安田直樹

(……あの人は、もう一人の受付嬢)

安田直樹

(紗織さんの先輩だったよな)

安田直樹

(何であんなに怒ってるんだ?)

その時、紗織と目が合った。

安田直樹

(うわっ、隠れて見てたのがばれた!)

安田直樹

……お疲れ様です

弱気になっていた直樹は、それだけ言って、そそくさと通り過ぎた。

安田直樹

(……結局、誘えなかった)

安田直樹

(……僕はなんて意気地なしなんだ)

森山浩太

アプローチできたか?

安田直樹

できなかった

森山浩太

何でだよ?

安田直樹

誘おうとして、受付に行ったら、成宮が先に誘ってた

森山浩太

成宮って、社内で一番モテてる奴か?

安田直樹

ああ

安田直樹

成宮が相手じゃ、敵わないよ

森山浩太

彼女の方はどうなんだ?

安田直樹

え?

森山浩太

紗織さんも、成宮に気があるのか?

安田直樹

分からない

安田直樹

誘いは断ってたけど

森山浩太

それじゃあ、諦めるのは早い

森山浩太

男としての価値なんて、どうでもいい

森山浩太

大切なのは、彼女の気持ちだろう?

安田直樹

……

森山浩太

それに、お前は一度、彼女と食事に行ってるんだ

森山浩太

現時点では、一歩リードしている

安田直樹

……そうだよな

安田直樹

ありがとう

安田直樹

僕は諦めない

翌日の朝。

直樹は挨拶をしようと、受付に行った。

安田直樹

おはようございます!

水瀬紗織

……おはようございます

安田直樹

(……紗織さん、いつも以上に元気ないような)

安田直樹

(どうしたんだろう?)

紗織をよく見ると、彼女の制服のポケットが不自然に破れ、安全ピンで留めてあった。

安田直樹

どうしたんですか? それ

直樹が尋ねると、紗織は恥ずかしそうにポケットを隠した。

水瀬紗織

……何でもないです

そう言って、彼女は隣にいる杏奈の方を、チラッと見た。

高井杏奈

何よ!

高井杏奈

何か文句でもあるわけ!?

水瀬紗織

……いえ、すみません

杏奈に怒鳴られ、紗織は俯いた。

安田直樹

(一体、どうなってるんだ?)

水瀬紗織

安田さん、私は大丈夫なので、心配しないで

安田直樹

……そうですか

安田直樹

……それじゃあ

そう言って、直樹は受付を後にした。

安田直樹

(あの二人の間に、何があったんだろう?)

この日は残業だった。

夜中に仕事を終え、廊下を歩いていると、杏奈の姿を見つけた。

安田直樹

(社員はほとんど帰ってるはずなのに、受付嬢がこんな時間に残ってるなんて、変だなぁ)

不審に思った直樹は、彼女の後をつけた。

杏奈は周りを気にしながら、更衣室に入った。

安田直樹

(すでに制服から着替えているのに、更衣室に何の用だろう?)

直樹はためらいながらも、中を覗いた。

杏奈はおもむろにロッカーを開けると、受付嬢の制服を取り出した。

その制服のポケットは、安全ピンで留めてあった。

安田直樹

(紗織さんの制服だ)

安田直樹

(勝手に他人のロッカーから制服を取って、何するつもりだろう?)

杏奈はカバンを開けると、中からハサミを取り出した。

安田直樹

杏奈は制服をそのハサミで切ろうとした。

安田直樹

何してるんですか!?

思わず、直樹はそう叫んだ。

驚いた様子で、杏奈はこっちを見た。

高井杏奈

そっちこそ、ここ女子更衣室よ!

直樹は構わずに杏奈に近づいた。

安田直樹

それ、紗織さんの制服ですよね?

安田直樹

どうするつもりだったんですか?

高井杏奈

あんたには関係ないでしょ!?

杏奈は焦った様子でそう言った。

安田直樹

紗織さんの制服のポケットを破いたのは、あなただったんですね?

高井杏奈

……そんなことしてない!

安田直樹

でも、今だって、ハサミで切ろうとしてたじゃないですか!

高井杏奈

うるさい!

高井杏奈

何でみんな、あの子ばっかりチヤホヤするのよ!

杏奈はそう怒鳴って、座り込んだ。

よく見ると、彼女は泣いていた。

直樹は泣いている杏奈をなだめながら、会議室へ連れて行った。

椅子に座らせると、杏奈は徐々に落ち着いた。

安田直樹

どうして制服を破いたりしたんですか?

高井杏奈

……嫉妬したの

安田直樹

嫉妬?

高井杏奈

二人で受付に座っていると、私の所へは誰も来なくて、みんな紗織の所へ行くの

高井杏奈

紗織の方が綺麗だから、仕方ないと諦めてたんだけど

高井杏奈

成宮さんまで紗織にアプローチし出して……

安田直樹

……成宮?

高井杏奈

そんなことしたらダメだと分かってたんだけど

高井杏奈

紗織のことをどうしても許せなかったの

安田直樹

成宮のことを好きなんですか?

高井杏奈

……好きというか

高井杏奈

半年付き合ってた

安田直樹

え?

高井杏奈

一週間前に別れを切り出されて、その直後に紗織へアプローチし始めたの

高井杏奈

きっと私のことは遊びだったのよ

杏奈は再び泣き始めた。

安田直樹

……あの

安田直樹

僕が何とかします

高井杏奈

……何とかするって?

安田直樹

あなたとよりを戻すように、成宮と話をつけます

高井杏奈

……そんなことできるの?

安田直樹

だから、紗織さんに嫌がらせをするのは、もうやめてください

直樹はそう宣言して、杏奈を納得させた。

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