雨音が、窓を叩く
ののはカウンターに腰かけ、手に持ったマグを揺らしながら、このみを見つめる
音ノ乃
このみ……なんで、雨をやめられないの?
このみは静かに微笑む
その目は、外の空よりも澄んでいた
甘狼
雨はね、私の記憶
甘狼
喫茶ミリプロを作った願いそのもの
甘狼
私が止めてしまったら、この場所も、みんなも、消えてしまう
ののは少し首をかしげる
音ノ乃
でも……雨が降り続けると、外の世界は大変じゃない?
このみは軽くうなずき、窓の外を見た
雨に濡れた街並み。歩く人々。車の水しぶき
甘狼
うん。でもね……私は、ここに来る人たちの笑顔を守りたい
甘狼
雨の日も、晴れの日も、誰かが帰ってきてくれる場所を
ののはそっと手を伸ばし、このみの手に触れる
音ノ乃
……わかった。
私も、手伝うよ。このみの雨を、守る
私も、手伝うよ。このみの雨を、守る
このみの目に、ほんの少し涙が光った
甘狼
ありがとう、のの
甘狼
みんながいるから、私の記憶も、雨も、生き続けられる
外の雨が、少しだけ小降りになった気がした
窓の向こうの世界はまだ濡れているけれど
店の中には、穏やかな温かさが広がる
甘狼
雨は止まない
甘狼
でも、この場所にいるみんなの心は、晴れ続ける
このみは立ち上がり、棚のノートを開く
ツクリが書き残した文字が、静かに光を帯びる
“次は——みんなの番。”
この瞬間、ののは理解した
喫茶ミリプロの雨は、このみだけのものではなく
全員の記憶と願いによって生き続けているのだと






