白尾BL短編集

暖かいココアを片手に青い彼に話しかける

彼は少し訝しげに苦笑して、また作業に戻る

まぁあんまり話しかけてくれないから慣れっこだけどね

髪を耳に掛けて作業をする彼

相変わらず綺麗で見惚れてしまう

天向けて咲く紅いバラを、青い彼から連想させた

可愛さもあり、美しさもあり、少し男らしい真っ直ぐな瞳

いやぁ～我ながら俺の彼女は綺麗だよ

少し振り向き、困ったように目を重くさせる彼

彼が頬を緩めて窘める

相変わらずかわいくて、どうしようもない

端から見れば一瞥してるようにも見えるかも知れないが、

これはからかいね、からかい

反応がくっそ可愛いのよ

澄ました顔で言うきんちゃん

でも俺はお見通しなのよ

顔は余裕そうにしてる癖に、パソコンを打つ手が止まってるのも

黒髪がカーテンになった、白い耳が赤いのもね

小声で呟く

これも聞こえてるんでしょ、実はね

だって手が震えてるし、顔までちょっと赤くなってるし

「うるさい」なんて言ったらもっとめんどくさいとか言い訳してね

可愛いって言われたのが嬉しいって本心隠しちゃってんでしょ

かわいーな本当

持ってたココアを口に含む

と、コップを持ったときに気がついた

きんちゃんの前の壁に、めっちゃくっきり影が映ってる

手の指を三角にして壁に向ける

と、灰色の狐が写し出された

あーなんか懐かし

学校の帰り道とかめっちゃ遊んでたわ

よくわからない懐かしさに襲われて様々なポーズをしていく

鳥とか、蝶々とか

色々やって、

きんちゃんの頭の影に重なるように手を翳す

本当にやってはいないけど、頭を撫でてる見たいになって

手を左右に動かす

と

顔をほんのり赤くして、俺の方を振り向く

必死に言い訳を重ねるけれど、きんちゃんの口は尖ってて

目はじと目で、顔は赤い

でも満更でも無さそうな顔

すると徐に影遊びをする彼

ありゃ?珍しく乗り気?

はえー可愛い

複雑な指の形にして俺に見せつける

幼さがある彼に愛おしさを覚えながら、俺は壁を見る

が、

そこに手の影はなくって

聞こうとしたとき、影が写った

でもそれは、手の影ではなくて

俺の肌に、きんちゃんの顔が寄せられている影がくっきり写っていた

俺は今、どんな顔をしているのだろうか

心臓が鷲掴みされたような感覚になって

瞳が揺れる

俺は再び彼に口付けされた部分を手で覆って

なんとか言える、今の言葉を言った

これは、昼間だけの特別

大好きな彼をこんなに可愛く見れるなんて

小さく呟いたこの言葉は、君に届いているのかな