この作品はいかがでしたか?
350
この作品はいかがでしたか?
350
コメント
2件
月月火水木金金。 大日本帝国の朝は夜明けと共に始まる。
竹刀を持って庭に行き、鍛錬を積む。 汗を流した後は風呂に入り、 身も心も解す。 質素な朝食を作った後は二度寝する日本を起こし、 寝ぼけた顔で食事をする様に喝を入れる。 日本が会社に出向くのを見送ったら、 ようやく穏やかな時間が流れるのである。
日帝
日帝
現役を退き、日本が国の代表となった今。 日帝は言わば『ご隠居さん』である。 しかし本人はそれを好まないらしく、 以前と変わらぬ生活を続けていた。
日帝
……とはいえ『ご隠居さん』のすることなど、そうある訳でもなく。 日々の鍛錬やら刀の手入れやらが終わってしまえば、残りやることは散歩くらいである。 小道を気ままに歩きながら道行く人々を眺め、友人とバッタリ会えば世間話をする。 時に公園に赴き、ベンチで読書など。 随分と年老いたものだ、 日帝は心の中で溜息をつく。
彼を未だに「軍人」たらしめているのは、 その格好くらいであった。
暇を持て余し、 家を出て約5分ほど経った頃。 日帝は、前方が妙に騒がしいことに気がついた。
何事かと目を凝らせば、見知った顔が一人。
イギリス
……イギリスである。
いつもの紳士はどこへやら。 物凄い勢いでこちら側に走ってきており…… その前方には見慣れない小さな少年がいる。
日帝
日帝
日帝は傍観者でいるつもりだったが、 どうやらそれは叶わないらしい。
??
日帝
小柄な少年は日帝を見つけるやいなや、 その軍服にしがみつく。 そして、イギリスから逃れるように 日帝の背後に隠れてしまった。
イギリス
イギリス
??
日帝
顔を真っ赤にしたイギリスと、 自分の軍服を離さない少年。 突如として謎の争いに巻き込まれてしまった日帝は、眉をひそめながら両者を交互に見つめていく。
イギリス
日帝
それよりも、この少年は一体何者なのか。 顔を隠しているせいでよく見えないが、 随分と弱っているのは確かである。
場合によっては上手く仲裁してやろう。 そう思い、日帝はイギリスを刺激しないように事情を尋ねてみることにした。
日帝
イギリス
日帝
イギリス
日帝
──いや待て、いま英国は何と? 俺の聞き間違いでなければ、 "息子"と言ったよな!? それにこの紅白の縞模様… 星の部分は何故か英国と似ているが……
日帝
イギリス
日帝
途端、日帝の中で眠っていた怒りが目を覚ます。そして、先程まで少しでもこの少年に同情した己を恥じた。
仲裁など以ての外。この男は何としてでもイギリスに引き渡してやる──!
……もっと他に驚くべきところがあるはずなのだが、それどころではないらしい。
日帝
日帝
華麗なる手のひら返しである。 相手がアメリカでさえなければ、 良き仲裁者となっていたはずなのに……。
イギリス
13植民地 (アメリカ)
だが、アメリカは未だ日帝の背後で首を横に振り続けている。 心做しか、 軍服を掴む小さな手にも力が入った。
日帝
13植民地 (アメリカ)
低い声で催促されたアメリカは顔をちらりと横に出し、 今まで埋めていた顔を上げる。 その瞬間───日帝は、涙の膜を張った つぶらな瞳と目が合ってしまった。
日帝
13植民地 (アメリカ)
お願い、優しい人。僕を助けて……
極めつけは、この言葉である。
本場の"Gentleman"の前でこれを言うあたり、流石はイギリスの息子と言うべきか。 だが、ここまで言われてしまえば 日帝も面子を保たなくてはならない。
日帝は(本当に仕方がなく)助け舟を出してやることにした。
日帝
日帝
イギリス
日帝
日帝
流石は大日本帝国。 数多の人々の記憶にその名を刻んだだけあって、説得力が段違いである。
だが、イギリスの前ではそれも 釈迦に説法というもの。
イギリス
イギリス
……日帝の切言は功を奏したようだ。
日帝
日帝
13植民地 (アメリカ)
しかし、アメリカが動く様子は無い。 どうしたものか…イギリスがそっと近づくと、少年はまたもや日帝の軍服を掴み、 小さな声で言った。
13植民地 (アメリカ)
**続く**