テラーノベル
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十時を過ぎ、とっくに日の開けた朝。
いつものように、ゴミ袋を両手に抱え、
私はゴミ捨て場へとそれを持っていく。
その途中、
「あの、あの、あの」
後ろから何やら声がした。
振り返ると、隣人がそこにいた。
何やらビクビクとして、震えている。
私は多少心配したが、先に思ったことは、
(またか)
そういう思いでいっぱいだった。
というのも、前からこの隣人は、
おかしな言動や行動が特に目立っていたからだ。
最近でいえば、つい先週のこと。
いい風が吹いていたので、網戸にして私が部屋でくつろいでいたところ、
「あのー、すいません!」
外から聞いたことのある声がした。
網戸から覗き込むと、
笑いながら隣人がそこに立っている。
「あー、どうしたんです?」
私は冷たい態度でそう言ったが、
突然、
「臭いので、中調べますね!!」
そう言い、なんと網戸を開けて中に入ろうとした。
「な!ちょ、ちょっと!」
私は慌てて、隣人を必死に止めて落ち着かせた。
「何も臭くなんてないですよ!」
「私鼻はいいんですよー」
「あ、この前あなた下痢気味でしたよね!」
「普通は匂い届かないはずだけど、私鼻いいし、いつもと匂い違うのも分かるんですよ」
「しかも、なんせ隣人ですからねー」
「よく分かるんですよー。大丈夫でした?」
あまりの気味の悪さを感じ、
私は隣人を押し返し、網戸を閉めた。
「もう、やめてくださいね!」
私はそう言ったが、隣人は終始笑いながら自分の家に帰っていった。
さらにこんなことがあった。
とある日の夜、
一仕事終え、疲れが溜まっていて、
コンビニまで食べ物を買いに行った後のこと。
自分の家の前まで来ると、何やら玄関の前に人がいるのがわかった。
近づいてみると、それは隣人だということが分かった。
私の家の玄関に顔を向け、何かをしている。
私にはそれが、
磨りガラスになっている一部から、
必死に中を見ようと顔を覗かせているようにしか見えなかった。
もちろん中は見えない仕様だが、私は驚き、
「な、何してるんですか!?」
私は大声でそう言った。
すると彼はくるりとこちらを向き、
ニヤッと笑った。
そのあまりの不気味さに私は寒気を感じ、
「警察呼びますよ」
そう言ったが、
「呼んでみなさいよ。呼んでみなさい」
そう繰り返し言ったまま、彼は自分の家に戻っていった。
私は物凄く不快で、恐怖だった。
警察を呼びたくて堪らなかったが、
大事になるのがとても不安で、放置していた。
だが正直、邪魔だった。
そんな経緯で、今に至る。
正直関わりたくないが、
こうでも隣人ということもあるし、
いつも笑ってる顔と違い、今は何かに怯えてる感じは、
なんとなく、気になるものがある。
「どうしたんですか?」
私はそう聞く。
「あ、あ、あ……」
何か言いたそうにしている。
「?」
そう思っていたら、
彼が口を開いた。
「それ持って、一緒に警察行こう!」
(え?)
(「それ持って」って…)
(…あぁ、そうだったのか)
その後、私は彼を無理矢理私の家に連れ込み、
殺した。
なるほど…
こいつは確かにおかしなやつだったが、
気づいていたのか…
あ、ゴミ出すのまだだった。
…仕方ない。
増えてしまったことだし、後でまとめて出そう。