転生したら、ヤンキー漫画の主人公だった件

―突然の衝撃に、勢いよく頭を上げた。

俺は、あたりをきょろきょろと見回す。

見知らぬ校舎に、見知らぬ風景。

呆然としていると、ピリッと頬に鋭い痛みが走った。

触ってみると、左の頬に白いガーゼのようなものが貼ってある。

不審に思った俺は、再度あたりを見回すと校舎の窓を覗き込んだ。

日光で反射した、もう一人の俺と目が合う。

そこにいたのは、見覚えのない「金髪の不良」だった。

突如背後から声をかけられ、驚いた俺は、思わず地面に尻もちをつく。

振り向くと、そこには見知らぬ「黒髪の少年」が立っていた。

彼の問いに、俺は頷く。

良く『BattleCry』…通称バトクラは、俺が好きでよく読んでいるヤンキー漫画だ。

そして目の前のこいつは、そのバトクラの主人公の相棒・篠原礼二(しのはられいじ)にそっくりだった。

―どうやら俺は、バトクラの主人公・真瀬幸助(まなせこうすけ)に憑依してしまったらしい。

バトクラはもともと俺が、幼馴染である佐藤由良(さとうゆら)から借りて読み始めたものだった。

内容は至ってシンプル。

各々の区を仕切る５つの不良集団が抗争を起こし、友情と絆を深めていくという、ヤンキー漫画にはありがちな展開だ。

俺たちが今入ろうとしている【紅蓮(ぐれん)区】の【暁(あかつき)】も、その不良集団の一つ。

しかし…。

１つ、問題があった。

それは、篠原礼二。

―彼が、暁の総長を殺すこと。

バトクラは、【現代編】とその５年後の【未来編】の二部で構成されている。

暁の総長・不破成世(ふわなるせ)のせいで実兄を亡くし、彼に強い恨みを持った原作の篠原礼二は、

【現代編】の最終抗争で俺たちを裏切り、不破を殺すのだ。